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全国の造林面積の40%を占める樹種「スギ」
《暮らしの中にある木の図鑑30》

2023.10.14
全国の造林面積の40%を占める樹種「スギ」<br><small>《暮らしの中にある木の図鑑30》</small>

高温多湿な気候に恵まれた森林大国・日本に存在する樹木の種類は900〜1000種に及ぶという。ここでは古来日本人の暮らしに溶け込んできた「木の文化」にまつわる30の樹木をセレクト。今回は、全国の造林面積の40%を占める樹種「スギ」を解説する。

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スギという和名の由来はさまざまで、①すくすくと成長する木、②「スグ(直)」な木、または「スナヲキ(直木)」が転じたもの、③上へ進み昇る木であることから「ススミキ」の意味など諸説ある。日本には1種のみ生育している。成長が早いこともあり日本で最も多く植林されている樹種で、全国の造林面積の40%を占めている。日本のスギは湾曲量が少なく、木目がまっすぐで割りやすく軽量で加工も容易。古くから船など多くの用途に用いられ、丸太舟の材として適していることは日本書紀に記されている。ほかにも土台や柱、桁、梁、天井板、屋根板などの建築材、土木用材、車両用材、下駄や箸、祭祀具など、ヒノキと並んで日本の歴史上、最も利用されてきた。年輪がくっきりと目立ち、板にするとしばしば竹の子杢や笹杢などの美しい木目を示す。

木材名|杉
学名|Cryptomeria japonica (L.fil.) D.Don
科名|ヒノキ[スギ]科(スギ属)常緑針葉樹
産地|北海道(南部)、本州、四国、九州(屋久島まで)

<木・葉>
常緑針葉樹で樹高40m、直径2〜5m。大きいものは高さ65m、直径6.5mに達し、屋久島には推定樹齢3000年を超えるものが生育している。樹冠は楕円状円錐形で、老木になると先端が丸みを帯びる。全国各地に植林され、秋田杉や北山杉、春日杉、霧島杉、薩摩杉、吉野杉、屋久杉などさまざまなものがある。代表的な秋田杉は、赤褐色ないし暗い赤褐色で縦に長く裂ける

<特徴・用途>
銘木として建築にたびたび用いられ、床の間を飾る床柱、天井板などに利用されてきた。秋田杉、北山杉、春日杉、霧島杉、薩摩杉、吉野杉、屋久杉など、多くの銘木が珍重されている。日本酒の香気を増し色調を加えることから酒樽によく使われ、酒蔵は新酒ができると杉玉を飾る習わしがある。清酒の樽の側板を束ねたものを樽丸といい、主な生産地は奈良県の吉野地方

<Column>
日本の樹木といえばこの木!?日本各地域のスギ

スギは日本各地に数多く群生しており、地面から垂直にまっすぐ成長するため、木材として加工した際に直線的な木目が現れ、見た目が美しいことから建具に多く利用。古くから日本の街づくりや生活を支えてきた。室町時代から植林されてきた歴史があり、多くは人工的に造成されたものである一方、自然環境の中で自生し、数百年といった歳月をかけて育ってきた天然杉も存在し、高値で取引されている。以下のように本州から九州地方まで幅広く分布しているが、東北地方の一部や鹿児島県屋久島は天然杉の産地として有名。

資料提供=金沢工業大学宮下智裕研究室

地域で色がこんなにも違う!
日本各地域のスギ板

1. 鯵ヶ沢杉(青森県)
2. 秋田杉(秋田県)
3. 立山杉(富山県)
4. 能登杉(石川県)
5. 足羽杉(福井県)
6. 三河杉(愛知県)
7. 長良杉(岐阜県)
8. 谷口杉(滋賀県)
9. 御山杉(三重県)
10. 吉野杉(奈良県)
11. 和歌山杉(和歌山県)
12. 杉の大スギ(高知県)
13. 木頭杉(徳島県)
14. 久万杉(愛媛県)

※写真左から順に

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カバーしてきた「ナラ」

 
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《暮らしの中にある木の図鑑30》
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03|エゾマツ
04|オニグルミ
05|カエデ
06|カツラ
07|カバ
08|カラマツ
09|キリ
10|クスノキ
11|クリ
12|ケヤキ
13|コウヤマキ
14|サクラ
15|トチノキ
16|スギ
17|ナラ
18|ブナ
19|ヒノキ
20|ヒバ
21|ホオノキ
22|モミ
23|イチイ〜ヤナギ

監修=国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 安部 久
text: Naruhiko Maeda photo: Hisashi Abe from Forest Research and Management Organization, Kenta Yoshizawa, Yoshiro and Yoshio Taniguchi Museum of Architecture, Kanazawa
参考文献=『日本有用樹木誌』伊東隆夫・佐野雄三・安部 久・内海泰弘・山口和穂著(海青社)
Discover Japan 2023年9月号「木と生きる」

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