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街と一体化する駅「高輪ゲートウェイ駅」
隈研吾が暮らす神宮の杜

2020.8.16
街と一体化する駅「高輪ゲートウェイ駅」<br>隈研吾が暮らす神宮の杜
「高輪ゲートウェイ」の名は、一般公募によって決められた。山手線沿線の駅名にカタカナ表記が入るのは、この駅だけである点も新しい

建築家の隈研吾さんが、自身が携わった建築について語る《隈研吾が暮らす神宮の杜》。今回は山手線49年ぶりとなる新駅「高輪ゲートウェイ駅」の開発コンセプトを伺いました。

隈 研吾(くま・けんご)
建築家。東京大学建築学科大学院修了後、1990年、隈研吾
建築都市設計事務所を設立。20カ国を超す国々で建築を設計し、日本建築学会賞、フィンランドより国際木の建築賞、イタリアより国際石の建築賞ほか国内外で受賞多数。土地の環境、文化に溶け込む建築を目指し、ヒューマンスケールのやさしく、柔らかなデザインを提案している。主な著書に『点・線・面』、『ひとの住処』など

JR東日本が運行する東京都心環状線・山手線の30番目の駅として今年3月14日、静かに始動した「高輪ゲートウェイ駅」。本来なら2020年に開催されるはずだった東京オリンピック・パラリンピックをめがけての開業となったはずなのだが、世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大を受けてオリンピック・パラリンピックの開幕は1年延期され、新駅のオープニングセレモニーもコロナ対応で見送られた。

やや寂しい開業となった高輪ゲートウェイ駅だが、停車する山手線や京浜東北線の車両からホームに降りると、広々とした大空間が待ち構えていて気分が高揚してくる。デザインアーキテクトとして携わった建築家の隈研吾氏は、「コンセプトは駅と街を一体にすることでした」と解説する。

品川駅から北上して高輪ゲートウェイ駅を越え、さらに北側に延びる周辺一帯では、2024年度に第一期の完成を目指す品川開発プロジェクトが進行中だ。その開発計画で、都営浅草線の泉岳寺駅と高輪ゲートウェイ駅に挟まれた街区には大きな「駅前広場」が整備される計画で、広場の周りをオフィスや商業施設、高級ホテルなどが囲むという。広場付近にはさらに、山手線などの線路を越えて東京湾方面に向かう連絡通路も設けられる予定だ。つまり、高輪ゲートウェイ駅は開発プロジェクトで東西南北のエリアをつなぐ結節点となるわけだ。

隈氏は「駅自体が街の中心となり、いままで人が入れなかった東西南北に広がるそれぞれのエリアをつなぐ起点になればいいと考えました」と狙いを語る。「駅に商業施設があることは多いけど、街と駅がひとつになっているというケースはこれまで日本にも世界にもなかったと思います。それがこれからの駅づくりの在り方だと考えたわけです」。

高輪ゲートウェイ駅の天井には白い「天幕」のような膜構造の大屋根が架かり、それを支える鉄骨と杉の集成材の梁によって屋根の形状は「折り紙」を広げたようでもあり、木製の格子と白い膜から差し込む太陽光の柔らかさは、障子を通して入り込む光のようだ。天幕の両側、つまり駅舎の東西方向はガラスの壁面となって口を開けている。この、とにかく「ヌケ」がいい開口部が駅舎にあるおかげで、山手線の内側と外側にあるビルや広場がつながっているように感じるのだ。

そして、この土地にもともとあったJRの車両基地の一部が残っており、それらが駅構内の空間と融合して、不思議な「未来感」をもたらしている。一方で駅構内の壁面は、一枚おきに木の板を重ね合わせて張ることで凹凸をつける「り」という伝統技法を駆使した。そこに差し込む、障子を思い起こさせる光。まれに見る大空間なのだが、日本人に心地よさを感じさせる「和」の温かさを醸し出している。

「ここへ最初に来たときには、東京駅にも品川駅にも羽田空港にも近いこの場所に、よくこれだけの広大な敷地が残っていたもんだなと感動しました。海と陸をつなぐことができる場所であり、東京をよみがえらせる最後のチャンスかもしれない、とも思います」。

高輪ゲートウェイ駅
住所|東京都港区港南2-1

フォトグラファー、アーティスト
ベンジャミン・リー

カナダ・トロントで育つ。英オックスフォード大学で心理学を学んだ後、1977年、ロンドンにスタジオを設立。企業の広告写真を手掛ける一方で、彫刻家ヘンリー・ムーア等の著名人の肖像を撮影し、アート作品として評価を高めた。’80、’84年に英国のデザイン賞「D&AD賞」を受賞。その後東京に拠点を移し、各界の著名人を撮り続けている。主な写真集に『Odyssey』、『創造の現場。』など

text: Shumon Mikawa photo: BENJAMIN LEE planning & organizer: Noriko Sakayori(L.STUDIO)
2020年9月号 特集「この夏、毎日お取り寄せ。」


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