HOTEL

「アマン京都」
知られざる京都にひそやかに息づくリゾート

2020.3.12
「アマン京都」<br>知られざる京都にひそやかに息づくリゾート
リゾートの中心となる建物がここ、オールデイダイニング「ザ・リビング パビリオン by アマン」。前面の庭は建築デザイナー、ケリー・ヒルの名を取った「ケリーヒル ガーデン」

ここは“京都の奥座敷”。山に囲まれたふもとには豊かな自然の息づくの森が広がる。人知れず時を重ねたこの地は、かつて、西陣織の織屋が約40年もの歳月をかけて育んできた庭園であった。その森にいま、アマンがひそやかに門を開けた。これまでにアマンが費やした時が20年以上と知れば、この地につづられた物語を容易に語り切れるはずはない。

「鷲ヶ峯パヴィリオン」(241㎡)の和室。床の間には鷹峯三山より立ち上がる霧を描いた掛け軸が。中世の瀬戸焼のうつわである瓶子(へいじ)など、先人の美学を踏襲した

アマンらしさと日本が融合。
自然の中に溶け込むようにある空間

新たなホテルや旅館が目まぐるしくオープンする京都において、2019年11月1日、世界的に名の知れたアマンが「アマン京都」として開業に至った。ここは京都北区鷲峯町。左大文字山から続くのふもとに広がる深い森に、木々に隠れるようにひっそりと佇むアマンの客室棟が点在する。エントランスの立派な木戸門を閉めてしまえば、本当に、この森にアマンがあるのだろうかと思うほど静謐な空気が漂う。こうしたひそやかなロケーションはいつものアマン流。世界遺産の金閣寺(鹿苑寺)のほぼ裏手といえば、おおよその方角がつかめるだろう。

ここ鷹峯界隈は、江戸の初期まで歴史をさかのぼると、(桃山時代後期に興った造形芸術の流派)の創始者の一人、がここに居を構えたという事実が残る。以来、京都洛北のこの土地は、芸術村として華々しく栄えていたという。前オーナーについては、「最高級の織物“西陣織”を扱っていたかつての土地の所有者で、ここに織物美術館を創ることを夢見て、約40年もの間育んできた」という。この広大な森の庭は、かの主にとって夢を託した安息の場所だったのだ。

アマン京都の敷地は約2万4000㎡。森を含めた敷地総面積は約32万㎡という広大な土地である。森のところどころに見える自然の湧き水や滝、石や巨岩の積まれた遺跡のような壁や塀、いくつもの地蔵や七福神の石像が置かれる小道、山からの水が流れる渓流、そして敷地の最奥にある苔むす大階段。ここを満喫するには、まず森を散策し、森の音や香りに包まれて自然が放つエネルギーを感じるといい。庭づくりの関係者に話を聞いた。「新しく整備した庭の通路や壁には、既存の石材と同じ色味・質感の石を選んで調和を図った。石がアマン京都の庭では不可欠な要素だから。また、前オーナーが収集した多くの石材は、そのまま、あるいは手を加え景石や舗装、沓脱石として敷地内の随所に活用した」と。

かつての主が庭に込めた夢、語り尽くせぬ歴史ロマンが残された特別な森の庭で、ホテルが掲げる5つのエレメント「石、水、光、森、苔」に向き合い、五感を研ぎ澄ませてみてほしい。

森の奥に建つ人気の客室棟「蛍」。裏手に流れる紙屋川には季節になると蛍が飛ぶ。苔むした庭や石垣に面した西向きの部屋。
森の小道を歩けばこうして苔むした石垣が随所に現れる。この中は井戸のように貯水

森全体が舞台、アマンの森に宿る物語

「ザ・リビング パビリオンby アマン」の外につくられた“暖炉”は自由に集える場
敷地内の一画には石積みの門柱に太く大きなしめ縄が飾られ、神々しい空気が漂う
一段高い森の小道。その途中にある石を敷き詰めた場所。ヨガや瞑想といったアクティビティにも
紙屋川の近く、しめ縄のある土手にはいくつもの地蔵や石仏が置かれている

