ISLAND BREWERY
<アイランドブルワリー>
長崎唯一のクラフトビールに老舗酒蔵が挑戦!
九州北方の玄界灘に浮かぶ小さな島、長崎県・壱岐島。麦焼酎発祥の地としても知られるこの地で130年以上の歴史をもつ老舗酒蔵が、地域活性化を目指してクラフトビール造りに挑戦。この春、長崎県唯一のクラフトビールブルワリー「ISLAND BREWERY」が誕生した。SDGsにも通ずる、地産地消にこだわったビール造りとその想いとは?
麦焼酎の世界から、
クラフトビール造りへ。
大陸から壱岐に麦焼酎の醸造技術が伝わったのは16世紀のこと。麦焼酎造りが盛んな地で、「原田酒造」は1887(明治20)年に創業。創業者の原田卯八郎は、勝本浦の発展に心を砕き、地域の公共事業のため身を尽くしていた。その後、代々焼酎や清酒造りに取り組み、時代によっては薬局を兼ねたり、アイスキャンディーなども販売。町の暮らしに欠かせない存在であった。
1984(昭和59)年には、当時島内にあった12の焼酎蔵のうち原田酒造を含む6社が協業化。原田酒造は単独の製造を止めて商品の販売のみを行うようになり、今日まで真摯に焼酎や清酒造りに励んできた。
そして2021年春、長い年月をかけて磨いてきた醸造技術や経験を生かしながら、地域活性化に繋がる方法を考えていた5代目・原田知征さんによって、130年以上の歴史ある酒蔵をリノベーション。クラフトビールの醸造所を立ち上げた。
つくりたてのビールを、
醸造所内のカウンター席で
築130年以上の造り酒屋を改装し、趣のある木造建築や看板はそのままに、タップルームを併設したクラフトビールの醸造所として生まれ変わった。カウンター席からはガラス越しに発酵タンクが見え、造りたてのビールを常時数種類味わえる。
また「地元で穫れる新鮮な海の幸、山の幸に合うクラフトビールを作りたい」という想いから始まった本ブルワリー。店内では、地元特産の新鮮な魚介類を使ったフィッシュ&チップスやイカリングなど、ビールと相性抜群のフードメニューも振る舞われ、食材とビールのどちらも新鮮な状態で楽しめるのも大きな魅力だ。
長崎はクラフトビールゆかりの地だった?
キリンビールの前進である「ジャパン・ブルワリー・カンパニー」は、長崎に邸宅を構えるトーマス・グラバー氏の呼びかけによって、1885(明治18)年に三菱グループ創設者の岩崎弥太郎氏ゆかりの人々が資金を出資して立ち上げられた。会社の初代社長はトーマス・グラバー氏、2代目は岩崎弥太郎氏の実弟である弥之助氏。その後、三菱グループは官営の長崎製鉄を足がかりに三菱重工を作りあげ、長崎に欠かせない企業となった。
そんな由来のある長崎だが、現在クラフトビールはなく、「ISLAND BREWERY」は長崎唯一のブルワリーとなった。
クラフトビールで島の活性化を!
壱岐島は、夏には青い海が広がるビーチ、冬には温泉が楽しめる観光地。代表の原田さんは、クラフトビールは地域活性化の中心コンテンツになる可能性を秘めていると語る。
「とりあえずビール! の日本において、クラフトビールが地産地消の商品になることは間違いないと思っています。醸造施設と試飲バーが、壱岐を訪れる観光客や地元の方に新たな訪れたい場所として認識されたら、寂れた商店街に人を呼び込む呼び水になる。後は地元の商店街のお店と協力して、壱岐産のジェラートや壱岐牛コロッケ、自分の好きなものを並べて作る海鮮丼などを商品開発し、ウキウキ食べ歩き出来る商店街が出現! という認知までもっていけたら、観光客がまた訪れたくなる町に生まれ変わることは間違いないと考えています」
最終目標は100%壱岐産の原料でつくる
"純壱岐"ビール!
「ビールの主原料である麦芽は、日本で作っているところがほとんどありません。恐らく理由は、麦芽を作るのに大量の熱を使うため、燃料費の高い日本では割に合わないのだと思います。そのため、最初は輸入品に頼らざるを得ませんが、ゆくゆくは地元の農家さんと協力して麦芽やホップづくりまで取り組みたい。そうすれば”本当の意味での地産地消”を実現することが出来ますし、町の数ヵ所にクラフトビールが飲めるタップルームを設置し、そのタップルームでしか飲めない種類を作れば、小さな醸造所ならではの機動力を発揮できるのではないかと考えています」
クラフトビールが町の中心かつ町の灯りとなり、小さな島である壱岐島、小さな島国である日本から世界を目指している。
ISLAND BREWERY
住所|長崎県壱岐市勝本町勝本浦249
Tel|0920-42-0010
Mail|ib@iki-island.co.jp
https://iki-island.co.jp
text=Discover Japan
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