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西表島だけに生息する野生のネコ
「イリオモテヤマネコ」
《生物多様性を代表する三大スター》

2021.8.24
西表島だけに生息する野生のネコ<br>「イリオモテヤマネコ」<br><small>《生物多様性を代表する三大スター》</small>

世界が驚く島固有のいきものと言えば、まずはこのスターたち。彼らのどこがそんなにユニークなのか、今泉先生に教えてもらいました!今回は、独特な生態を3つの記事でご紹介します。

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西表島最強哺乳類は、世界一狭いエリアに暮らす野生ネコ
イリオモテヤマネコ

西表島が大陸とくっついたり離れたりしていた時代に、大陸から渡ってきたのがイリオモテヤマネコ。すでに絶滅してしまったオオヤマネコの祖先と骨や歯がよく似ているので、まさに生きた化石といえます。東南アジアに暮らすベンガルヤマネコなどと比べても原始的。進化したヤマネコはヒヨドリより大きい鳥は羽をむしって食べますが、イリオモテヤマネコは丸ごと食べますから。尻尾は先まで太く、耳は先が丸くて後ろに白い斑点(虎耳状斑)があります。これは東南アジアのヤマネコ共通。おそらく耳で表情を示しているのと、夜の森で子どもが後ろからついてくるときの目印ですね。それから、お尻から強烈な匂いを発します。だいぶ薄めれば香水になりそうな匂いですが、まぁ独特です。

食べ物はネズミ、クイナの類、小鳥、トカゲ、ヘビ、カニ、魚、コウモリ、イノシシの子など……。旬に応じて、いろいろ食べている。ほかのヤマネコに比べてバラエティに富んでいるのは、食べる対象の個体数が少ない島の環境に適応しているのでしょう。研究目的で雄・雌を1頭ずつ飼育したことがありますが、メスは新しい環境にすっと慣れてくれるのに対して、雄は、駄目ですね(笑)。

イリオモテヤマネコ
Data

分類
/食肉目ネコ科
体長/頭胴長50〜60㎝、尾長20〜25㎝
体重/3〜4㎏程度
生息数/100〜109頭(2008年)
ライフスタイル
食べているもの/両生類、爬虫類、鳥類、昆虫類、小型ほ乳類など
住んでいる場所/湿地や沢の多い森林、マングローブ林、山麓から海岸にかけての低地など島内全域

特徴
◎丸い耳
◎額に黒と白の縦縞
◎目の周りの白いくまどり
◎耳の後ろに白い斑点(虎耳状斑)
◎体の模様ははっきりしない斑点
◎大きな鼻
◎胴長短足
◎太いしっぽ

Q.絶滅しそうな理由って?
A.交通事故(ロードキル)

新種として登録された1967年当初の生息数はおよそ50〜70頭。その後、保護活動により100頭ぐらいまで増えた。現在、不当な死を迎える一番の原因は交通事故。島の周囲を走る道路が舗装され、夜間、スピードを出す車にひかれてしまう個体が毎年のように報告されている。また、不適切な飼養をされた飼いネコやノネコとの接触により、猫免疫不全ウイルス感染症などの伝染性疾患も引き続き注意が必要だ。

「保護の取り組み」
→ロードキル0を目指して交通安全対策を強化、マイクロチップによる個体登録など飼いネコの管理

沖縄県や環境省、専門家などからなる「エコロード検討会」により、道路の下に動物用のトンネルを設け、要注意地点にゼブラゾーン(振音舗装)や道路標識を設置するなど、交通安全対策に尽力。地域住民や観光客に目撃情報を呼び掛け、移動式看板を臨機応変に設置し、ドライバーへ注意を促している。また、飼いネコ管理のために、マイクロチップによる個体登録、島に持ち込む個体の検疫を義務づけている。

もっとイリオモテヤマネコを知るためのスポット

西表野生生物保護センター

イリオモテヤマネコの保護活動の拠点。ヤマネコの生態を広く知ってもらうための展示イベントやレクチャー、交通事故などでけがをしたヤマネコを保護・療養して野生復帰させる活動も行なっている。

西表野生生物保護センター
住所|
沖縄県八重山郡竹富町古見
Tel|0980-85-5581
開館時間|10:00〜16:00 休館日|月曜(祝日の場合は翌火曜も休館)、祝日、慰霊の日
https://iwcc.jp/

 

世界自然遺産!日本最西端の秘境、西表島

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supervisor:Tadaaki Imaizumi text: Yukie Masumoto illustration: Tatsuji Fujihara(teppodejine)
Discover Japan 2021年8月号「世界遺産をめぐる冒険」


《生物多様性を代表する三大スター》
1|世界で奄美大島と徳之島にしかいない「アマミノクロウサギ」
2|走るのは得意だけど飛べない鳥「ヤンバルクイナ」
3|西表島だけに生息する野生のネコ「イリオモテヤマネコ」

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