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白洲信哉さんが行く!
祭りと美味でめぐる桑名旅【前編】

2020.12.16 PR
白洲信哉さんが行く!<br>祭りと美味でめぐる桑名旅【前編】

伊勢神宮参詣の玄関口であり、東西の物流の拠点として、また東海道の宿場町として栄えた三重県桑名市。多度大社の上げ馬神事、春日神社の石取祭など伝統の祭りが息づき、美味美酒を味わえるこの地を、文筆家の白洲信哉さんが訪ねました。

〈旅する人〉
白洲信哉さん
1965年、東京都生まれ。文筆家。日本文化の普及に努め、書籍編集ほか、文化イベントをプロデュース。父方の祖父母は白洲次郎・正子。母方の祖父は文芸評論家の小林秀雄。

祭りは土地の歴史を学ぶ最短コース

多度祭(上げ馬神事)
多度大社御例祭の神賑行事のひとつ。神占いで選ばれた少年騎手6人が、武者姿で約2mの絶壁を駆け上がる。 最初の方の馬が上がれば早稲、後半が多ければ晩稲の苗がよいなど、古くより農耕の時期や豊凶が占われてきた

中世より極楽浄土と同義の「十楽の津」と呼ばれた自治都市・桑名。伊勢神宮参詣の一の鳥居があり、古来、神宮との関係が深いが、僕がはじめて桑名に訪れたのは、「お伊勢参らばお多度もかけよ お多度かけねば片参り」と謡われ、北伊勢の大神宮として古くから尊崇を受けた多度大社の多度祭だった。徳川四天王・本多忠勝が再興した祭事のメインイベントである上げ馬神事の、侍魂が生き続けている光景がいまでも鮮明だ。祭馬にまたがった若武者が、正しく人馬一体となり、物すごい勢いで迫ってきて、瞬く間に最後の急な上り口を駆け上がった。天晴れ、と僕は叫んだ。境内も興奮の坩堝、参拝客は伊勢音頭を高らかに歌い、17歳の青年と馬は得意満面。端午の節供にこれ以上ない檜舞台となっていた。

伊勢太神楽
神宮の代理参拝人である神楽師たちが、獅子舞をしながら伊勢大神楽講社の神札を配布して回る、その芸能の総称。日頃各地を旅している5つの家元が12月24日に増田神社に集結。伝承されている8舞8曲の16演目すべてを奉納

僕の旅に大きなウエイトを占める祭りは土地の歴史を学ぶ最短コースで、伝統から感じる密度が本物を味わう試金石である。一度目の印象がリピート率を上げ、より深く掘り下げるきっかけになる。二度目の旅の主役は、伝統芸能の伊勢太神楽だった。お伊勢参りのかなわぬ遠隔地の方々に、かつては伊勢神宮の、現在は伊勢大神楽講社の神札を配布する人々が行う芸能の総称である。各地の神社境内などで、総舞と呼ばれる芸能を披露しているが、毎年12月24日には、伊勢太神楽の本拠地である桑名の増田神社で、講社全五社中が集まり奉している。僕がいつも感じるのは、劇場の娯楽本意の芸能と違い、野外の神事は神遊びの臨場感と、地のもっている歴史の力が満載であること。境内の町名は太夫である。桑名の都市計画の基礎は、前述の本多家が手掛けた。町の中心には、たとえば船馬町、京町に江戸町、職人町や鍋屋町など情緒ある古い地名が残っている。

昨年夏には「日本一やかましい祭り」と有名な石取祭にもお邪魔した。祭地を清めるため、春日神社に石を奉納する神事が起源にある祭りだ。先に記した各地区の代表が神社に集結、おはらいの後43台にも及ぶ山車に散り、祭りはスタートする。我が国各地に、銀座通りや中央区など何処かが明確でない陳腐な地名がおびただしいが、地名=歴史だということを肝に命じてほしい。祭りの中心・春日神社の側には、当たり前のように春日町があり、伝統の密度がさらにアップする。

桑名石取祭
江戸時代初期より続く祭り。ユネスコ無形文化遺産、国指定重要無形民俗文化財。午前0時の「叩き出し」にはじまり翌日の深夜まで丸2日間行われ、豪華絢爛に装飾した祭車43台が鉦や太鼓を打ち鳴らしながら市中を練り歩く

2021年度
桑名の祭りカレンダー

4月1〜2日
桑名聖天大祭/大福田寺
住所|三重県桑名市東方1426
Tel|0594-22-0199

5月2〜3日
金魚まつり/鎮国守国神社
住所|三重県桑名市吉之丸9
Tel|0594-22-2238

5月4〜5日
多度祭(上げ馬神事)/多度大社
住所|三重県桑名市多度町多度1681
Tel|0594-48-2037

7月31日・8月1日
桑名石取祭/春日神社周辺
住所|三重県桑名市本町46
Tel|0594-22-1913

11月23日
七福神まつり/十念寺
住所|三重県桑名市伝馬町53
Tel|0594-23-3388

12月24日
伊勢太神楽/増田神社
住所|三重県桑名市太夫155
Tel|0594-23-2498
※2020年は中止

今回の旅を動画でも体感!

 

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text: Shinya Shirasu, Yukie Masumoto photo: Sadaho Naito
2021年1月号「温泉と酒。」


≫育てたい土鍋。伊賀の土で生まれた「圡楽」

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