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「うつわ祥見」が選ぶ注目作家
小野哲平

2020.4.10
「うつわ祥見」が選ぶ注目作家<br><b>小野哲平</b>

食べるための道具「うつわ」。毎日使うものだからこそ、音楽やファッションと同じ感覚で本当にカッコいいものを選んでほしい。そんな思いから「うつわ祥見」のオーナー・祥見知生さんが、いま最も勢いのあるうつわ作家5名をセレクト。5人目は力強く美しい、使い手を励ますうつわをつくり続ける小野哲平さんを紹介する。

祥見知生(しょうけん ともお)
北海道生まれ。鎌倉を拠点に、2002年「うつわ祥見」をオープン。’09年「うつわ祥見onari NEAR」、’17年「うつわ祥見KAMAKURA」、’19年「うつわ祥見KAMAKURA concierge」をオープン。展示会企画開催のかたわら執筆にも励む。著書は『うつわを愛する』(河出書房新社)ほか
https://utsuwa-shoken.com

小野哲平(おの てっぺい)
1958年、愛媛県生まれ。鯉江良二氏の弟子を経て、常滑にて独立。’84年より家族とともにタイ、ラオス、インド、ネパールなどを旅しながら暮らす。’85年常滑にて築窯。’98年高知県香美市に移住し、2001年に3年がかりで薪窯を完成させる

Instagram/@onoteppei

「僕がつくるのは、うつわのかたちをしたうつわではないもの」

高知県の山あい、60戸が暮らす小さな集落で小野哲平さんは作陶する。工房を取り囲むのは四季折々の美しさを見せる棚田、窯にも暮らしにも欠かせない薪。自然の恵みが並ぶ食卓や弟子たちとの語らいを大切にする日々は、規則正しく過ぎていく。

「うつわをつくりはじめた若い頃、原動力だったのは社会への怒りでした。怒りがそのまま表れた作品は暴力的でしたね。つくる理由はいまもあまり変わりません。ただ、怒りを違うかたちに変えて出すようになりました。つまり、僕がつくるのは“うつわのかたちをしたうつわではないもの”。僕が感じていることそのもの、です」。

哲平さんは、40年以上に及ぶ作陶の日々をこう振り返る。祥見さんは、そんな哲平さんと長きにわたって親交を温めてきた。

「いまの時代、みんな頭でっかちで足元が不安定だけれど、本来人間は大地を踏みしめて立つ生き物。哲平さんのうつわに触れると、そこに立ち返れるんです。大丈夫だ、しっかりしろよ! っていう声が聞こえるんですよ」。

厳しくも大らかな哲平さんのうつわは、今日もどこかで使う人の生きる力を励ましている。

1 薪マグカップ
薪窯で焼成される中で、自然灰が流れ、複雑な表情が生まれた。哲平さんのマグカップは常にリクエストが多い人気のうつわだ(6600円/W105×D75×H60㎜)
2 筒の酒器
炎の勢いが強かったのか、激しく変化し、存在感にあふれる。ショットグラスのように酒を楽しんでも、湯のみとして使っても◎(4400円/φ55×H55㎜) 3 薪めし碗
手に包むとわかるが、哲平さんのめし碗は温かく、そして強い。生き方を問われているように感じられるような作品(7700円/φ120×H60㎜)
4 薪めし碗
「一生のうちに、頼りになるめし碗を手に入れるべき」と祥見さんは言う。薪窯で焼かれたこのめし碗は、そのひとつに選びたい(7700円/φ120×60㎜)
5 櫛目片口
乾く前のうつわにつけられた櫛目の文様は、哲平さんのエネルギーそのもの。力強い魅力があふれる頼もしい片口(1万2100円/W140×D100×H90㎜)

「うつわ祥見」が選ぶ注目作家
1|小野象平 – 1
2|境 道一
3|荒川真吾
4|岩崎龍二
5|小野哲平
6|八田亨
7|尾形アツシ
8|山田隆太郎
9|芳賀龍一
10|田宮亜紀
11|鶴見宗次
12|小野象平 – 2
13|吉田直嗣

text=Akiko Takazawa photo=Yuko Ookoso select&relling=Tomoo Shoken
2020年4月号 特集「いまあらためて知りたいニッポンの美」


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