日本人なら知っておきたいニッポンの神様名鑑。時代で変わる神様のカタチ
天地が分かれ神々が誕生。時代が変わるにつれ、神への認識も変化してゆく……。その変遷を眺めてみましょう。
神話時代
天と地が分かれ日本誕生
はるか昔、天と地は交じり合い混沌としていたが、やがて天と地が分かれるときが訪れ、世がはじまる。天は神々が住む、高天原という天上世界となり、はじめに万物の祖とされる造化三神が現れ、続いて神世七代の神々が出現する。しだいに神は神世七代の最後として、イザナギとイザナミが登場。国生みの物語がはじまる。
二神による国生みの順序は、現在の淡路島からはじまり、四国、隠岐島、九州、壱岐、対馬、佐渡島、本州の順に行われた。
神々がここに誕生する
国生みを終えた二神は、次にたくさんの神々を生むが、イザナミは、火の神ヒノカグツチを生んだときにヤケドを負って亡くなってしまう。しかし、残されたイザナギは、その後も神を生み落とし、アマテラスやスサノオといった神話を司る神々がここに誕生していくことになる。
アマテラスの登場により、神の世界は統治され育てられていく。
古墳時代
天皇を中心とした統一国家が誕生
天の神々は、やがて、地上に降り立ち、国づくりを通じて、地上に様々な産業を呼び起こし、国譲りを通じて、その末裔が、皇祖として、地上を治めるようになっていく。そして、大和国が創建され、天皇を中心とした統一国家が誕生していくことになる。
大和国の成立によって、神々の信仰も体系化されていくことになる。
アミニズムが神様のはじまり
神道は、もともと文字が発明されるはるか以前のアミニズムと呼ばれる土着型の精霊、自然信仰が起源とされている。つまり、山や風や木や岩などなど自然にまつわるさまざまなものに神が宿ると考えられていたのだ。そこから神様は神話の登場などでさまざまな変遷を経ていく。
自然にまつわるものなどすべてのものに神様が宿るとされている。
鎌倉時代
一般庶民が宗教を知る
武士階級の勢力が増し、今まで貴族や一部の階級しか知りえなかった宗教に関する理解が民衆に一気に広まった。これにより、今までに登場したさまざまな説に対する逆説や新しい考え方も生まれ、いろいろな信仰や宗教が全国的に相次いで生まれた。が、この段階でも仏と神は共存していた。
鎌倉時代に庶民でも学ぶことができる、仏教の宗派が登場。神や仏の存在を民衆が生活の中に意識しだす。
平安時代
神様は実は仏様だった!?
平安時代に入ると、神身離脱説は影をひそめ、これに代わり日本の神はインドの仏・菩薩が民衆を救うために現れた(権現)とする、本地垂迹説が生まれる。それにより、権現号や菩薩号が付けられた神々が祀られ、さらには本地仏(神の正体とされる仏の姿)も定められた。
神は仏であるという思想が一般的に。本地仏や権現号など仏教的な要素が神々に定められ、神仏習合が本格化。
江戸・明治時代
神様と仏様の別れ
江戸時代末期になると、日本固有の思想や精神を明らかにする国学が盛んになり、神道の原点に回帰する考えが生まれ、近世神道思想の主流となる。そして、1868年に神仏分離令が交付。神宮寺、鎮守社、権現号や菩薩号、神社内の仏像など奈良時代より続く、神仏の関係は外見上、姿を消した。
神社から仏教の要素が、寺院から神道の要素が撤廃、独立。民間レベルの信仰は神仏習合したまま現代に。
読了ライン
日本人なら知っておきたいニッポンの神様名鑑
・天之御中主神/アメノミナカヌシ、高御産巣日神/タカミムスビ、神産巣日神/カミムスビ
・表筒男命/ウワツツノオ、中筒男命/ナカツツノオ、底筒男命/ソコツツノオ
監修者
東條英利(とうじょう・ひでとし)
カルチャージ代表取締役。神社ライター
日本の素晴らしさの再発見と日本人の基礎教養力向上を目的に、執筆・講演活動を行う。全国の神社情報専門ポータルサイト「神社人」を主宰し、現在までに訪れた神社の数は数千社以上。著作に「日本人の証明」(学研パブリッシング)、神社関連書籍や雑誌の監修などを手掛ける。フェイスブックやアメーバブログを日々更新中。
東條英利公式サイト
神社人
text=Hidetoshi Tojo, Hisanori Kato, Takehiro Nanbu
illustration=Hitomi Iha
2013年4月号「新しい歌舞伎入門」