「ビールスタンド 重富」広島で飲む究極の生ビール
取り扱うビールは1銘柄、注文は一人2杯まで、営業は2時間限定にもかかわらず、行列が絶えない広島市の「ビールスタンド重富」。徹底した品質管理とこだわりのビールサーバーで注ぎ分ける6つの味わいに、今日も人々が集う。
「ステーキの焼き具合、豆腐の木綿と絹ごしのように、ビールも泡の立て方で多様な味わい、口当たりがつくれるんです」とオーナーの重富寛さん。
ビールサーバーは氷式冷蔵庫を使い独自に再現。昭和初期の型をモデルに特注した注ぎ口、ドラフトコック(スイングカラン)が絶妙な注ぎ加減を可能にする。
メニューは「一度つぎ」、「二度つぎ」、「三度つぎ」、「シャープつぎ」、「マイルドつぎ」(各550円)に、裏メニューの「マイルド&IPA(タイプ)」(上写真/1100円)を加えた6つ。いずれも銘柄はアサヒ生ビールのみだが、注ぎ方で苦み、旨み、炭酸の比率が変わり、まったく違う味わいに。
中でも2杯セットの「マイルド&IPA」は知る人ぞ知る人気メニュー。とろりとした泡と甘みを感じる「マイルド」に対し、「IPA」は苦みの強い泡とスカッとするのど越しが特徴だ。
ビールが苦手な人にも「美味しい」と言わせる注ぎ分け。その美味しさは「行き届いた手入れ」があってこそだ。風味の維持やきめ細やかな泡のため、開店前後はグラスやビールサーバーの洗浄・管理に2時間ほどを費やす。
「ここをきっかけに、職人が注ぐビールを愛する人が増えたら」。手をかけたビールの美味しさがじわりと広がる。
文=坂西野風子 写真=清家 洋
2019年7月号 特集「うまいビールはどこにある?」