約20年ぶりの高専が徳島県神山町に誕生!
未来の起業家を育成する
「神山まるごと高専」【Part 1】
先進的な地域創生で知られる徳島・神山町に、新しい高専が開校する。モノづくりと同時に起業家精神、生きていく力を育む学びの場は、未来を変えるポテンシャルにあふれている。
高等専門学校とは?
実践的・創造的技術者を養成することを目的とした高等教育機関。国内で高専が新設されるのは、約20年ぶりとなる。
のどかな山間の町を
未来のシリコンバレーに
徳島市内から車で40分ばかり。深い山に抱かれ、田畑や家々が点在する神山町。人口約5000人、過疎地域に指定されているこの町が、「地方創生の聖地」という異名をもつことをご存じだろうか。約25年前から芸術家を招聘・支援するアーティスト・イン・レジデンスをスタートし、全国に先駆けて町全体に光ファイバーを整備。現在10を超える企業がサテライトオフィスを構え、着実に移住者を増やしているという、お手本のような事例が詰まった地域なのだ。
そんな神山町にこの春、新しい学校が幕を開ける。私立の高等専門学校「神山まるごと高専」。国内で高専が新設されるのは、実に約20年ぶりのことだ。ここで育成する学生像は、「モノをつくる力で、コトを起こす人」。まずは高専のお家芸ともいえるモノづくりを重要視する。それに加えて目指すのが、社会・他者とかかわる力の養成。机上で学ぶだけでなく、自分で手を動かして何かを生み出すところからはじめ、その先でコトを起こせる=起業家精神を身につけることを目標としている。
かつてない複合的なコンセプトを掲げる高専の舞台が、なぜ神山町なのか。早くからITの可能性に着目していたこと、さらに人材育成の場として評価の高い「神山塾」なども背景になっているが、それだけではない。過疎地域という環境は、教育面で大きなメリットをもたらす。ノイズのない中で勉学に集中でき、足りないものを補う工夫が生まれるなど、創造性を問われる場面も多い。名刺アプリで知られる「Sansan」代表取締役社長の寺田親弘氏、「ZOZO NEXT」の大蔵峰樹氏ら、立ち上げに携わった4名のメンバーは全員が起業家。この地が未来のシリコンバレーとなることを確信している。
高校と大学を5年間に凝縮したような濃密な教育が受けられる機関だが、中学卒業者のうち、高専に進むのはわずか1%だという。そんな少数派の道を自分の意志で選択した学生は、常識にとらわれない無限の可能性を秘めている。学生たちはホームと呼ばれる寮に暮らし、オフィスと呼ばれる校舎に通学する。5年間を過ごすこの地は、間違いなく彼らの第二の故郷になる。のどかなキャンパスで、どんな日々が待っているのだろう。
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text: Aya Honjo photo: Ryusuke Honda
Discover Japan 2023年3月号「移住のチカラ!/移住マニュアル2023」