「シグネチャーパビリオン」ってなんだ?
8名のクリエイターが思い描く、
日本の美意識が息づく未来の社会

4月13日から開幕する「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」では会場の中心に8名のプロデューサーによる8つのパビリオンが登場。さまざまな観点から万博のテーマ“いのち輝く未来社会のデザイン”に迫る。
大阪・関西万博の
「シグネチャーパビリオン」とは?

©SANAA
1970年、“人類の進歩と調和”をテーマに掲げた大阪万博では、お祭り広場と太陽の塔がその象徴だった。そして今回、大阪・関西万博のテーマ“いのち輝く未来社会のデザイン”を表現するのが、8つの展示館で構成される「シグネチャーパビリオン」だ。
なぜいま「いのち」にフォーカスするのか。参加プロデューサーの一人、石黒浩さんはこう話す。
「科学技術が進展し、遺伝子の技術で人間をつくったり、環境を守ったり破壊できるようになりました。だからこそ技術の使い方を考え、私たちが責任をもって未来をデザインしなければなりません」
新型コロナウイルスが世界を震撼させ、ウクライナやガザへの侵攻で多くのいのちが失われる中、このテーマがリアルに響いてくる。

©2024 Yoichi Ochiai/設計: NOIZ/Sustainable Pavilion 2025 Inc.All Rights Reserved.
幅広い分野で活躍する8名のプロデューサーが手掛ける8つのパビリオン。それぞれのテーマを掲げつつ、大きくは3つの方向性からいのちに向き合う。
ひとつは、グローバルな世界や地球環境の視点からいのちを知り、大切にしようというもの。
2つ目は、「私自身」、「私とあなた」といった関係性の中でいのちをとらえていくもの。宮田裕章さんの「Better Co-Being」は、そこを訪れた人と人の交わりで虹やアートが生まれる。河瀨直美さんの「Dialogue Theater」は、毎日異なる二人が対話する関係性の中にいのちのつながりを見出す。
3つ目は、テクノロジーが生み出すいのち。石黒さんの「いのちの未来」は、動植物を超えて人工的なものにもいのちを拡げ、落合陽一さんの「null² (ヌルヌル)」はデジタルにもいのちが延びる。

また、各所で日本文化を感じられるのも見どころのひとつ。まず会場の中心が「静けさの森」であるのは、自然や森を神聖視する東洋的思想が表れている。中島さち子さんの「いのちの遊び場 クラゲ館」では、陶芸や茶室に見る日本の工芸や、全国各地の祭りが大事な要素に。河森正治さんの「いのちめぐる冒険」では、石川・金沢で100%再資源化した金箔を利用するモニュメントが登場。小山薫堂さんの「EARTH MART」では日本が世界に誇る食に着目する。福岡伸一さんの「いのち動的平衡館」では、「いのちはうつろいゆく流れの中にある」というメッセージそのものが、日本文化の中に息づく繊細で優美な自然観・世界観と通じている。
四方八方からいのちに向かって攻めていく壮大な仕掛け。いのちとはそれほど重く、いろいろな方面から迫らないとその本質は見えてこないものかもしれない。だからこそいくつかのパビリオンを見てほしい。めぐることで視野が広がり、未来への考察がより深まり、さらには日本に息づく文化の魅力に気づけるかもしれない。
8つの観点から“いのち”の本質に迫る、
シグネチャーパビリオンの挑戦
いのちを響き合わせる
宮田裕章さん 「Better Co-Being」

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いのちを拡げる
石黒 浩さん「いのちの未来」

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いのちを高める
中島さち子さん「いのちの遊び場 クラゲ館」

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いのちを磨く
落合陽一さん「null² (ヌルヌル)」

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いのちを知る
福岡伸一さん「いのち動的平衡館」

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いのちを育む
河森正治さん「いのちめぐる冒険」

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いのちをつむぐ
小山薫堂さん「EARTH MART」

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いのちを守る
河瀨直美さん「Dialogue Theater− いのちのあかし −」

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text: Yukie Masumoto
2025年4月号「ローカルの最先端へ。」