大きな扇形の葉が
黄色く色づいた姿が圧巻な「イチョウ」
《暮らしの中にある木の図鑑30》
高温多湿な気候に恵まれた森林大国・日本に存在する樹木の種類は900〜1000種に及ぶという。ここでは古来日本人の暮らしに溶け込んできた「木の文化」にまつわる30の樹木をセレクト。今回は、大きな扇形の葉が黄色く色づいた姿が圧巻な「イチョウ」を解説する。
大きな扇形の葉が特徴的な、樹高30mほどにもなる落葉高木。晩秋に黄色く色づいた姿は圧巻。雌雄異株で雄木と雌木があり、花のかたちは雄株と雌株で異なる。日本に自生はなく、すべて中国に由来すると考えられている。ジュラ紀からほぼそのままの姿で生き残ってきた「生きた化石」といわれ、世界中から化石が発掘されている。かつて恐竜時代に大繁栄し、恐竜絶滅後に衰退、中国の一部のみ残ったと推測されるが、どのように生き残ってきたかは謎。雌の木は果肉が独特の匂いを放つため、街路樹には雄の木が向く。だが着花、結実まで20年かかるため、なかなか雌雄を識別することはできない。
木材名|銀杏、公孫樹
学名|Ginkgo biloba L.
科名|イチョウ科(イチョウ属)落葉裸子植物(針葉樹の仲間)
産地|全国、中国原産
<木・葉>
大木は北海道から四国、九州まで各地に見られ、樹高30mを超えるまで成長することも。推定樹齢1000年以上の木も多い。葉は広い扇形で裏に気孔がある
<特徴・用途>
材としては緻密で加工しやすく、江戸時代から彫刻などに使われたほか、漆塗りの芯(木地)、額や木魚、碁盤や将棋盤に使われた。イチョウの実から果肉を取り除いた硬い殻の部分が銀杏。殻の中の緑色の部分は美味で、室町時代にはすでに食されていたと考えられる。結実まで20年以上かかるため銀杏の大量生産は難しかったが、2〜4年で実をつける改良品種ができた結果、各地で栽培が盛んに
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監修=国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 安部 久
text: Naruhiko Maeda photo: Hisashi Abe from Forest Research and Management Organization
参考文献=『日本有用樹木誌』伊東隆夫・佐野雄三・安部 久・内海泰弘・山口和穂著(海青社)
Discover Japan 2023年9月号「木と生きる」