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走るのは得意だけど飛べない鳥
「ヤンバルクイナ」
《生物多様性を代表する三大スター》

2021.8.24
走るのは得意だけど飛べない鳥<br>「ヤンバルクイナ」<br><small>《生物多様性を代表する三大スター》</small>

世界が驚く島固有のいきものと言えば、まずはこのスターたち。彼らのどこがそんなにユニークなのか、今泉先生に教えてもらいました!今回は、独特な生態を3つの記事でご紹介します。

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走るのは得意だけど飛べない鳥
ヤンバルクイナ

ヤンバルクイナが沖縄島に渡ったのは6000年前ぐらい。割とと新参者です。北部の森には普通にいましたから、1981年に新種と発表されると皆大騒ぎ。まさか近所の鳥が新種だとは思わないもの。

クイナは島に来てから飛ぶことをやめました。太平洋の島々にはクイナの類が結構いて、天敵のいない島に降りたものはだいたい飛ばない選択をしています。鳥も空を飛ぶのは大変だから、できれば地上で暮らしたいの。天敵がいない沖縄島北部では、地上の暮らしを選んだのね。すると卵の中で突然変異が起こって、翼を発達させる遺伝子がほぼなくなり、孵化したときにはすでに翼が機能しなくなったのです。

巣は地上で枯れた枝葉をちょっと集めるくらい。卵は1回で3、4個産み、抱卵します。ヒナはかえって数十分で歩き出し、親がミミズを持ってくるとすぐに食べます。巣立ちも早い。早成性です。一方、スズメなど口を開けてピーピーと親鳥に餌をねだるのは晩成性。子育て期間が長いので、晩成性のほうが進化していると言えるかな。彼らは高いところに巣をつくるけど、原始的なクイナは地上派。ただし、沖縄島北部にはハブがいるから、寝るときは木の上です。

ヤンバルクイナ
Data

分類/ツル目クイナ科
体長/全長35㎝程度
体重/400g程度
生息数/1500〜1600羽(2021年)
ライフスタイル
食べているもの/ミミズ、ヤンバルマイマイなどの昆虫、甲殻類、木や草の実
住んでいる場所/常緑広葉樹の原生林。木の上で寝る

特徴
◎顔は黒色
◎クチバシ、足、瞳の周りは赤色
◎目の後ろに白線
◎暗いオリーブ色(背中)
◎白黒の横縞模様(おなか)
◎短くて丸い翼

Q.絶滅しそうな理由って?
A.マングースやノネコによる捕食、カラスの被害、交通事故

飛ぶことのできないヤンバルクイナは、ハブを駆除する目的で沖縄島に移入されたマングースや、ハンティング能力に優れるノネコにやすやすと捕えられてしまう。近年、沖縄島北部の森で増えているハシブトガラスが卵やヒナを襲うことも。また、森林伐採により生息に適した環境は減少し、生息地の分断も進み、交通事故も後を絶たない。観光客が撮影のために不用意に近づくことによる悪影響もある。

「保護の取り組み」
→生息状況の調査とモニタリング。マングース防除やノネコ管理も

分布状況や生息密度の調査、地域住民へのヒアリングなどを通し、実態を把握。ねぐらとして利用する樹木や餌となる動物の保護、交通事故が多い場所での道路構造の改善など、ヤンバルクイナを取り巻く生態系全体を良好な状態に保つためにさまざまな対策を行っている。マングース捕獲が進む近年はヤンバルクイナの数が増えているが、個体数の急激な減少に備えて、人工繁殖&野生復帰の技術を確立するよう努めている。

もっとヤンバルクイナを知るためのスポット

ヤンバルクイナ生態展示学習施設 クイナの森

「安田くいなふれあい公園」にあり、ヤンバルクイナの生態や環境を学べる施設。実際に生息する環境を再現したブースがあり、自然界ではなかなか姿を見せないヤンバルクイナを目の前で観察することができる。

ヤンバルクイナ生態展示学習施設 クイナの森
住所|
沖縄県国頭部国頭村字安田1477-35
Tel|0980-41-7788(安田くいなふれあい公園)
開館時間|9:00〜17:00 休館日|水曜
http://kuinapark.com/kuina

 

西表島だけに生息する野生のネコ「イリオモテヤマネコ」

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supervisor:Tadaaki Imaizumi text: Yukie Masumoto illustration: Tatsuji Fujihara(teppodejine)
Discover Japan 2021年8月号「世界遺産をめぐる冒険」


《生物多様性を代表する三大スター》
1|世界で奄美大島と徳之島にしかいない「アマミノクロウサギ」
2|走るのは得意だけど飛べない鳥「ヤンバルクイナ」
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