TRADITION

五月五日は3つの意味がある日です。
端午の節句/子供の日/男の子の日

2021.4.27
五月五日は3つの意味がある日です。<br><small>端午の節句/子供の日/男の子の日</small>

「5月5日は何の日?」と訊かれたら、何と答えますか? 端午の節句、子供の日、男の子の日など、答えはいくつかに分かれそう。それというのも、実はこの日にはルーツの異なるいくつかの行事が重なっているのです。

くす玉の起源でもあった?
五節句のひとつとしての端午の節句

1月1日、3月3日、5月5日、7月7日、9月9日という五節句のひとつである端午の節句は、魔を払う行事のひとつです。春が終わり夏が本格化する前という、気候の変わり目には病気になりやすいことから、病気=魔を払うために設けられた。そのため、奈良時代や平安時代の端午の節句は、現代のような武者人形やこいのぼりではなく、薬として使われるもの、例えば鹿の角や菖蒲、よもぎなどを飾っていた。もともとは野山からとってきたそれらを、そのまま束ねて軒先につるすような簡素な飾り方だったが、時代が下るにつれて装飾化し、薫り高い草を絹の袋に入れて丸くしたものや、草を編んだかごのようなものに、花を挿して五色のひもを垂らす、薬玉が作られるようになった。これが現代の、おめでたい席で割られる薬玉のご先祖だ。

武家の男子を祝う行事に変化

時代が下り、武士の時代がやってくると、端午の節句に第二の意味が発生する。端午の節句に飾る菖蒲が、武勇を尊ぶ「尚武」という言葉と音が似ていることから、男児が元気に勇ましく成長することを願う日になっていくのだ。この意味が生まれたことで、鎧兜や武者人形などを飾るようになる。こいのぼりは戦場ではためかせる幟がもともとの形で、滝を登って龍になると言われる出世魚の鯉を一緒に飾るようになったのは、江戸時代の後期のこと。

ひと昔前には、新聞紙で折った兜かぶって棒などを腰に差した男の子が、チャンバラごっこをしている姿が、五月五日のよくある風景だった。もともと、菖蒲の葉を束ねたもので体を軽くたたき、魔を追い出す風習があったが、時代が下って庶民も端午の節句を祝うようになると、神聖な行事というより「菖蒲打ち」などと言われる、子どもの叩きあい遊びに変わっていった。これは男女問わずに楽しんだようだ。

実は若い乙女の行事でもあった!?

端午の節句とは関係なく、日本でももともとこの時期に身を清める行事が行われており、中国から五節句の考えがやってきて広まる過程で、ひとつにまとめられるようになった。この行事は稲作にとって大事な田植え前に、若い娘(早乙女)たちが仮小屋(そのために建てられる臨時づくりの建物)などにこもり、身を清めて過ごす、田の神に対する厄払い。時代が下るにつれてだんだん変化し、女性が仕事を休んでいい日、男性が女性の世話をする日という風になっていった。

つまり武家の時代に男児の祝いという意味が生まれるが、実は若い女性の日という意味のほうが、ずっと歴史が古いのだ。

粽や柏餅は自家製を配るもの

5月5日に食べるものと言えば、粽(ちまき)と柏餅。中国の故事に、讒訴されて自分の国を思う気持ちが踏みにじられたことを悲しんで、入水自殺をした屈原という人が、自分の命日に竹筒に入れた米を投げ入れてくれる人に「竹筒だと水に住む龍に米をとられてしまうから、茅の葉(魔が嫌うとされる)で包んでほしい」と言ったという伝説が、粽のもとになっている。茅ではなく葦の茎の串に新粉をつけて菰でくるんだり、串を使わずに笹の葉で包んだりしたものを蒸す。現代では砂糖入りのものが多く作られるが、昔は砂糖なしが普通だった。

柏餅は米の粉を練って、砂糖入りの餡をはさんだものを柏の葉に包んで蒸した。江戸時代には、江戸では柏餅を作るが上方(関西、主に京都)ではあまり見ない、と書かれた本もあるが、江戸も後期になると上方でも柏餅を作るようになっていく。柏の葉は、葉が落ちるときには新しい葉が出るため、途切れずに続く、子孫繁栄を象徴する木だ。

江戸時代の風習を覚え書きした、明治生まれの画家で研究者の三谷一馬によると、男の子が生まれたら、江戸ではその年から毎年柏餅を、上方では最初の年は粽、次の年から柏餅を、知人や親類に配ったそう。

菖蒲は、飾って浸かって飲んでよし

菖蒲の葉を軒につるして魔を払うのはごく古い風習だが、そのほかにも菖蒲の葉をお風呂の湯に入れる「菖蒲湯」や、菖蒲の根を浸しておいた「菖蒲酒」といった、ほかの形で菖蒲の魔除けを体に入れる風習もある。実際、菖蒲の根は漢方薬の一種で血行促進や疲労回復作用があるとされており、葉や茎のいい香りをかぐことにもリラックス効果が期待できる。

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ライタープロフィール
湊屋一子(みなとや・いちこ)
大概カイケツ Bricoleur。あえて専門を持たず、ジャンルをまたいで仕事をする執筆者。趣味が高じた落語戯作者であり、江戸庶民文化には特に詳しい。「知らない」とめったに言わない、横町のご隠居的キャラクター。

参考資料=「日本の行事」と「しあわせ」の関係 日本のくらし「基本のき」(メディアパル)、暮らしのならわし十二か月(飛鳥新社)、おうち歳時記(朝日新聞出版)、江戸年中行事図聚(三谷一馬 中公文庫)、日本を知る小事典4信仰、年中行事(教養文庫)

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