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2025年の干支「へび」は再生の吉兆?
どんな年になる?《巳年の基礎知識》

2024.12.7
2025年の干支「へび」は再生の吉兆?<br>どんな年になる?《巳年の基礎知識》

師走の声が聞こえると、気になるのは来年の運勢。2025年は巳年。巳、ヘビは古くから日本人の身近な生き物として神話や民話などの多く登場する生き物だが、その扱われ方は様々で、その「様々である」ところにヘビに対する日本人の思いが感じられる。

ざっとおさらい、十二支とは?

十二支は中国からやってきた考え方で、12種類の動物で構成されている。もとは動物ではなく、季節によって変化する植物の状態を表した「滋」「紐」「演」「茂」「伸」「巳」「仵」「味」「身」「老」「脱」「核」という言葉。これらの言葉に音や韻が似た動物を当てはめたのが、現在に続く十二支なのだ。

ちなみに正確には干支=十二支ではない。干支とは十干の「干」と十二支の「支」を一つにした言葉で、現代ではあまり一般的ではないが、古代中国の暦法で順序や番号を表す「甲」「乙」「丙」「丁」「戊」「己」「庚」「辛」「壬」「癸」の十干に、干支の十二支を組み合わせて、その年の干支ということになる。つまり来年の干支は、十干の乙(きのと)と十二支の巳を合わせて、乙巳(きのとのみ)ということになる。

神か悪魔か?
日本人のヘビに対する感情は複雑

現代人の多くは「ヘビ? いやあ……ちょっと……」と苦手意識を持つ人のほうが多いだろう。しかし神社のご神体がヘビというのは珍しくないし、「白ヘビは神の使い」「ヘビの抜け殻は金運のお守り」など、ヘビを神聖なものと考える例は全国各地にある。家の守り神としてあがめ、家の敷地内でヘビを殺せば家が絶える、家にヘビが住み着くと家が栄える、家にヘビが這い入ると病人が回復するというような言い伝えもある。またヘビの夢を見ると運気が上がる、春の早いうちにヘビに出会うと縁起がいいといった言い伝えは、個人にとってもヘビは幸運をもたらすと考えられてきたことをあらわしている。

これらのようにヘビを神聖視する理由は、①長いものを長寿の象徴と考える(山芋や蕎麦なども同様)②生命力が強いものへのあこがれ(死への恐れを遠ざける)③ほかの生き物を食べる、人間をも殺す力がある(生死をつかさどる力への畏敬の念)などが考えられる。また湿気を好み、泳ぐこともできるヘビは水と関連付けて崇拝されることも多い。古事記に登場する八岐大蛇も、土地を流れる河川の氾濫を「折々に暴れて人々を困らせる大蛇」として描いたとも言われている。農作物の出来不出来に大いに関係する水をつかさどるものとして、ヘビは豊作を願う心、ひいては子孫繁栄、金持ちになるという願いを引き受ける、神聖な生き物として扱われるようになったのだ。

不思議なほどに正反対の言い伝えも
ヘビはやっぱり恐ろしい?

だがこうしたヘビのご利益とは正反対の言い伝えも、やはり全国に多々残っている。例えばヘビに会うと葬式が出る、漁に出るのにヘビに会うと不漁になる、春の初めにヘビに会うとその年は仕事がはかどらないなど、凶事の先触れとしてヘビを扱うのだ。また能や歌舞伎で有名な安珍清姫伝説のように、人間が大蛇になる物語もあれば、大蛇が人間に化ける物語もあり、こうした場合の大蛇は人間に仇をなす場合が多い。

これらのようにヘビを恐ろしいもの、俗にいう「鬼か蛇か」という冷血な悪者と考えるのは、やはりヘビが生き物の命をとる、時には人間をも死に至らしめるからだろう。しかし単なる悪者ではなく、神がかった力を持つ神秘的な生き物として、畏怖の念をもって扱うのが、日本人に対するヘビへの感情の特徴と言えるだろう。

出会うヘビの種類によって、吉凶が変わる、生まれてくる子供が男か女かわかるといった占い的な言い伝えも多数ある。

歴史上でも大きな節目の年だった乙巳の年

過去の乙巳の年はどんな一年だったのか、歴史を紐解いてみよう。

まず645年は大化の改新が始まった年。中大兄皇子と大海人皇子という、若い力が新しい政治体制を作り出す始まりの年だった。1185年は平家が壇ノ浦で敗れた年。貴族政治は完全に終わりをつげ、源氏が武家政権のトップとなることが決定づけられた。1605年は徳川家康が家督を息子の秀忠に譲った年。天下統一の戦乱から平和な国づくりへとシフトチェンジが始まる年になった。1905年は日露戦争が終わり、大国ロシアに勝利したことに自信をつけた日本が、国際的にも存在感を発揮した年。1965年は5年後の1970年に大阪万博の開催が決定し、国内の高速道路の整備が進む、前年1964年に開通した東京―大阪間を走る新幹線が、当初の予定通りの3時間10分運転を開始する、国産機YS-11が定期路線に就航するなど、戦後から高度成長期への移行を実感する年になった。

知恵と慈悲の仏に守られた、
2025年の乙巳の年とは?

そしてその60年後が2025年である。巳年の守り本尊は、知恵と慈悲を象徴する普賢菩薩。十方世界のすべての衆生を救済するという、ありがたい仏様だ。そんな仏様に見守られる2025年はどんな年になるだろうか。

十干の「乙」とは、最初の「甲」が事の起こりであり、起こったことが次への成長を待って力をためている状態を指す。十二支の「巳」は植物がぐっと伸びた、成長しきっている状態を指す。この二つを併せ持つ乙巳の年は、さらなる成長を目指して力をためる時期であり、そのために努力の成果を試すときでもある。今まで胸に秘めてきた夢、着々と準備してきたことに、思い切ってチャレンジしてはどうだろう。脱皮を繰り返して成長するヘビは、再生を意味する吉兆でもある。過去の失敗も新たな成長へと変える、絶好の年になりそうだ。

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ライタープロフィール
湊屋一子(みなとや いちこ)
大概カイケツ Bricoleur。あえて専門を持たず、ジャンルをまたいで仕事をする執筆者。趣味が高じた落語戯作者であり、江戸庶民文化には特に詳しい。「知らない」とめったに言わない、横町のご隠居的キャラクター。

参考文献=角川ソフィア文庫「日本俗信辞典 動物編」鈴木棠三/講談社学術文庫「言霊の民俗誌」野本寛一/雄山閣「江戸時代年鑑」遠藤元男/祥伝社新書「YS-11世界を翔けた日本の翼」中村浩美
参考ウェブサイト=乗りものニュース

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