なめらかで上質な里仙の「栗かん」
福田里香の民芸お菓子巡礼
民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は民芸運動と深いかかわりのある菓子舗・里仙の「栗かん」を紹介する。
福田里香(ふくだ・りか)
お菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍する。8年間にわたり続けている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中
『民藝』は、日本民藝協会が発行する機関誌です。1952(昭和27)年創刊の『民藝』は、令和元年の今年ついに創刊67年で800号を超えた長寿雑誌。素晴らしい快挙です。ところで雑誌を何のために出版するかといえば、それはひとえに読者のため……ではありますが、雑誌存続のために必要な支えはスポンサーの広告費です。
長年『民藝』に広告を入れ、金銭的に支えたのは、民芸運動に賛同する各地の民芸店や料理店、それに菓子舗でした。彼らは広告だけでなく、内装やうつわ、パッケージデザインなども民芸運動家に依頼するなど関係性を築きました。
新潟市の菓子舗「里仙」は、昭和40年代頃すでに『民藝』に「栗かん」の広告を出し続けていました。当時10代の私には憧れの和菓子。実際口にしたのは大人になってからでした。
秋から春にだけつくられる栗かんは普通の栗羊羹ではなく、上生菓子と同じ煉切製法の白あんに、蜜煮した栗をたっぷり混ぜ込んだ棹物。羊羹にはないなめらかさで舌に溶けます。風味絶佳とはこのことです。
里仙
住所|新潟県新潟市中央区古町通13番町2850-1
Tel|025-228-9234
営業時間|8:30〜18:00
定休日|元日
https://satosen.net
text : Ricca Fukuda photo : Wakana Baba
2019年12月号 特集「人生を変えるモノ選び。」