TRADITION

十二単って本当に12枚着ているの?
ご大礼の見方が深まるおしゃれ学

2019.5.30
十二単って本当に12枚着ているの?</br>ご大礼の見方が深まるおしゃれ学
下巻:今上天皇御即位大嘗祭絵巻 皇學館大学神道博物館

今年の秋に迫る、新天皇陛下が即位を宣言される「即位礼正殿の儀」。このときに天皇、皇后両陛下がお召しになるのは、束帯や十二単といった、平安時代から貴族が着ていた装束です。

実は十二単は、12枚ではなく8枚の構造だったと知っていましたか? 宮中最高の儀式服である十二単の秘密を紐解きます!

【監修】
八條忠基さん
綺陽装束研究所主宰。古典文献の読解研究に努め、「有職故実」の知識を現代の生活に広く活用するための研究・普及活動を続ける。主な著書に『素晴らしい装束の世界』(誠文堂新光社)、『有職装束大全』(平凡社)がある

時代によって変遷してきた、宮中の女性装束

宮中の女性が着用した中国風の「乙姫さま」のような装束が、いつ日本風の「十二単」になったのか、実はよくわかっていない。文献をたどると平安中期、清少納言や紫式部の活躍した時代に変化したと思われている。

「十二」というのは、「十二分に」という言葉があるように、「たくさん」を意味するもので、平安時代には20枚以上重ねて歩行が困難であったという話も残っている。その時代には貴人に仕える女房が着る装束ということで「女房装束」と呼ばれていた。

また、江戸時代が終わるまでは、女性が公の場で儀式に参加する機会が少なく、一定の着付け方法が定められたのは、大正の即位礼のとき。ここで「五衣唐衣裳」という名称も定まった。

さらに、江戸時代までの日本のカイコが出す糸で仕立てた十二単の重さは、明治以降のフランス種の3分の1の重量、いまよりはずっと軽かったと思われる。現在の絹糸は太く重いので、立って長時間の儀式をする「立礼」の実情に合わせ、五衣を「比翼仕立」(襟袖裾の見える部分のみ5枚重ね)にして軽量化を図っている。

十二単はこうなっている!

正式名称「五衣唐衣裳(いつつぎぬからぎぬも)」の見どころは、なんといっても重ねた五衣の美しいグラデーションだ。袴姿から豪華な織物で仕立てられた唐衣を羽織、後ろに裳を引く姿までを一から順に解説!

①長袴を履く
原則である紅の長袴は筒形で、裾は後ろに長く引く。前後のひもが一連になっており右端で結ぶ

②単を重ねる
単は次に着る衣よりひと回り大きく、袖口や裾先が大きくはみ出るように着付け

③五衣の1枚目
単と表着の間に着る「袿」を5枚重ねた総称が「五衣」。まずは1枚目を羽織り、ひもで結ぶ

④五衣の2枚目
五衣の2枚目からは、単と1枚目の袿の袖、裾先を少しずつずらしながら着付けていく

⑤五衣の3枚目
衣を束ね、結ぶひもは、基本的に1本のみを使用して着付ける。次の衣を着ては抜く、を繰り返していく

⑥五衣の4枚目
平成のご大礼で皇后陛下が着用した「紅の匂」という重ね色目。徐々に紅が濃くなっていく

⑦五衣の5枚目
五衣のラスト。4枚目の結んだひもをゆっくりと抜き、襟元、袖、裾先の重ね目を調整していく

⑧ひとつ前の完成
重ねた五衣をまるでひとつの衣のようにまとめていく「ひとつ前」の合わせに直す

⑨打衣を重ねる
もとは砧で生地を打ち光沢を出した晴れの場で用いた装束。現在ではカラーアクセント役に

⑩表着を重ねる
一番目立つ衣として着用する表着は、好みに応じた色や柄を合わせ、おしゃれを楽しむ

⑪唐衣と裳をつけて完成
表着の上に、袖と丈の短い唐衣を重ね、後方の腰より下には、装飾的に裳を着装し、後ろに長く引く

皇后陛下が十二単を着用される「即位礼正殿の儀」は、2019年10月22日。
この一世一代の儀式を、ファッションという視点からも楽しんでみてはいかがだろうか。

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天皇・皇后両陛下のファッションについてさらに深掘り!

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文:八條忠基、編集部 / 写真:服部希代野 / モデル:川村海乃、阿部快征
撮影協力:綺陽装束研究所 早稲田「待賢殿」
※この記事は2019年5月7日に発売したDiscover Japan6月号 特集『天皇と元号から日本再入門』の記事を一部抜粋して掲載しています。

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