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「茶泊」と「茶話」嬉野ティーツーリズムという新しい旅のかたち

2020.4.10
「茶泊」と「茶話」嬉野ティーツーリズムという新しい旅のかたち

日本茶の名産地として知られ、日本三大美肌の湯に数えられる嬉野温泉を有する佐賀・嬉野。日本茶をテーマに茶処をめぐる、新しい旅のスタイル「ティーツーリズム」の最先端地域でもある嬉野に、新たにユニークなコンテンツが加わった。その名も「茶泊」と「茶話」。いったいどんな内容なのか? 嬉野の最新ティーツーリズム事情をお届けする。

茶・温泉・肥前吉田焼
三位一体のツーリズム

「ティーツーリズム」を完全サポート
茶泊 ゲスト1組に対し、1名のティーバトラーが付き、嬉野滞在中のお茶の世話をすべて行う体験プログラム。ウェルカムドリンクから、茶畑へのアテンド、茶空間によるティーセレモニー、料理とのティーペアリングまで、お茶を楽しむことに特化した1泊2日のプラン ※利用時は宿に要事前問い合わせ

日本茶が好きで、佐賀・嬉野を訪れたことがないという方は、ぜひ一度訪れてみてほしい。うれしの茶が旨いのはもちろん、嬉野には茶を最大限に楽しめる観光コンテンツが充実しているからだ。

嬉野は500年以上の歴史を有する茶の名産地だ。また、日本三大美肌の湯に数えられる「嬉野温泉」、そして、茶器などがポピュラーな「肥前吉田焼」も旅の目的になる。この3つを融合させ生まれた新しい観光スタイルが「ティーツーリズム」である。ゲストをもてなすのは、なんと茶師(茶農家)自身だ。

1回6名限定のプレミアムなティーサロン
茶話 旅館の専用サロンを舞台に開催。茶師(茶農家)自らがゲストの目の前でお茶を淹れ、供してくれる。茶の解説や、茶師が考えるうれしの茶の魅力などを聞きながら、3杯のお茶、2種の菓子が味わえる。バーでの会話や酒のようにうれしの茶を楽しもう

旅の拠点となるのは、温泉街に点在する名湯宿。予約をしておくことで、滞在中のさまざまなシーンで、茶師がホスト役となり、特別な“茶体験”を演出してくれる。嬉野の茶師はもてなし上手で、お話上手。茶の知識も深く、熱意も強い。気軽に交流して、ぜひ会話を楽しんでほしい。そうすることで、旅の時間はいっそう豊かになる。

必見なのは、市内4カ所に点在する「茶空間」。ロケーションも驚きだが、茶畑の中で茶師が淹れる茶をいただく体験は格別のひととき。この一杯を味わうために、嬉野を訪れる価値がある。

「茶空間」めぐりも
「ティーツーリズム」の醍醐味

天茶台 by 副島園
茶師・副島仁さんの茶畑にある「天茶台」。標高約200mの高台に位置し、市街を見下ろしながらうれしの茶をいただける絶景スポット。

住所|佐賀県嬉野市嬉野町大字下野甲427
温泉街より|車15分、自転車25分、徒歩60分

茶塔 by 池田農園
大村湾を望む茶畑内に立つ、高さ3mの茶空間。茶塔に座り周囲を見渡すと、まるで茶畑の海に浮かぶ舟の上にいるかのような感覚に。

住所|佐賀県嬉野市嬉野町大字岩屋川内乙3729-84
温泉街より|車20分、自転車60分、徒歩120分

吉田茶室 by 副千製陶所
嬉野は肥前吉田焼の産地でもある。壁を埋める竹が凛とした雰囲気の茶空間は、窯元の倉庫を活用。副千製陶所のギャラリーも兼ねる。

住所|佐賀県嬉野市嬉野町大字吉田丁4116
温泉街より|車10分、自転車25分、徒歩60分

杜の茶室 by 永尾豊裕園
四方を木々に囲まれた茶畑に佇む静寂の茶室。杜の中で、茶の香りに包まれながら、うれしの茶をいただく。嬉野ならではの体験だ。

住所|佐賀県嬉野市嬉野町大字岩屋川内乙686
温泉街より|車20分、自転車60分、徒歩120分

旅の拠点となる温泉宿

嬉野温泉 和多屋別荘
2万坪の敷地を有する湯宿。男女別浴場は4つ。食事処では、名物の湯どうふと佐賀牛が味わえる。うれしの茶や肥前吉田焼も購入可。

住所|佐賀県嬉野市嬉野町大字下宿乙738
Tel|0954-42-0210
料金|2 名1 室1 泊2食付1万5000円〜(サ込・税別)
泉質|天然温泉、ナトリウム炭酸水素塩・塩化物泉(低張性弱アルカリ性高温泉)
泉温|約80℃
加温|なし
加水|あり
かけ流し|あり
日帰り|可
貸し切り風呂|あり
www.wataya.co.jp

