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《高知県立牧野植物園》
植物分類学の父・牧野富太郎の探究心を学ぶ
2|牧野富太郎とは?

2022.8.14 PR
《高知県立牧野植物園》<br> <small>植物分類学の父・牧野富太郎の探究心を学ぶ</small><br> 2|牧野富太郎とは?
高知県立牧野植物園蔵

自らを「植物の愛人」と称し、日本植物分類学の基礎を築いた牧野博士。研究と教育普及活動に没頭した人生のそばには、温かな家族があった。

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「牧野植物園は博士そのもの」

植物に恋をし、自らを「植物の愛人」、「草木の精」と称した牧野富太郎。日本の植物を最もよく知る植物学者であり、植物図の第一人者。本草学に親しみ、日本の植物分類学の基礎を築く。写真はオニバスの幼株を首にかけた77歳の博士 高知県立牧野植物園蔵

小学校を中退し、独学を貫いた牧野博士。22歳で東京大学理学部植物学教室への出入りが許され、本格的に植物研究に邁進する。26歳で初の著書『日本植物志図篇』を刊行。以降、多くの植物誌を出版していく。

牧野博士が大切にしていたのが野外調査だ。27歳で日本において日本人で初めて新種の植物にヤマトグサと学名と和名をつけて発表。以降は名もなき草木に次々と学名を与えた。調査は沖縄県を除く国内すべてと、台湾・中国(旧満州)に及ぶ。自らを「草木の精」と称した博士。フィールドではいつもおしゃれをしていた。まるで恋人に会いにいくかのように。
「牧野博士はカリスマです」とは、園長で、薬学博士でもある川原信夫さん。「天然資源から薬を探索する薬学の研究は、分類学者がいてはじめて成り立ちます。分類学はとても地道で、地味ではあるけれど、重要な仕事です。牧野博士はそれが好きだった。さらに、絵を描く才能がありました」

私生活では26歳で壽衛と結婚。13人の子どもを授かる。植物採集のために全国を行脚し、膨大な文献を集め、自費出版も行った博士。そこに生活費も重なり、ときに多額の借金を抱えながら研究を続けたという。家賃が払えずに家族で引っ越したこと30回近く。壽衛さんは献身的に博士を支えた。

「わが姿たとえ翁に見ゆるとも 心はいつも花の真盛り」牧野富太郎
晩年、博士は好きな植物の研究に明け暮れ、94歳で幕を下ろした。 

牧野植物園は、博士そのものだと川原さん。「ここで牧野富太郎という人物を知り、まずは植物の世界を楽しんでほしいです。その中で将来、第2、第3の富太郎が出ればこれほどうれしいことはありません。園の中でひとつでもふたつでも記憶に引っ掛かるものがあれば、それを大事にしてほしいです」

78歳のときに刊行した『牧野日本植物図鑑』。晩年まで訂正と追加を描き込み続けた
博士が自宅で晩年に採ったヒメアジサイと、100年以上前の上野公園のソメイヨシノ

牧野博士の代表的な業績

①植物を記載する
これまで知られていなかった多くの植物の特徴を明らかにして記述し、1500種類以上の植物の種や品種を命名した
②収集した標本40万点以上
日本各地で採集した植物は、博士が自らの手で新聞紙に挟んで腊葉(さくよう・押し葉)標本に。多種多様の植物をいつでも比較できるため、新種の発見につながる
③「牧野式植物図」
植物の特徴を正確に伝えるよう、多数の個体を細密に観察した上で種の平均的な姿を描いた。植物の全形図と部分図、解剖図などをひとつの画面に収める描写力は圧巻
④学術雑誌の創刊
日本の植物研究を発表するメディアとして『植物学雑誌』の創刊に仲間とともに携わる。後に、より自由に植物の知識を普及する雑誌『植物研究雑誌』を独力で創刊
⑤教育普及
大衆への採集指導や講演会、植物啓蒙書の出版など、全国で植物愛好家を増やす活動を行った。各地で同好会が設立され、その活動は今日に続いているものもある。
⑥植物図鑑をつくる
野外調査で得た植物の知識と植物図をふんだんに用い、植物図鑑を出版。編集に10年をかけた『牧野日本植物図鑑』は日本の植物図鑑の礎となる

興味の範囲は植物にとどまらず
博士が関心をもった事柄を抜き書きしたノート『結網漫録』。雑記帳のようなもので、植物採集のための道具、貝殻の構造など、植物に限らずにさまざまなことが記され、好奇心と興味の幅広さがうかがえる
蔵書が積み上がる牧野博士の書斎
展示館では、博士が晩年を過ごした東京・東大泉の家の書斎を再現。家族も立ち入れなかった書斎で博士の肖像画を描いた画家は「絵になるじじいだ」と評した
植物にかかわるあらゆる分野の書物
文学、経済、歴史などに見られる植物を知るための書物は博士の頭の中そのもの。中国の『本草綱目』は諸版を集め読み比べ、時代による変遷も調べている
愛妻の名前をつけたスエコザサ
妻・壽衛が病に伏していたころ、新種のササを発見した博士は、妻への感謝を込めてスエコザサと命名。牧野植物園でも元気に育っている
「植物は人間がいなくても少しも構わずに生活するが、人間は植物が無くては生活出来ぬ事である。(中略)人間は植物に向こうてオジギをせねばならぬ立場にある」と記した 高知県立牧野植物園蔵

 


3000種類以上を生育する植栽に迫る
 
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text: Yukie Masumoto photo: Yoshihito Ozawa
2022年9月号「ワクワクさせるミュージアム!」

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