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「ヴィラ・デラ・パーチェ」
能登半島の風景と一体化する七尾のイタリアンオーベルジュ【前編】

2021.5.10
「ヴィラ・デラ・パーチェ」<br>能登半島の風景と一体化する七尾のイタリアンオーベルジュ【前編】

都市を離れ、生産現場に近いローカルへと向かう料理人に出会った。土地の風土や文化を感じられるひと皿にこそ、地域の在り方が上手に表現されているのです。今回は、能登半島および、オーベルジュ「パーチェ」の魅力を全6記事にてご紹介。まずは、パーチェ自慢のイタリアンを前後編記事でお楽しみください。

平田 明珠(ひらた・めいじゅ)
1986年、東京都生まれ。料理人。大学卒業後、営業職に就くも肌に合わず退職。飲食店アルバイトの経験を生かし都内イタリア料理店で修業をはじめる。2016年七尾市に拠点を移し独立。昨年オーベルジュとして移転リニューアル

能登の風景、その一部となる料理をつくりたい

曇り空も北陸らしい風景。穏やかな内海、七尾湾沿いに位置するパーチェは廃墟となった海の家をリノベーション。外観はそのままに、この地での営みを受け継ぐ

「僕は、自分の料理については本当にどうでもいいと思っています」

取材のお願いをすると、そんなひと言が返ってきた。それが、今回紹介する石川県七尾市のオーベルジュ「ヴィラ・デラ・パーチェ」のオーナーシェフ・平田明珠さん。レストランを多く取材する立場としてはなかなか驚かされるシェフの発言ではあったが、同時に一体どんなレストランなのだろうという期待も高まった。

パーチェへのアクセスは能登空港から車で約40分、または北陸新幹線金沢駅から車で約1時間半。日本海の穏やかな内海、七尾湾沿いに位置し、周辺地域である「能登の里山里海」は日本ではじめて世界農業遺産に登録された。土地の環境を生かした豊かな暮らしぶりがいまも息づいている農村の景観は、世界のお墨付きなのだ。

平田さんは都内のイタリア料理店でシェフとして働いていた頃から、食材を求めて七尾へ訪れることがあった。いつか自分の店をもつのであれば地方で挑戦したい。頭の片隅にあった考えは、人の縁やタイミングが重なった2016年、独立して七尾市にレストランをオープンさせた。

「当時はミシュランの星を取りたい、人に認められたいなど自己顕示欲の塊みたいな人間でした」

オープンしてから店はすぐに立ち行かなくなり、ゲストに提供する食材も購入できなくなった。

「自分の持ち味とか、どこへ向かえばいいのかがわからなくなっていました。山菜や野草など食材調達のために山へ入るしかなくて(笑)。でも、このときはじめて能登の自然と向き合えたのだと思います。自分の未熟さや、ちっぽけさを気づかされました」

自分自身の役割を見出した。何を表現して誰を幸せにしたいのか。

「自分の個性や存在を消すことで、ようやく納得できる料理がつくれていると感じます。ゲストが能登半島を訪れたときに目にする山や海、人の営みの一部となるような、そんな料理をつくることが僕の役割だと思っています」

あくまで自分の料理は主役ではなく、自然の一部にしか過ぎないということ。昨年、七尾湾を眺める場所へと移転してからその気持ちはより強くなった。

「僕は、能登の自然、周りの生産者や作家さんたちに生かされていて、逆にそれがないとなんの料理もつくれないんです」

平田シェフが目指すオーベルジュとは? まずは能登の食材やつくり手が見える、コース料理から紹介する。

能登半島のヒトとモノをつなぐイタリアン

イタリアの郷土料理をベースに、能登半島の食材を生かしたフルコース。能登半島に打ち寄せる波のようなリズムとともに味わいたい。

1,蕎麦がき

のと115で取った旨みたっぷりの出汁に蕎麦がきを入れて。「お酒を飲む前に少しの炭水化物を」。心遣いがうれしい。

Data
うつわ|
松本かおる
食材|のと115(シイタケ)、タネツケバナなど

2,アミューズ

アンチョビを挟んだメレンゲ、ハゼの一種イサザのフリット、バッカラ・マンテカートなど食感のパレード!

Data
うつわ|
輪島キリモト
食材|鰯(日の出大敷)、イサザなど
ペアリング|シャンパーニュ(ルクレール・ブリアン)

3,真烏賊 背脂 おぼろ昆布

豚の背脂を塩漬けしたラルド、イカのスライス、おぼろ昆布を合わせて巻く。舌にからまる不思議な味わい。

Data
うつわ|
kota glass
食材|真イカ(日の出大敷)、ノビルなど
ペアリング|ケルナー(コフェレルホーフ)

4,牡蠣 山菜

ボイルした牡蠣と山菜を七面鳥の出汁とともに。脂が素材の旨みを閉じ込め、かんだ瞬間口の中が能登一色に!

Data
うつわ|
赤木明登
食材|牡蠣(宮本水産)、コゴミなど
ペアリング|初心 淡熟一年(福光屋)

5,タリオリーニ 蕨 ゼンマイ

タネツケバナを練り込んだパスタ。具は山菜とトリガイ。能登の魚醤、いしりとオリーブオイルが絶妙にからみ合う。

Data
うつわ|
中島石材店
食材|タネツケバナ、中島産トリガイなど
ペアリング|ビアンコ・クアルト 2018(メイガンマ)

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villa della pace
住所|石川県七尾市中島町塩津乙は部26-1
Tel|0767-88-9017
営業時間|ランチ12:00〜、ディナー18:00〜(L.O.19:00)
定休日|水・木曜
料金|コースのみ1万3200円(サ別)
宿泊料金|1泊2食付3万5000円(サ込)
IN|16:00〜18:00 OUT|10:00
テーブル数|2
アクセス|車/のと里山海道徳田大津ICから約7分、電車/のと鉄道笠師保駅から徒歩15分
http://villadellapace-nanao.com

text: Discover Japan photo: Yayoi Arimoto
Discover Japan 2021年5月号「美味しいニッポントラベル」


《villa della pace/石川県・七尾市》
1|能登半島の風景と一体化する料理【前編】
2|能登半島の風景と一体化する料理【後編】
3|パーチェの料理は能登半島のつくり手と生み出される【前編】
4|パーチェの料理は能登半島のつくり手と生み出される【後編】
5|1泊2日、能登の営みを感じる滞在を
6|能登の里山里海を贅沢に独り占め、七尾湾を眺めながら何もしない時を過ごす。

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