“ウェルネス”もキーワード。
心身ともに癒される滞在ができる

アマン京都での滞在は、木々に覆われた敷地内を歩くだけでも十分な森林浴になる。また京都らしい食事や、斬新なアフタヌーンティーも提供されている。中でも、静けさを堪能するモダンな客室でのひとときは、ここに滞在する最大の歓びでもある。客室は全26室。スタンダードルームは60㎡の広さを有し、泊まってみてわかる心地よさや贅沢さ、使い勝手のよさはすべてのアマンで感じる特徴だ。デザインはケリー・ヒル・アーキテクツ。迷いのないモダニズムと日本伝統の繊細な融合は、デコラティブな装飾を可能な限り省いたミニマルな造形美である。

敷地の一段高い位置につくられた2棟の客室棟は、165㎡の「スイート」、241㎡の「鷲ヶ峯パヴィリオン」だ。いずれも意匠の基本は他の客室と同じ、違いはキッチンやダイニング、リビング、檜風呂など付帯設備にある。

敷地内には、天然温泉付きのウェルネスエリアがつくられている。京都で温泉? と驚かれそうだが、アマン・スパ内の温泉施設は、天然温泉の広い内湯と本格的な露天の岩風呂があり、まるで温泉旅館のようだ。たとえば、トリートメントを受ける前に、ゆったりと温泉に浸かり、心身の疲れを和らげれば施術との相乗効果はより期待できる。疲労回復や筋肉痛の改善、美肌効果もあるというアルカリ性単純泉は、四季を通じて楽しめるうれしい施設だ。スパ利用をしなくても、滞在者は利用可能。贅沢な温泉三昧ができる京都の隠れ家である。

アマンのウェルネスに対する研究は世界のアマンがひとつとなり、伝統療法と最新科学の研究から日進月歩でクオリティを高めている。ライフスタイルの改善、食事、運動などから健康と精神のバランス向上を目指している。ここ京都では、宇治茶や地酒、保湿効果のある米糠、日本産海塩、高ポリフェノールでアンチエイジング効果も高く、アントシアニンやイソフラボンを含む黒豆など、自然由来の素材を用いた施術も提供。一人ひとりの状態に合わせてプログラムがカスタマイズされる。また、ウォーキングやヨガなど自然と対峙する運動も提案されている。

ここ鷹峯三山麓の森には樹齢100年を超える北山杉が約3000本。多忙な日常を忘れ、洛北の森が放つプラスのエネルギーを体感し、心身を癒す天然温泉にゆったりと浸かる。静けさの中に身をゆだねる、かけがえのないプライベートな滞在となろう。

鷲ヶ峯パヴィリオンの寝室のひとつ。大きな窓には背の高い木々が映り込み、まわりの森との一体感がある。遠くには比叡山の眺望
天然温泉を引いたウェルネスエリアの露天風呂。内風呂ともに男女別あり、スパを利用しなくても宿泊者は利用可能(要予約)。アマン京都の近郊に湧き出る天然温泉を引いている
鷲ヶ峯パヴィリオンの贅沢なリビングルーム。中央にリビングを配し、両サイドにベッドルーム。ダイニング、ワインセラー付きキッチンが併設
鷲ヶ峯パヴィリオンの和室。床の間には掛け軸と陶磁器の壺「白刻」(明主航作)。この壺は時の経過により変化する美しさを表現
スパで用意されるプロダクツ。右上は金閣寺御用達の蔵元の金粉入り日本酒。真ん中は海塩とオーガニック米糠をオイルで練るスクラブ用素材
足浴からスタートするるトリートメント。昔の旅人へのもてなし(まず足を清潔に)が伝承され、いまは癒しの世界へ誘うはじまり

気鋭のシェフが創造する京都食材の新しい世界

アマン京都での食事は、日本料理「鷹庵」、オールデイダイニング「ザ・リビング パビリオン by アマン」の2カ所で提供される。“京都の和食、外資系ホテルの洋食”という概念を超え、気鋭の料理人が自由に腕を振るっている。鷹庵がメインダイニングであり、料理長の三田紘司さんは、「食材は季節に応じて最も美味しい調理法で」と筋を通す。そして「本阿弥光悦へオマージュを捧げており、この鷹峯の地から世界に日本の食文化を発信したい」と語る。料理長は和食の名門「吉兆」で23年間、技を磨いた職人だ。出汁や基本にこだわる一方、新和食にも挑む。

