ART

新潟・越後妻有「大地の芸術祭」
出展アーティスト4名に聞く
作品に込めた思い

2022.7.30
<small>新潟・越後妻有「大地の芸術祭」</small><br>出展アーティスト4名に聞く<br>作品に込めた思い

世界有数の豪雪地帯として知られる新潟県の越後妻有(えちごつまり)エリア。過疎高齢化の課題を抱えていたこの地は、2000年より開催されている世界最大級の国際芸術祭「大地の芸術祭」によって世界中から注目を集める場所となった。4月29日から開催されている第8回を取材し、アートを道しるべに里山をめぐることで風土・文化を体感する旅の魅力を探る――。

「大地の芸術祭」に出展する作品の制作現場を訪れ、4名のアーティストに、越後妻有で表現したいことをうかがった。

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大地の芸術祭とは・・・
「人間は自然に内包される」をコンセプトに、国内外の著名なアーティストと地域住民が協働し、210の常設・既存作品に加えて、新作・新展開作品が123点追加。約760㎢にわたる広大な6つのエリアで11月13日(日)まで開催される。

鮮烈な黄色の空間に吊るされているのは、この地でかつて使われていた農具。実際に振るわれていた姿で展示準備をする河口龍夫さんは語る。

「畑を耕し、命を紡ぐ農具は、生きる原点。いまは使われなくなった道具を通してこの大地の恵みをあらためて感じてほしいです」
地域の魂を宿した道具は、さまざまなアートに昇華する。深澤孝史さんは、十日町市七和地区の絆と自由を求める反骨精神を、除雪具で建てる6mのモニュメントで表現。津南町では、加治聖哉さんが地域の廃材に生命を吹き込み、等身大のサメと鰯の魚群が泳ぎ、タカアシガニが歩く水族館をつくる。

そして椛田ちひろさんが、家屋の建具にボールペンで描き出すのは、市ノ沢集落の“流れ”だ。「山々と川、古い道と新しい道、そして地域の文化はつながっている。そのイメージで、ひとつの集落の物語を描きたいと思います」。

河口龍夫さん
「越後妻有の大地の恵み、人間の原点を感じてほしい」
『農具の時間』
美術家・河口龍夫さんが展示に使用する鍬(くわ)や鎌は、地域の農家を一軒一軒訪れ、譲り受けたもの。「稲を刈り、畑を耕して、人を潤していた物語が一つひとつに宿っています」。実際に使われていた角度に展示された道具に触れることで、人に従っていた農具に、逆に人が従うというコンセプトを込めた

住所|新潟県十日町市下条1-324(旧上新田公民館)
時間|10:00~17:00(10~11月は〜16:00)
料金|個別鑑賞券500円または作品鑑賞パスポート掲示
公開期間|~11月13日(日)
休業日|【春・秋】月~金曜(祝日は除く)/【夏】火・水曜 
※詳細は公式ウェブサイトを確認

深澤孝史さん
「コミュニティの絆を、雪で具現化します」
『スノータワー』
「雪があると一人では生きていけない。その必然が結束力を高めると同時に、自立した七和地区の挑戦心を育んでいると感じました」と話す美術家・深澤孝史さんは、地元「クマ武」のスノーダンプ(除雪具)で、そのシンボルとなるタワーをつくる

住所|新潟県十日町市新座甲392-1(七和防災センター)
時間|10:00~17:00(10~11月は〜16:00)
料金|個別鑑賞券300円または作品鑑賞パスポート掲示
公開期間|~11月13日(日)
休業日|【春・秋】月~金曜(祝日は除く)/【夏】火・水曜 
※詳細は公式ウェブサイトを確認

加治聖哉さん
「廃材に生命を吹き込みアートの水族館をつくっています!」
『廃材水族館:竜ヶ窪』
廃材再生師・加治聖哉さんは、今回、地域住民とともに廃材を新たな生命へと昇華させた。「皆さんの協力なくしてはできません。何も考えずに見て、自由に感じてください。鑑賞に合わせて地域の豊かな食や文化も楽しんでほしいですね」

住所|新潟県中魚沼郡津南町谷内7031(竜ヶ窪温泉 竜神の館内)
時間|10:00~17:00(10~11月は16:00まで)
公開期間|~11月13日(日) 
休業日|火・水曜 
※詳細は公式ウェブサイトを確認

椛田ちひろさん
「山、川、そして集落のつながりを表現します」
『ゆく水の家』
美術家・椛田ちひろさんが障子紙に描いた集落の情景が上階の白い部屋から1階の黒い部屋に流れ、裏からほの暗く照らされる。「描くのは山や水ですが、一番のモチーフは集落の人の営み。それをこの地に来て感じてほしいです」

住所|新潟県十日町市馬場壬848
時間|10:00~17:00(10~11月は16:00まで)
料金|個別鑑賞券300円または作品鑑賞パスポート掲示
公開期間|~11月13日(日)
休業日|【春・秋】月~金曜(祝日は除く)/【夏】火・水曜 
※詳細は公式ウェブサイトを確認

 

6エリア別 作品・作家見どころガイド
 
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《新潟・越後妻有 大地の芸術祭 2022》
1|越後妻有里山現代美術館 MonET 前編後編
2|越後まつだい里山食堂 前編後編
3|旅の最後は“祈り”のアート『手をたずさえる塔』へ
4|アート里山をめぐる 前編後編
5|ジェームズ・タレルの泊まれるアート『光の館』
6|総合ディレクター・北川フラム氏に聞いた、アートの力で地域の魅力を掘り起こす秘訣とは?
7|十日町エリアの作品・作家マップ 前編後編
8|川西エリアの作品・作家マップ 前編後編
9|中里エリアの作品・作家マップ 前編後編
10|松代エリアの作品・作家マップ 前編後編
11|松之山エリアの作品・作家マップ 前編後編
12|津南エリアの作品・作家マップ 前編後編
13|6エリア別 作品・作家見どころガイド
14|出展アーティスト4名に聞く作品に込めた思い

text: Ryosuke Fujitani photo: Norihito Suzuki
Discover Japan 2022年6月号「アートでめぐる里山。/新潟・越後妻有”大地の芸術祭”をまるごと楽しむ!」

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