街路樹、公園樹や盆栽として
広く使用される「カエデ」
《暮らしの中にある木の図鑑30》
高温多湿な気候に恵まれた森林大国・日本に存在する樹木の種類は900〜1000種に及ぶという。ここでは古来日本人の暮らしに溶け込んできた「木の文化」にまつわる30の樹木をセレクト。今回は、街路樹、公園樹や盆栽として広く使われる「カエデ」を解説する。
主に温帯地域に分布する広葉樹で、一部は亜寒帯からアジアの熱帯、亜熱帯地域にも分布する。樹高はさまざまで、大きくなるイタヤカエデの一部は樹高20m、直径1mに達する。落葉性の種が多いが熱帯、亜熱帯地域には常緑のものもある。日本に見られるカエデ属の樹木は葉が対になっており、秋に紅葉する。カエデとは「蛙手」の意味で、葉のかたちがカエルの手に似ていることからきているが、同じカエデ属でも葉のかたちは実はさまざまである。江戸時代から観賞用として多くの園芸品種が生まれており、今回は、街路樹、公園樹や盆栽として広く利用される。材は緻密で白に近い淡色でつやがあり、木目が現れることもある。
木材名|楓
学名|Acer spp.
科名|ムクロジ[カエデ]科(カエデ属)落葉広葉樹
産地|全国
<木・葉>
葉は秋になると赤や黄色に色づく。山の木の葉が紅葉することを「もみづ(紅葉づ・黄葉づ)」というが、カエデが秋の紅葉を主に担っていることから「モミジ」と呼ばれている
<特徴・用途>
日本ではイタヤカエデ類の材がよく使われ、フローリングなどの床材などに用いられる。硬度があることからボウリング場のレーンやピンにも使用されていることも。銃床や家具、碁盤、床柱にも適している。振動特性も優れ、ピアノの木骨やバイオリンの裏板や横板、ギターなどにも使われる。アメリカのハードメープルはメジャーリーグではバットに使われており、長距離打者に支持される
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生命力の強い高木「カツラ」
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監修=国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 安部 久
text: Naruhiko Maeda photo: Hisashi Abe from Forest Research and Management Organization
参考文献=『日本有用樹木誌』伊東隆夫・佐野雄三・安部 久・内海泰弘・山口和穂著(海青社)
Discover Japan 2023年9月号「木と生きる」