TRADITION

高知県《よさこい祭り》
南国土佐の夏を彩るカーニバル
|改めて知っておきたい日本の祭り

2022.7.25
高知県《よさこい祭り》<br> 南国土佐の夏を彩るカーニバル<br> <small>|改めて知っておきたい日本の祭り</small>

古くから日本人の暮らしに密着し、土地の風土や文化を表す「祭り」。祭りの中には旅行客が参加できるものも多く、地域の人々と同じ体験を共有できる。また参加することで日本の文化や歴史も学べる。祭りを目的とした旅は、普通の旅行では味わえない特別な体験をもたらしてくれる。

今回紹介するのは、高知市内で約1万8000人の踊り子たちが華やかに乱舞する土佐のカーニバル「高知よさこい祭り」。誕生のきっかけは商店街活性化で阿波おどりに対抗してはじまった? 祭りの歴史や魅力をひも解こう。

※2024年は8月9日(金)~12日(月)にて開催予定。詳しくは記事下部をご覧ください

起源は江戸時代のお座敷唄
よさこいとは?

土佐の高知のはりまや橋で……とはじまるよさこい節は、江戸時代から歌われている高知のお座敷唄だ。
この歌をはじめとする高知の俗謡や民謡をベースに作られたのが「よさこい鳴子踊り」であり、いまや高知県のみならず全国にこれを踊るチームがあり、その最大の披露の場が毎年8月9日の前夜祭から始まる「よさこい祭り」である。

商店街の集客イベントから世界規模へ!

1950年代の誕生当初の写真。第1回は21団体750人の踊り子が、高知公園追手門本部競演場や、帯屋町などで「よさこい鳴子踊り」を披露した

実はこの「よさこい鳴子踊り」の歴史はまだ100年に満たない。敗戦から8年後の1953年、やっと復興の兆しが見えてきた高知を盛り上げようと、商店街が集客に困る夏に何か大きなイベントを立ち上げよう、それには徳島の阿波踊りのような、高知名物となるような踊りがいいだろうという企画が持ち上がった。翌年には誰でも簡単に踊れること、街を練り歩くような踊りにしたいこと、何か大きな特徴を持たせたいことなどを念頭に、依頼を受けた作曲家の武政英策が、よさこい節などから囃子言葉を拾い出し、曲と歌詞を作り上げた。振り付けは日舞の5大流派に声をかけて、知恵を出してもらったという。チャリッチャリっという鳴子を手にして踊るのは、四国一有名な阿波おどりに、後発でも十分対抗できるような華やかさを持たせようと考えられたもの。鳴子は稲を狙って集まる鳥を音で脅す農道具で、米の二期作ができる高知、米どころの高知を象徴する楽器でもある。

1954年、初めてのよさこい祭りが開催され、よさこい鳴子踊りが披露される。1959年には映画「南国土佐を後にして」の劇中によさこい祭りが登場したり、映画のヒットを受けてこの年のよさこい祭りがテレビ中継されたりして、よさこい祭りは一気に全国に知られることとなる。さらに1970年の大阪万国博覧会では、世界の人々の前で披露され、1972年にはフランスのニースカーニバルにも出演し、世界規模で知られる日本の祭りとなった。

ロックやサンバのリズムも取り入れ
1万8000人超の踊り子が舞う!

よさこい鳴子踊りは第一回に披露された振り付けや音楽にこだわらず、アレンジもおおらかに受け入れてきた。第一回に披露された振り付けは、舞台で披露する日舞の色合いが濃かったが、5回目のよさこい祭りには、早くも当時流行のマンボ風のよさこい鳴子踊りが登場しており、それぞれのチームが思い思いのよさこい鳴子踊りを踊り、また観客もそのオリジナリティーを楽しむようになっていった。現在では、北海道のソーラン祭りと結びついたYOSAKOIソーラン祭りをはじめ、全国でよさこい祭りは独自の発展を遂げ、日本国内だけでなく海外でもよさこい鳴子踊りを踊るまつりが開かれている。

「よさこい祭り」は例年8月9日の前夜祭、10・11日の本番、さらに12日の全国大会、後夜祭と4日間にわたって開催される。地元のチームはもちろん、国内外から約200チーム、1万8000人を超える踊り子が参加。市内16か所の会場には音楽を流す移動櫓でもある地方車をそれぞれ趣向を凝らして飾り付け、オリジナルの衣装に身を包んだ踊り子たちが、自分たちのよさこい鳴子踊りを舞う。伝統的な第一回の振り付けを守るチームもあれば、ロックやサンバのリズムを取り入れた新しいものもあり、多彩でありながら同じ掛け声、同じ鳴子で盛り上がる、祭り全体の一体感が大きな魅力となっている。
※2022年は規模縮小し2日間で約100チームが12会場で踊りを披露

|見どころ1
個性をひと目で魅せる「衣装」

観客を涼へ誘ったかと思えば、トロピカルな世界へ導き、チームカラーを視覚的に表現するのが衣装の役割だ。この数年は和紋アレンジが多く見られるが、その使い方も種類豊富で衣装デザイナーの追及は尽きることがない。個性に加え快適性や踊りやすさなどにも配慮されている。年々アートとしての斬新さや個性に磨きがかけられている。

|見どころ2
心躍り街が揺れる「踊り」

「鳴子を鳴らし前進する踊りであること」以外は、とにかく笑顔で楽しく踊ればよい。ジャンルを問わない、フュージョンこそがよさこいダンスの魅力だ。100人前後の踊り子の一糸乱れぬ群舞は、観る者を圧倒させる壮観さ。一人ひとりの力が結集してチーム全体の力となる、パワーとスケールを体感しよう。

|見どころ3
伝説の旋律×独創性「音楽」

よさこい祭りの音楽は、よさこい鳴子踊りのフレーズが入っていればアレンジ自由。各チームがオリジナルの音楽を奏でる。ボーカルが踊り子に激を飛ばし、ドカンとはじまったかと思えば優美な世界へ誘う……一曲にさまざまなメロディーが交錯し、まるでミュージカルのように物語が展開する。

チームを先導する地方車は音楽を出す移動するやぐらの役割も果たす。各チームは趣向を凝らして製作する
衣装に合わせデザインは千差万別の「鳴子」。よい鳴子の条件は、丈夫でよい音が鳴ること。手首のスナップを上手に効かせて鳴らすと涼やかな音を奏で、決める時にはピタッと音が止まり気持ちがいい

よさこい祭り
開催時期|8月9~12日 ※2024年は8月9日(金)~12日(月)にて開催予定
会場|高知市中心部(開催日により開催時間や場所は異なる)
Tel|088-875-1178
http://www.cciweb.or.jp/kochi/yosakoiweb/

ライタープロフィール
湊屋一子(みなとや・いちこ)

大概カイケツ Bricoleur。あえて専門を持たず、ジャンルをまたいで仕事をする執筆者。趣味が高じた落語戯作者であり、江戸庶民文化には特に詳しい。「知らない」とめったに言わない、横町のご隠居的キャラクター。

参考文献=日本の祭り(実業之日本社)、高知よさこい祭り(岩田書院)

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