大村屋
1830年創業とされている老舗の湯宿。現在は“音楽と本”をテーマに空間を創出しており、宿泊者以外も利用できるラウンジがある。

住所|佐賀県嬉野市嬉野町大字下宿乙848
Tel|0954-43-1234
料金|2 名1 室1泊2食付1万3000円〜(サ込・税別)
泉質|ナトリウム・炭酸水素塩・塩化物泉(低張性弱アルカリ性高温泉)
泉温|約92.5℃
加温|なし
加水|なし
かけ流し|あり
日帰り|可
貸し切り風呂|あり
www.oomuraya.co.jp

問い合わせ
[ 観光全般について ]
嬉野温泉観光協会(Tel:0954-43-0137)
[ 宿泊について ]
嬉野温泉旅館組合(Tel:0954-42-0240)
[ ティーツーリズムについて ]
www.tea-tourism.com

文=編集部 写真=林 和也、大塚紘雅
2020年4月号 特集「いまあらためて知りたいニッポンの美」

SDGs視点で読み解く、佐賀県の魅力

2021年2月現在
解説協力:サステナブル・ラボ株式会社

人間、地球及び繁栄のための行動計画として、持続可能な開発目標として国際的に採択されたSDGs。17の目標のうちゴール8の「働きがいも経済成長も」に注目してみると、佐賀県は「県内総生産当りの観光消費額(観光消費額/県内総生産)」が47都道府県の中で第3位です。

嬉野の茶師がもてなし上手である理由のひとつとして、長年観光業を通じて人々を楽しませてきた歴史があるからかもしれません。また観光消費額の割合の高さは、それだけ多くの人が佐賀県の魅力に価値を感じている表れだと言えるでしょう。

2022年秋、九州新幹線「嬉野温泉駅」が開業
嬉野市では2022年秋にJR九州新幹線「嬉野温泉駅」の開業が予定されています。嬉野市を訪れる人の増加に伴い、ご高齢の方や障がいのある方、海外からの来訪者など、観光客の多様化も見込まれるため、嬉野市は「ユニバーサルデザイン(Universal Design、UD)」のニーズが高まることを見据えたまちづくりに取り組んでいます。

だれもが安心・安全に観光を楽しめるまちへ「ユニバーサルデザイン」の推進
「ユニバーサルデザイン」とは、年齢や障がいの有無、言葉や文化など、さまざまな違いを超えて、誰もが利用しやすい製品やサービス環境をつくろうとする考え方のこと。嬉野市は 宿泊施設や商店街のユニバーサルデザイン化などのハード面の整備に加えて、温泉での入浴介助、宿泊施設の選定や予約のサポート、介助器具のレンタルなどソフト面の整備も進めています。目に見える物のバリアだけでなく、目に見えない心のバリアをなくすことも大切であるという考え方のもと、お互いに尊敬の念を持ち、支えあえる「日本一のバリアフリーのまち、うれしの」を目指しています。

足湯や浴衣、客室もバリアフリー
これまで温泉旅行をあきらめていた高齢者や障がい者の方が、嬉野で過ごす時間を心から楽しめるように、佐賀嬉野バリアフリーツアーセンターを中心に 各事業者や団体、行政が連携して進めているのが嬉野温泉のバリアフリー化。

例えば、温泉街の足湯には車椅子の方も利用できるスペースが設けられ、ご家族や介助者の方と一緒に散策途中の休息を楽しめる工夫が施されています。

またユニバーサルデザイン浴衣を開発し、温泉旅の気分を盛り上げるのに一役買っています。この浴衣はツーピースで構成され腰回りでの折り返しが不要なため、車椅子に座ったまま簡単に着付けが可能です。目の不自由な方が触れて分かるよう紐の形に特徴があったり、車椅子に座ったまま着脱しやすかったりと、さまざまな工夫が込められています。

さらに嬉野温泉は誰でも快適に利用することができる「ユニバーサルデザイン客室」を13旅館20室に整備。車椅子のまま入れる客室、手すり付きの浴室、電動ベッドの用意、段差に配慮した館内スペースなどに改装された旅館情報をまとめたガイドブックを発行しているので、バリアフリー対応の宿を探したいときに役立ちます。

もてなしの心から広がる、嬉野のユニバーサル・ツーリズム
嬉野では3世代・4世代にわたる親孝行家族旅行、老老介護のリフレッシュ旅行など、今までになかった新たなニーズも生まれてきているといいます。

新幹線駅の開通で新たな玄関口ができる嬉野市。多様化する観光客を受け入れる嬉野の人たちの深い懐にはもてなしの心が宿り続け、ユニバーサル・ツーリズムの実現に向けてさらに進化していくことでしょう。

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