「アートビオトープ那須」二期倶楽部の美意識を受け継ぐスイートヴィラ・リゾート【前編】
世界的建築家による建築やアートに触れられるリゾートをはじめ、地の個性を生かした全国の注目宿を前後編記事にてご紹介。ヴァーチャルでは味わえない唯一無二の滞在を堪能したい。
“贅沢な孤独”を愉しみ
インスピレーションを得られる場所
アートビオトープ那須 スイートヴィラ/栃木県 那須町
那須高原に佇む「アートビオトープ那須」。アーティストの創作活動をサポートするレジデンス、石上純也さんが手掛けた「水庭」を有する同施設に、建築家・坂 茂さん設計によるスイートヴィラ、レストランが新たに誕生。
関東の北限、東北の南限にあたり、南北系の植物が混在する栃木県那須。その中でも山林と渓流の自然が広がる横沢エリアに「アートビオトープ那須」はある。ここは多くのファンに惜しまれつつ閉館した「二期倶楽部」創業者の北山ひとみさんがプロデュースするリゾート。「二期倶楽部創業20周年を記念した文化事業」として誕生したレジデンス、ガラス工芸などの創作スタジオに続き、建築家・石上純也さん設計の「水庭」が完成。2020年10月には建築家・ 坂茂さんによるスイートヴィラとレストランがオープンした。
アートと、生物の生息域を意味するビオトープを組み合わせた造語「アートビオトープ」は、アートの生息地を意味する。ヴィラの建設用地から318本の木々を移植し、160個の小さな池をモザイクのように配した「水庭」は、そのコンセプトを象徴するランドアート。新緑、紅葉、雪化粧と季節ごとの姿を見せながら変化する作品で、一歩足を踏み入れると、自然と心身を対話させるメディテーション空間の機能を果たす。敷地内には、ほかにも陶芸家近藤高弘さん、キュレーター新見隆さんなど多くの作家の作品が点在。ゲストルームやラウンジは、作品を展示するギャラリーの役目も担う。
自然とアートに囲まれた滞在は
ひそやかに新たな感性を開かせてくれる
自らを建築オタクと称する北山さんがヴィラの設計を依頼したのは、国内外で活躍する世界的な建築家である坂 茂さん。北山さんはその理由を、「阪神淡路や東日本の大震災で建築家として大きく社会貢献をしたことでも知られ、その姿勢に強く共感した」と語る。ミニマルで知性を感じられる新時代のラグジュアリー空間は、二人のコラボによって誕生した。
重厚感のある屋根をもつヴィラは、渓流沿いのゆるやかな傾斜を生かした構造。エントランスとベッドルームが中2階に位置し、5段の階段を降りるとリビングスペース、3mの奥行きのあるテラス、そのテラスに張り出すように設計されたバスルームにつながる。
「ここでは、沈黙と孤独こそが最上の贈与」という滞在のコンセプトを体現できるよう、部屋には本だけでなく、コーヒーやお茶を淹れるための本格的な道具が揃う。全室に、現代工芸や書籍を紹介する展示スペース「」が設けられているのも特徴。それぞれの客室の棚には異なる作家の作品が並び、滞在中の購入も可能だ。
敷地内にある陶芸とガラスのスタジオでは、アートに触れるだけでなく、作品づくりにも挑戦できる。体験とはいえ、レストランのうつわやガラス作品を手掛けるアーティストを講師に、本格的な創作活動が楽しめる。鑑賞だけでなく創作に携わることで、アートの楽しみの幅は大きく広がる。
自然とアートがシームレスにつながる空間での滞在は、癒しだけでなく感覚を研ぎ澄ます刺激を与えてくれる。
部屋で過ごす時間を豊かにしてくれる
寛がせてくれるアメニティ
植物の力を生かすナチュロパシーに基づいたニキシモブランドも展開している同社。オリジナリティあふれるアメニティは、部屋で過ごす時間を最良のものに演出。
読了ライン
アートビオトープ那須 スイートヴィラ
住所|栃木県那須郡那須町高久乙道上2294-5
Tel|0287-74-3300
客室数|15室
料金|1泊2食付6万600円〜(サ込・税別)
カード|AMEX、Diners、DC、JCB、UC、VISAなど
IN|15:00 OUT|11:30
夕食|フランス料理(レストラン) 朝食|洋食(部屋)
アクセス|車/東北自動車道那須ICから約20分 電車/那須塩原駅からシャトルバスで約30分(無料、要予約)
施設|水庭、ラウンジ、トリートメントルーム、スタジオ、レジデンス
text: Akiko Yamamoto photo: Maiko Fukui
Discover Japan 2021年2月号 特集「最先端のホテルへ」