向付(むこうづけ)とは?
歴史や成り立ち、黄金比を学ぶ。
|うつわと料理談議③
「最近、食卓に上がるうつわがマンネリになってきた……」そんなお悩みがあるなら、自宅で向付、いかがでしょう? 向付は忙しない日常に潤いを与えてくれる救世主。その歴史や成り立ち、かたちや組み合わせなどを学んで、毎日の食卓をより楽しく彩りましょう。
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そもそも「向付」とは?
茶懐石で最初に出されるお膳の上で、飯碗と汁椀の“向こう側”に置かれるうつわ、もしくはそのうつわに盛られた料理を指す。もともとはなます、近年では刺身が多い。茶懐石では料理を食べた後に向付を取り皿として使うため、茶事の趣向や季節感を表す重要な役割を担った
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「向付」のかたちに決まりはある?
33〜36㎝四方のお膳で供されていた向付は、飯碗、汁椀とともにお膳にのるサイズであればかたちに決まりはない。料亭では季節などに合わせて作家に発注するケースも一般的で、魚や葉っぱなど自然のモチーフを模した向付も多い
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向付は、どのように歩んできたの?
◎1336〜1573年頃
茶人・千利休以前の室町時代、本膳料理の一品として使われていた
◎1522〜1591年頃
茶人・千利休が確立した「一汁三菜」の「菜」を担う
◎1615〜1624年頃
存在感のある織部焼の向付が現れる(わび茶としての一汁一菜)
◎1579〜1647年頃
茶人・小堀遠州により「綺麗さび」というスタイルが流行
◎1603〜1869年頃(18世紀前後)
「向付」の名称が現れ、三菜を刺身(向付)、煮物椀、焼物とする形式が確立する
◎1801〜1900年頃(19世紀初期)
今日の懐石料理における献立の8割方が標準化する
◎1801〜1900年頃(19世紀前半)
寛政期から天保期にかけて、懐石料理がほぼ完成
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向付の組み合わせに黄金比はある?
和食では、かたちや材質の異なるうつわを取り合わせるのが基本。汁椀が漆器、めし碗が陶器なら向付は磁器にするなど、統一感とは真逆の美意識をもつ。向付は“あえてバラバラ”を楽しんで
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1|うつわの勉強会「基 -もとい-」に教わる毎日の食卓を楽しくするワザ【前編】
2|うつわの勉強会「基 -もとい-」に教わる毎日の食卓を楽しくするワザ【後編】
3|向付(むこうづけ)とは?うつわの歴史と黄金比を学ぶ。
4|向付で料理を美味しく盛りつけるコツ 7選
5|「基-もとい-」メンバーファイル
text: Akiko Yamamoto photo: Norihito Suzuki
Discover Japan 2023年12月号「うつわと料理」