TRADITION

熊本県・阿蘇市《阿蘇神社御田祭》
神輿と白装束の行列が青田の小道を行く
|一生に一度は行きたいニッポンの祭り⑨

2024.7.23
熊本県・阿蘇市《阿蘇神社御田祭》<br><small>神輿と白装束の行列が青田の小道を行く<br>|一生に一度は行きたいニッポンの祭り⑨</small>

間もなく夏本番! 全国各地から祭り囃子や威勢のいい掛け声が聞こえてくる季節です。そんなニッポンの夏の風物詩「祭り」。なかでも一生に一度はこの目で見たい祭りを、日本の祭りや伝統芸能などに詳しい文筆家の大石始さんの解説でご紹介。地域の風習が刻まれた祭りを通して郷土文化に触れる旅をしませんか?

今回は、稲苗の生育を見て回り、豊作を祈願する熊本県・阿蘇市「阿蘇神社御田祭(あそじんじゃおんだまつり)」をひも解きます。

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※2024年7月28日(日)に開催予定。詳しくは記事下部をご覧ください。

稲苗の生育を見て回る豊作を祈る祭り

神輿を担ぐ「駕輿丁」が「おんだ歌」を歌い、青田の周辺を行く「阿蘇神社御田祭」の光景。ほかにも3体の「田植え人形」、16人の「獅子」、花笠を被る「田楽」らが列をなす

阿蘇神社(熊本県阿蘇市)最大の年中行事。稲作に関する祭りや行事は全国で行われているが、ここでは神輿に乗った神々が行列をつくり、水田に植えられた稲の生育具合を見て回る。行列は4基の神輿のほか、宇奈利という白装束の女性たちや早乙女、獅子、田植え人形などから構成される。また、行列が2カ所の御旅所に立ち寄る際、神輿の屋根に向かって稲を投げる田植式が行われる。その際、たくさん稲がのれば豊作になるとされている。豊作への願いが込められた祭りなのだ。

大石 始の見どころ!
白装束を身につけた宇奈利たちの行列

阿蘇神社御田祭を象徴するシーンといえば、青々とした水田の横を白装束の宇奈利たちが歩く場面だ。宇奈利は14人で構成され、阿蘇十二神と火の神と水の神を合わせた14の神々の食事を運ぶ役割を担っている。実に神秘的な光景である。

駕輿丁たちが歌うエネルギーに満ちた田歌

祭りのもうひとつのポイントは、神輿を担ぐ駕輿丁たちが歌う古風な田歌。木遣り歌にも近い素朴なエネルギーにあふれていて、歌がもつ力についてあらためて考えさせられる。なお、毎年2月には田歌の歌いはじめである踏歌節会でも歌われる。

開催期間|2024年7月28日(日)
開催場所|熊本県阿蘇市一の宮町宮地3083-1 阿蘇神社
交通|電車/JR宮地駅から徒歩約15分 バス/九州産交バス阿蘇神社前下車 車/九州自動車道熊本ICから約1時間

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新潟県・長岡市
《長岡まつり大花火大会》

 
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監修・文=文筆家 大石 始さん
地域と風土をテーマにする文筆家。日本の祭りや伝統芸能などを中心に執筆している。旅と祭りの編集プロダクション「B.O.N」主宰。著書に『異界にふれる ニッポンの祭り紀行』(産業編集センター)など多数

《一生に一度は行きたいニッポンの祭り》
01|石川県・能登町「あばれ祭」
02|岐阜県・郡上市「郡上おどり」
03|和歌山県・那智勝浦町「那智の扇祭り」
04|神奈川県・茅ヶ崎市「浜降祭」
05|愛媛県・宇和島市「うわじま牛鬼まつり」
06|大阪府・大阪市「天神祭」
07|東京都・墨田区「隅田川花火大会」
08|愛知県・津島市「尾張津島天王祭」
09|熊本県・阿蘇市「阿蘇神社御田祭」
10|新潟県・長岡市「長岡まつり大花火大会」
11|岩手県・北上市「北上・みちのく芸能まつり」
12|群馬県・桐生市「桐生八木節まつり」
13|青森県・青森市「青森ねぶた祭」
14|島根県・松江市「松江水郷祭湖上花火大会」
15|秋田県・秋田市「秋田竿燈まつり」
16|青森県・五所川原市「五所川原立佞武多」
17|山口県・山口市「山口七夕ちょうちんまつり」
18|北海道・江差町「姥神大神宮渡御祭」
19|徳島県・徳島市「徳島市阿波おどり」
20|長崎県・長崎市「精霊流し」
21|秋田県・羽後町「西馬音内盆踊り」
22|沖縄県・沖縄市「沖縄全島エイサーまつり」
23|富山県・富山市「おわら風の盆」

Discover Japan 2024年8月号「知的冒険のススメ」

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