ART

新潟・越後妻有「大地の芸術祭 2022」
越後妻有里山現代美術館 MonET
旅のはじまりは「新定番」アートから|後編

2022.6.28
新潟・越後妻有「大地の芸術祭 2022」<br>越後妻有里山現代美術館 MonET<br><small>旅のはじまりは「新定番」アートから|後編</small>

世界有数の豪雪地帯として知られる新潟県の越後妻有(えちごつまり)エリア。過疎高齢化の課題を抱えていたこの地は、2000年より開催されている世界最大級の国際芸術祭「大地の芸術祭」によって世界中から注目を集める場所となった。4月29日から開催されている第8回を取材し、アートを道しるべに里山をめぐることで風土・文化を体感する旅の魅力を探る――。

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十日町エリア

信濃川の東側に広がる織物産業と農業を主体に形成された地域。「越後妻有里山現代美術館 MonET」や、廃校の小学校を作品として再生した「鉢&田島征三絵本と木の実の美術館」などがある。

「大地の芸術祭」の主要施設のひとつ「越後妻有里山現代美術館 MonET」は、2021年にリニューアルオープンした現代美術界の世界的な注目スポット。多彩な「新定番」アート作品が展示されている。

ゲルダ・シュタイナー&ヨルク・レンツリンガー
『ゴースト・サテライト』

越後妻有で集められたさまざまな「使わなくなったもの」で制作した人工衛星。東京と越後妻有の関係を「地球と役割を終えた無数の人工衛星」ととらえ、衛星である越後妻有の力強さを表現した
マルニクス・デネイス
『Resounding Tsumari』

越後妻有を衛星データから生成した点群データと3Dグラフィックで表現。360度のサウンドスケープの中、鑑賞者はコントローラーを用いて、バーチャル世界と現実世界を浮遊する感覚が体験できる

MonETをめぐると、
地域の風土にも出合えます

栗田宏一『ソイル・ライブラリー/新潟』
日本にある多種多様な土。その美しさに着目し、土を採取し続ける作家が、平成の大合併前の新潟県内市町村すべてをめぐって集めた土を、色別に整然と配置したインスタレーション作品
ニコラ・ダロ『エアリエル』
パラシュート布でつくられた、シェイクスピアの戯曲に登場する妖精・エアリエルが、空気圧で動くロープに操られてダンスをする。たらいなどの地域の民具が越後妻有の音景をつくり出す

2021年にリ・スタートを切った越後妻有里山現代美術館 MonETは、周辺を取り巻く環境や空間をも生かすサイトスペシフィック・アートの美術館としてより厚みを増した。それは、越後妻有ならではの風土の特性に深く向き合った作品や展示された場所の空間、時間の変容を鑑賞者に体感させる作品群を拡充したことによる。

上記のほか、信濃川と水から着想を得た、鏡面に映し出される波紋で表現される作品『Wellenwanne LFO』(カールステン・ニコライ)や、越後妻有の家屋と都会のビルをかたどった銀の小片が、粉雪のように舞い散る『浮遊』(カルロス・ガライコア)など鑑賞を通して地域文化が五感で楽しめる。

クワクボリョウタ『LOST #6』
織物機具や農機具など、地域住民の営みを支えた道具を床に展開。光を放ちながらゆっくりと走る列車で、さまざまなモノの影を壁に投影し、移ろいゆく車窓の情景を幻想的に表現した
森山大道『彼岸は廻る』
日本を代表する写真家・森山大道さんが写真に収めた越後妻有。緑の濃い里山、道路際の段丘斜面を花で彩る家々の「径庭」など、この土地ならではの風景が切り取られている
マッシモ・バルトリーニ feat.ロレンツォ・ビニ
『Two River』
中谷ミチコ『遠方の声』

つなげると信濃川が現れるテーブル、雪のように真っ白な本棚など空間すべての要素を○と□で構成した『Two River』。その中に、中谷ミチコさんが集落で聞いた昔話をモチーフに、人間の生活と労働と妄想をイメージした彫刻作品『遠方の声』が浮かび上がる
中谷芙二子『霧神楽』× 田中泯『場踊り』
MonET中央の回廊に囲まれた大きな池を舞台にしたコラボレーション。霧の彫刻家が人工的な装置で発生させた霧でつくる代表作『霧神楽』の中で、既成概念にあてはまらないダンスが世界的評価を得ている舞踊家が、越後妻有という場の踊りを披露する

越後妻有里山現代美術館 MonET
住所|新潟県十日町市本町6-1
Tel|025-761-7766
開館時間|10:00~17:00(11月13日までは~18:00)
料金|常設展示/一般1000円、特別企画展/一般1200円(常設展示含む)または作品鑑賞パスポート掲示
公開期間|通年
休業日|火・水曜(祝日は除く)

 

越後まつだい里山食堂
 
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《新潟・越後妻有 大地の芸術祭 2022》
1|越後妻有里山現代美術館 MonET 前編後編
2|越後まつだい里山食堂 前編後編
3|旅の最後は“祈り”のアート『手をたずさえる塔』へ
4|アート里山をめぐる 前編後編
5|ジェームズ・タレルの泊まれるアート『光の館』
6|総合ディレクター・北川フラム氏に聞いた、アートの力で地域の魅力を掘り起こす秘訣とは?
7|十日町エリアの作品・作家マップ 前編後編
8|川西エリアの作品・作家マップ 前編後編
9|中里エリアの作品・作家マップ 前編後編
10|松代エリアの作品・作家マップ 前編後編
11|松之山エリアの作品・作家マップ 前編後編
12|津南エリアの作品・作家マップ 前編後編
13|6エリア別 作品・作家見どころガイド
14|出展アーティスト4名に聞く作品に込めた思い

text: Ryosuke Fujitani photo: Norihito Suzuki
Discover Japan 2022年6月号「アートでめぐる里山。/新潟・越後妻有”大地の芸術祭”をまるごと楽しむ!」

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