HOTEL

豪華クリエイターが集結して手掛けたアートホテル「白井屋ホテル」
前橋はイノベーションシティとして生まれ変わる。

2021.3.23
豪華クリエイターが集結して手掛けたアートホテル「白井屋ホテル」<br><small>前橋はイノベーションシティとして生まれ変わる。</small>
「ヘリテージタワー」の圧巻の吹き抜けにあるthe LOU NGEは、宿泊者以外にも開放するオールデイダイニング兼ラウンジ。名作家具が並び植栽はSOLSOが監修

国道50号線を歩いていると、突如現れる現代美術家、ローレンス・ウィナーのタイポグラフィ。その建物の中に入ると、4層吹き抜けの開放的な空間に、むき出しの梁や柱の合間を縫うようにレアンドロ・エルリッヒのインスタレーション『Lighting Pipes』が張りめぐらされ、幻想的な光を放っている──。

かつて日本近代化の礎を築いた前橋の街中に昨年オープンした「白井屋ホテル/SHIROIYA HOTEL」が話題だ。もともとこの地には、江戸時代に創業し、旧宮内庁や森鷗外、乃木希典といった多くの芸術家や要人に愛された「白井屋旅館」があった。その名宿は1975年にホテル仕様に建て直されたが、街の衰退とともに2008年に惜しまれながら廃業。取り壊しの危機に陥っていたところ、2014年より前橋市の活性化活動「前橋モデル」を主導する田中仁財団の活動の一環として再生プロジェクトがスタートした。杉本博司はじめ名だたるアーティストが参加する本プロジェクトの全体設計を手掛けたのは日本を代表する建築家・藤本壮介。旧ホテルの既存躯体の柱梁を全面に生かしたドラスティックなリノベーションが印象的な「ヘリテージタワー」と、かつて利根川の支流にあった土手の情景をイメージした新築の「グリーンタワー」の2棟からなるこのホテルは、前橋にイノベーティブな風を吹き込んだ。

藤本壮介(ふじもと・そうすけ)
1971年生まれ。第13回ベネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館の展示で金獅子賞受賞。2025年大阪・関西万博の会場デザインプロデューサーに就任

前橋文化再生の礎となる
アートホテルが誕生

フロントには、現代芸術作家・杉本博司のライフワーク『海景』シリーズから、自身がセレクトした淡水湖をとらえた作品を展示

「白井屋ホテル」では、その独創的な建築だけでなく、至るところでアートが体感できる。中でも特筆すべきは世界で名を馳せるクリエイターが手掛けた4つのスペシャルルームだ。ジャスパー・モリソン、ミケーレ・デ・ルッキ、レアンドロ・エルリッヒ、藤本壮介それぞれが内装設計から行った空間は、いうまでもなく類を見ない。それに呼応するようにほかの客室には、白川昌生、鬼頭健吾といった群馬を拠点にする作家や、廣瀬智央など国内外で活躍するアーティストの作品を展示。全客室はふたつとして同じ空間がないのだ。

世界的アーティストによる
美術館のような客室

藤本壮介ルーム

全25部屋の客室では、それぞれ異なる作家の個性豊かなアート作品が点在。中でも注目したい世界でひとつだけしかない、スペシャルルーム4部屋を大公開。

白を基調としたシンプルな内観デザイン。モダンかつシックな空間に植物が生えている不思議な空間は、インスピレーションが刺激される

家具の至るところから生えるベンジャミン空間だけでなく家具もデザインを手掛けた。一部可動もできるジョイントに、ベンジャミンの生の枝を挿すことで部屋全体を立体的に演出している。

テキスタイルのパターンを壁紙に「白井屋ホテル」のテキスタイルを手掛けたのは安東陽子。カーテンのパターンの壁紙は、コンクリートむき出しの壁面にアートのように映える。

藤本壮介(ふじもと・そうすけ)
1971年生まれ。第13回ベネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館の展示で金獅子賞受賞。2025年大阪・関西万博の会場デザインプロデューサーに就任

ジャスパー・モリソンルーム

木箱のアイデアから生まれた客室。装飾性を排除し、椅子やテーブル、照明、ダストボックスなどほとんどをジャスパー・モリソンの作品で埋め尽くした。檜の浴槽もこの部屋のために新たにデザイン。