ケリーヒル ガーデンに面した「ザ・リビング パビリオン by アマン」では、イノベーティブな料理を基本に朝食から夕食までを提供。和洋折衷の独創的なアフタヌーンティーも話題だ。総料理長を務める鳥居健太郎さんは、ヨーロッパやアジアで16年という研鑽を積んだ若い料理人。「食材の地域性を大切にしたい。コンセプトはLand to Tableです」と、ほとんどの食材を京都産にゆだねている。家庭の味おばんざいから新感覚のイタリアン、ヨーロピアンまで、総料理長の創造するのは、料理自体の概念を超え独創性に富んでいる。

オールデイダイニング「ザ・リビング パビリオン by アマン」

ダイニングはゲストが自由に集まるラウンジのよう。窓の外にはデッキがつくられ、外での食事もOK。人気のアフタヌーンティーは2段のお重箱にスイーツやセイボリー、またワゴンサービスでは3種のタレが選べる焼き団子や抹茶をサービス
京鴨のローストに九条ネギのグリル。赤カブのピクルス添え。ソースはバルサミコ、赤ワイン、鴨のジュなど
シェフ得意の「リゾピラフ」はリゾットとピラフの融合。伊勢海老のビスクスープを注いで食す冬の逸品

朝食は宿泊者限定。おばんざいと洋食どっち?

「とようけ屋」の豆腐を使った湯豆腐はワゴンサービスで。
和朝食は京都米、サワラの西京焼き、湯豆腐、ちりめん山椒など。
この日の洋朝食は京都産食材のアメリカンブレックファースト

厳選京都食材の一例

アマン京都から徒歩10分の距離にある松野醤油を使用。昔ながらのつくりの各種醤油。
米は京都府南丹市の京都米「旭1号」。無肥料、無農薬の「幻の米」で120年前からまったく掛け合わせなし。
有精卵は「大原山田農園」から。
「京豆腐一筋」とうたう明治30年創業の「とようけ屋」の豆腐

和菓子も採り入れたアフタヌーンティー

2重の御重箱にはスイーツとセイボリー。セイボリーは、いくらのキッシュや生ハムと九条ネギの最中など。団子はその場で焼いて、みたらしあん、味噌、あんを選択。(要予約)

日本料理を楽しむなら「鷹庵」へ

スタイリッシュでミニマル、美しい内装のメインダイニング鷹庵。料理人が働く目の前には11mもの一枚板のカウンターが。空間、うつわ、料理長の料理が芸術的な香りを放ち、旬を食せる贅沢な日本料理。

メインダイニングの鷹庵にて。カニ、針ショウガ、麩を盛り合わせた向付
竹のような有田焼のうつわに盛られた造り。伊勢海老、鯛、紋甲イカ。金箔添え
煮物椀。雉肉に鰹出汁、白味噌仕立て。サンドマメ(隠元豆)に和辛子添え

日本の美意識と洋のモダニズムが融合

全26の客室の内装は日本旅館に継がれる伝統と文化を踏襲。照明や家具類はオリジナル、アートは深い創造性を秘め、全体的に可能な限りミニマルに。贅沢なしつらえの大きな檜風呂、広いバスルームは木づくりの温かみがある。

随所に見られる京都の技

西陣織のベッドスローは鷹峯をイメージした誉田屋源兵衛 10代目山口源兵衛の作品。
西陣織のクッションは、老舗テキスタイルメゾン「HOSOO」によるもの。
老舗「京和傘日吉屋」の和紙を張る技術を応用

使い心地を追求したアメニティ

パジャマはガーゼ地でサイズはMとL。肌に馴染む柔らかな生地製
ソフトで軽いバスローブは着心地抜群。フカフカで温かく水切れもいい
しっかりと目の詰まった上質なタオル3種。バス、ハンド、フェイス
各客室に用意されているエコバッグはキャンバス地製。持ち帰り可
日本製のボディケアやヘアケア品はアマンオリジナル檜の香り
デンタルケアはイタリア・フィレンツェのブランド「MARVIS」

アマン京都
住所|京都府京都市北区大北山鷲峯町1
Tel|075-496-1333
客室数|26室
料金|1室11万円〜(税・サ別)
カード|AMEX、Diners、DC、JCB、VISAなど
IN|15:00 OUT|12:00
アクセス|車/名神高速道路京都東ICから約50分 電車/JR京都駅からタクシーで30分
 
 

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text=Kyoko Sekine photo=Mariko Taya
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