ART

新潟・越後妻有「大地の芸術祭」
旅の最後は“祈り”のアート
『手をたずさえる塔』へ

2022.6.30
新潟・越後妻有「大地の芸術祭」<br>旅の最後は“祈り”のアート<br>『手をたずさえる塔』へ

世界有数の豪雪地帯として知られる新潟県の越後妻有(えちごつまり)エリア。過疎高齢化の課題を抱えていたこの地は、2000年より開催されている世界最大級の国際芸術祭「大地の芸術祭」によって世界中から注目を集める場所となった。4月29日から開催されている第8回を取材し、アートを道しるべに里山をめぐることで風土・文化を体感する旅の魅力を探る――。

「大地の芸術祭」で注目を集める作品のひとつが、イリヤ&エミリア・カバコフさんの『手をたずさえる塔』だ。パンデミック下でも希望を忘れず、平和的に話し合い、世界と心でつながる。その祈りがアートとなって結実した。

大地の芸術祭とは・・・
「人間は自然に内包される」をコンセプトに、国内外の著名なアーティストと地域住民が協働し、210の常設・既存作品に加えて、新作・新展開作品が123点追加。約760㎢にわたる広大な6つのエリアで11月13日(日)まで開催される。

松代エリア

信濃川の支流・渋海川沿いを中心に形成され、周囲を山々に囲まれた丘陵地帯。里山の美景の中にイリヤ&エミリア・カバコフさんの『棚田』、草間彌生さん『花咲ける妻有』など世界的アーティストの作品が点在している。

イリヤ&エミリア・カバコフ『手をたずさえる船』
塔の台座内に展示。カバコフさんがデザインした船の上で、世界中の子どもの絵をモザイクのように組み合わせて帆をつくり、多様な文化や思想の尊重を学ぶことを目的としたプロジェクトの模型展示

アートがいま貢献できるものとは


イリヤ&エミリア・カバコフ『手をたずさえる塔』
民族・宗教・文化を超えたつながり、平和・尊敬・対話・共生を象徴する塔。夜になるとさまざまな色の光りが投影される。先のウクライナ侵攻がはじまった頃、同エリア出身の2人は心を痛め、ブルーとイエローに灯された photo: Nakamura Osamu

 
『手をたずさえる塔』は、世界中でパンデミックがはじまった2年前、カバコフさんが「大地の芸術祭」総合ディレクター・北川フラムさんに、アーティストが貢献しなければならないことを伝え、制作に至ったという。この提案は、困難な状況下でも夢を見ながら作品をつくり続けたカバコフさんの「カバコフの夢」プロジェクトへ発展し、2021年には、「まつだい『農舞台』」、「越後妻有里山現代美術館 MonET」で新作5点を公開。そして、その集大成として『手をたずさえる塔』が完成し、夢は結実した。カバコフさんはこの作品への想いを次のように話す。

「人々がお互いの違いや抱える問題、関心について平和的な話し合いを促すためのモニュメントをつくります。光を当てられることで色を変える仕掛けは、塔自体が世界や人々の心とつながっている印であり、作品は世界と呼応しています」

アートはただそこにあるのではない。地域に活力を与え、世界に希望を届ける力を秘めているのではないだろうか。

photo: Roman Mensing(artdoc.de)

イリヤ&エミリア・カバコフ
イリヤさんは、1933年、旧ソ連(現ウクライナ)生まれ。絵本作家として活動しながら非公式で芸術活動を続け、1988年からエミリアさんと共同で制作を行う。越後妻有では、『16本のロープ』、『人生のアーチ』などを制作

住所|新潟県十日町市松代3743-1 まつだい「農舞台」周辺
時間|GWは10:00~19:00、5~7月は~18:00、8月は~19:30、9月は~18:30、10月は~17:30
※点灯時間は日没~21:00
料金|まつだい「農舞台」フィールドミュージアム券1200円(農舞台個別鑑賞券は600円)または作品鑑賞パスポート掲示
公開期間|~11月13日(日)
休業日|火・水曜
※詳細は公式ウェブサイトを確認

text: Ryosuke Fujitani photo: Norihito Suzuki
Discover Japan 2022年6月号「アートでめぐる里山。/新潟・越後妻有”大地の芸術祭”をまるごと楽しむ!」

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