ジャスパー・モリソン
1959年、ロンドン生まれ。Vitra、Flos、Alessiなどのプロダクトから電化製品、公共空間のデザインまで幅広く手掛ける。世界で最も影響力のあるデザイナーの一人

ミケーレ・デ・ルッキルーム

イタリア建築界の巨匠、ミケーレ・デ・ルッキが木片を2725枚使用した板葺き空間は、部屋そのものがインスタレーション。木に包まれるような非日常が味わえる。ユニークなスツールも彼のデザイン。

ミケーレ・デ・ルッキ
1951年、イタリア生まれ。’70年代から前衛的な建築、デザインを牽引。数々の名作家具を生み出す一方で、文化的ランドマークとなる建築プロジェクトを国内外で展開

レアンドロ・エルリッヒルーム

現代美術家、レアンドロ・エルリッヒがはじめて手掛けた“泊まれるアート作品”。「the LOUNGE」の吹き抜けにある作品『Lighting Pipes』が部屋だけでなく、コップなどの備品にまで及ぶこだわり。

レアンドロ・エルリッヒ
1973年、アルゼンチン生まれ。ローマ現代美術館やMoMAなど世界中で個展を開催。国内では、金沢21世紀美術館に恒久設置された『スイミング・プール』が名高い

「フロリレージュ」川手寛康シェフ監修!
群馬の食文化をモダンフレンチに昇華したメインダイニング

コンソメスープ
スターターは、滋味深いコンソメスープ。器を両手で包んでいただくことで、レストランの語源である「rest」=回復を体感

その感性を刺激する出合いは食にも宿されている。ミシュランガイド東京で二つ星を獲得した東京青山「フロリレージュ」のオーナーシェフ・川手寛康が監修。腕を振るうのは、国内外の名店で研鑽を積んだ群馬出身の片山ひろシェフだ。地元の生産者を訪ねて吟味した食材をふんだんに使用し、確かなフレンチの技巧と独自の解釈で上州の食文化を再構築するコースは、一皿ひと皿が美食の驚きに満ちている。

ローカル+グローバルの“グローカル・キュイジーヌ”を発信するthe RESTAURANTの8皿から冬のコースの一部を公開。

OKIRIKOMI
群馬県郷土料理のひとつ、煮込み麺料理をアレンジ。ニンジンの生地で包み、マイタケの泡ソースで香り高く仕上げた
牛 大豆
メインは赤城牛。牛が食べている大豆から着想を得た大豆のピューレや味噌のチップスを合わせ、畜産の恵みと情景を表現
ソムリエによるペアリングドリンクにも注目!
コース料理にはソムリエ・児島由光さんによる、ペアリングドリンクを。車で来た宿泊者のためにノンアルコールも用意

個性が光るアメニティを用意

アートやインテリアだけでなく、アメニティ一つひとつにまでこだわりが光る。全部屋共通のプロダクトはこちら。

バスローブ
タオル類は「今治タオル」。着心地のいいバスローブやパジャマも特注品
上毛かるた
群馬県民お馴染みの郷土かるた。県の歴史や自然、歴史的人物などを詠んでいる
エコプロダクツ
竹の歯ブラシやリサイクルの箱など、エココンシャスなアメニティを導入
ランドリーバッグ
スタイリッシュなランドリーバッグもオリジナル。土産として持ち帰りもできる
昼夜楽しめる館内アートを見つけて
夜になると「グリーンタワー」の小屋にある宮島達男の作品が輝く

そういった新しいアートと食文化の発信は外に向けられ、街で暮らす人と訪れる人が交感することによって、前橋にしかない次代のカルチャーが生まれる。その萌芽をぜひ体験してほしい。

≫前橋で一体何が起きている?ジンズ代表 田中仁さんに直接伺いました!

SHIROIYA HOTEL/白井屋ホテル
住所|群馬県前橋市本町2-2-15
Tel|027-231-4618
料金|1泊3万円〜(税・サ別)
www.shiroiya.com

text: Ryosuke Fujitani photo: Kazuya Hayashi
Discover Japan 2021年3月号「ワーケーションが生き方を変える?地域を変える?」


≫現代美術作家 杉本博司と建築家の榊田倫之が手がけた、白井屋ホテル 特別個室「真茶亭」が完成!

≫海と空との間に佇むホテルで、ヘルシー&エレガントな自分時間を過ごす「神戸メリケンパークオリエンタルホテル」

≫感性を刺激する那須のアートヴィラ「アートビオトープ那須」

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