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実は先史時代から
貴重な食料として活用される「オニグルミ」
《暮らしの中にある木の図鑑30》

2023.10.14
実は先史時代から<br>貴重な食料として活用される「オニグルミ」<br><small>《暮らしの中にある木の図鑑30》</small>

高温多湿な気候に恵まれた森林大国・日本に存在する樹木の種類は900〜1000種に及ぶという。ここでは古来日本人の暮らしに溶け込んできた「木の文化」にまつわる30の樹木をセレクト。今回は、実は先史時代から貴重な食料として活用される「オニグルミ」を解説する。

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高さ30m、直径1mに達し、川沿いの湿地に多く見られる。「オニ=鬼」は、核と呼ばれる実の硬い殻がゴツゴツと粗いことに由来する。「クルミ」という呼び名の語源は、硬さに由来する「凝る実」、黒い色に由来する「黒実」など諸説ある。全国各地の遺跡から出土しており、先史時代から食用にされてきた。同じく食用にされてきたクリやトチノキの実と比べて脂肪を多く含み、果皮を除いて洗って乾燥保存すると2年近く貯蔵できる。そのため、物流が発達する以前の山村では貴重な食料だった。ちなみに、現在国内で流通している食用クルミはほとんどが輸入物。国内で最も食用クルミを生産しているのは長野県である。

木材名|鬼胡桃
学名|Juglans mandshurica Maxim var. sachalinensis
科名|クルミ科(クルミ属)落葉広葉樹
産地|北海道〜九州

<木・葉>
材面は粗いが均質で、褐色の材は磨けば飴色の光沢を発する。広葉樹材の中ではやや軽く軟らかい部類で、均質で木理はまっすぐに近く寸法安定性が高い

<特徴・用途>
食用以外に家具や器具、建築の内装、工芸品に使われ、特に明治時代末期から昭和初期にかけて銃床に重用。樹皮の煎汁は染料や防虫剤に用いられてきた。かつて東北地方や北海道で、根や樹皮の成分で魚を一時的に麻痺させて捕まえる「根うち」という漁が行われていたという。核の微粉末は研磨剤として活用。世界的なブラックウォルナットの需要から、オニグルミ材も注目されている

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街路樹、公園樹や盆栽として
広く使用される「カエデ」

 
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《暮らしの中にある木の図鑑30》
01|アカマツ
02|イチョウ
03|エゾマツ
04|オニグルミ
05|カエデ
06|カツラ
07|カバ
08|カラマツ
09|キリ
10|クスノキ
11|クリ
12|ケヤキ
13|コウヤマキ
14|サクラ
15|トチノキ
16|スギ
17|ナラ
18|ブナ
19|ヒノキ
20|ヒバ
21|ホオノキ
22|モミ
23|イチイ〜ヤナギ

監修=国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 安部 久
text: Naruhiko Maeda photo: Hisashi Abe from Forest Research and Management Organization
参考文献=『日本有用樹木誌』伊東隆夫・佐野雄三・安部 久・内海泰弘・山口和穂著(海青社)
Discover Japan 2023年9月号「木と生きる」

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