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納豆の栄養とルーツの秘密!
《高野秀行さんに学ぶ、納豆の豆知識》

2021.7.12
納豆の栄養とルーツの秘密!<br><small>《高野秀行さんに学ぶ、納豆の豆知識》</small>

「畑の肉」ともいわれるほどの豊富なタンパク質をはじめ、さまざまな栄養素を含む納豆。現在解明されている納豆の秘密を教えます。

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謎のルーツをもちながら
手軽な健康食品として認知

納豆の原料である大豆は、豆類の中でもずば抜けてタンパク質が多く、脂質も多め。しかも山の中の痩せた土地でもよく育ち、栽培しやすいことから、山岳地帯における貴重なタンパク源として食べられてきたと考えられている。

しかし大豆のタンパク質は人の体内で分解しづらい性質をもっており、そのまま食べるとあまり消化吸収されない。サポニンやトリプシンインヒビターなど、消化を妨げる成分が含まれているからだ。

この問題は、大豆を納豆にすることで解決できる。納豆菌は有害物質を分解して吸収しやすくしてくれる上、各種ビタミンなどの副産物を生成。さらに血栓の溶解を促し、動脈硬化の予防に効果があるナットウキナーゼ(血栓予防物質)など人体に有効な成分をつくり出してくれる。納豆は、栄養豊富な大豆を美味しく、効率よく食べるための巧みな方法だったのだ。

そんな元祖スーパーフード・納豆は、いつごろから食べはじめられてきたのだろうか?

日本における納豆のルーツは諸説あり、高野さんによれば、大別すると「渡来伝播説」、「国内独立起源説」のふたつが挙げられるという。

「日本の食べ物の多くが大陸から伝えられた歴史があり、糸引きの納豆も当然中国由来のものだという自然な流れから、渡来伝播説は根強く支持されています。しかし中国には『納豆』という言葉自体、存在したことがないという点が謎として残るのです。

一方で国内独立起源説はどうかというと、多くが誰それが発見したという伝承に過ぎず、確固たる根拠を見聞きしたことはありません」

これほど長い歴史をもち全国的に親しまれる国民食でありながら、そのルーツは謎に包まれているのだ。

現在一般的になっている「糸引き納豆」が歴史上で確認されたのは、室町時代に書かれたとされる書物『精進魚類物語』。平家物語のパロディで、精進もの(植物性の食材)VSなまぐさもの(動物性の食材)の戦いを描いたおとぎ話だ。納豆は、精進もの側の大将として登場する。歴史上の初登場が創作ストーリーの中というのも、なんとも納豆らしい不思議なエピソードだ。

また、食べ方に注目してみると、そもそも納豆は主に汁にして食べるものだったらしい。少なくとも室町時代から江戸後期までは、納豆汁として食べられていたと考えられている。鰹節や昆布など、魚介由来の出汁がなかなか手に入らない地域でも、納豆だけで旨みが出せることから、調味料のように使われていた。

実際、戦国時代に茶の湯を確立した千利休は、茶会で出す料理の献立として納豆汁を書き残している。当時は冬場の懐石料理に採用されていたようで、3カ月のうちに茶会で7回も納豆汁を提供した記録が残っているという。

粒の納豆をご飯にかけて食べるようになったのは、街中で「納豆売り」が練り歩くようになった江戸後期のこと。その後、明治、大正と時代が移り変わるにつれ、納豆の製造業者が誕生し、製造法の改良や新容器の開発が進められて国民的発酵食品になっていった。

日本における“納豆発祥の地”は定かではないが、秋田や山形などの東北地方の内陸部が納豆づくりの“本場”であると高野さんは考えている。

「納豆といえば茨城県の水戸、と考えている人も多いですが、水戸納豆を確立した元祖・笹沼納豆の創始者も宮城県に行って納豆づくりを教わっています。水戸名物として納豆が認知されはじめたのは昭和以降のことなのです」

ベールに包まれたルーツと歴史。納豆の世界はまだまだ奥深く、謎が多い。

元祖スーパーフード!
欲しい栄養素、すべてとれます

タンパク質
大豆には、身体をつくる材料となるタンパク質が豊富に含まれるが、体内で分解されにくく消化吸収はいまひとつ。しかし納豆にすると、納豆菌の働きにより、タンパク質の分解が進み、消化吸収しやすくなる。

炭水化物
身体や脳の主要なエネルギー源となる糖質や食物繊維の総称。不足すると脳や筋肉が正常に働かなくなるため欠かせない栄養素だ。納豆に含まれるビタミンB1、B2は糖質をエネルギーに変える手助けをしてくれる。

脂質
とり過ぎると生活習慣病や肥満のリスクを高めてしまうが、エネルギー源として欠かせない脂質。納豆には、体内では合成できない必須脂肪酸であるリノール酸が豊富で、血中コレステロールを下げる働きをする。

ビタミン
納豆菌は発酵の過程でタンパク質を分解するときの副産物としてビタミンK2やB1、B2、B6などを生成する。皮膚や粘膜を守ったり、カルシウムの結合を強めて丈夫な骨をつくったりとさまざまな手助けをする。

ミネラル
代謝を助け、神経伝達にも関わるミネラルは、体内でほとんど合成されず現代人に不足しがちな栄養素。納豆にはカルシウム、鉄、カリウム、亜鉛などが含まれており、貴重なミネラル源としても注目される。

納豆には、糸引く4つの歴史がある

納豆の起源には諸説あり、どれも伝説の域を出ていない。ここでは比較的ポピュラーな4つのルーツをご紹介。

1.飛鳥時代に聖徳太子が発見した
600年頃、いまの滋賀県にある笑堂(わらどう)というところで、聖徳太子が自身の愛馬の餌として食べさせていた煮豆が余り、捨てるのも忍びないのでワラで包み木にぶら下げていたところ、糸を引く納豆になっていたという伝説。食べてみると美味しかったことから、周囲の人々は聖徳太子につくり方を教わり、広まったという。

2.八幡太郎(源義家)が発見し、全国に広めた
平安時代、奥州(現在の岩手県)で起きた反乱を治めるために京都から派遣された八幡太郎(源義家)が、その道中で馬の背に載せた煮豆を詰めた稲ワラの俵を開けたところ、糸を引いた納豆を発見したという伝説。食べてみると美味しく栄養も豊富であったことから、岩手から京都への帰り道に立ち寄った各地で広めたといわれる。

3.弥生時代に大陸から稲作と大豆が伝わった
中国大陸から稲作が伝えられた弥生時代、同時に大豆も伝えられたことから偶然納豆が生まれたという説。当時の住居は床にワラを敷いていたことから、煮こぼれた豆が自然に発酵したのがはじまりだといわれている。良質なタンパク質を得られる食材として、当時の人たちが納豆をつくって食べていた可能性も十分あるだろう。

4.縄文時代にすでに納豆を食べていた
高野さんは、大陸から稲作が伝わる弥生時代より以前、縄文時代にすでに納豆は食べられていたのではないかと仮説を唱える。というのも、縄文土器から野生種であるツルマメの痕跡が発見され、縄文人が大豆を食べていたことがわかったから。稲作伝来以前でワラはなかったが、葉っぱで包んで発酵させていたとしても不思議はない。

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納豆トリビア!今日から役立つ納豆の10の秘密
 
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text: Miki Yagi photo: Akio Nakamura, Kazuya Hayashi
Discover Japan 2021年7月号「ととのう発酵。」

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