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年末も大忙し!正月の準備とその意味とは?
お正月の基本

2020.12.27
年末も大忙し!正月の準備とその意味とは?<br><small>お正月の基本</small>

大掃除やおせちづくり、お正月を迎えるための準備はいろいろありますが、なぜやるのかは実はよく知らない、という人も多いのではないでしょうか? 今回は、お正月を迎える前の準備についてご紹介します。

お話をうかがった方
神崎宣武
(かんざき・のりたけ)
1944年生まれ。旅の文化研究所所長。民俗学者にして岡山県宇佐八幡神社宮司。『しきたりの日本文化』、『「まつり」の食文化』ほか著書多数

お正月の準備

正月とは、厄災を払い幸福をもたらす歳神様を迎える行事期間。現代では一般的な仕事納めの12月28日から1月7日ぐらいまでをお正月と考えるが、昔は12月13日の煤払い(大掃除)からはじまり、明けて1月15日の小正月までが、「月」の字が示す通り1ヵ月にわたる「正月」だったのだ。だが、しきたりには地域差がある上、時代とともに合理化されてきているため、日本全国共通の「こうあらねばならぬ」、「これが正式」という正月のかたちを決めることはできない。特に正月飾りなどは、デザインが進化するに伴い、もとの意味さえ失いつつあるものもある。

こうした変化は必然といえば必然だが、あまりに本来の意味からかけ離れてしまわないために、はじまりを知っておくことが大切だ。ルーツを知った上で取捨選択し、我が家のお正月スタイルをつくりたいもの。では「なぜ正月にはそれが必要なのか」その本来の意味とルーツを説明しよう。

煤払い

正月のはじまりは、まずここから。歳神様をお迎えするにあたり、一年の煤や埃をはらい清めるのが煤払い(大掃除)だ。江戸時代は12月13日は街中どこへ行っても煤払いをしているため、労働力にならないご隠居たちが邪魔だと家を追い出され、行くあてもなく街をふらつく様子が川柳などに残されている。この風習は現代でも廃れることなく続いており、年末になると多くの家が窓を開け放ち、上を下への大騒ぎで家中の掃除をする。特に台所(火の神が宿る竈がある、命をつくる食べ物を扱う)や水回り(水も命の源)はきれいにしたい。

正月飾りの準備

煤払いがすめば、正月飾りの準備に入る。門松については次ページで詳しく述べるが、歳神様に降りていただくために門松を入り口に飾り、室内には鏡餅を飾る。床の間に花を生けるのも、歳神様をお迎えする部屋を美しくしつらえるため。飾る花は、生命力を感じさせる青々とした葉や、長く美しさを保つ花がふさわしいとされる。また地域によっては床の間や土間、竈に米俵を置いて、その上に松を載せる「拝み松」や、歳神様がやってくるとされる恵方に向けて、台所や居間に棚をつりお供え物を置く「年棚」などをつくる。

餅つき

餅つきは、正月の、それも歳神様がやってくる大晦日の夜の前にやっておくのが、本来の順序。餅をつくのは鏡餅をつくるためで、鏡餅は家の中にお入りになった歳神様の依り代となる。古くから米粒には神が宿ると考えられ、その米粒を凝縮したお餅や酒は、その神聖な力がこもったありがたい食べ物だったのだ。また鏡も古来神霊が依りつくものとされており、鏡に模した餅はまさに歳神様の依り代に最適なのだ。正月明けに餅つきをする家もあるようだが、本来の意味からいうとちょっと遅い。

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門松はそもそも何のため?

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text:Ichiko Minatoya illustation:Miho Nakamura
Special thanks:Noritake Kanzaki

Discover Japan 2012年12月号「冬の味覚でおもてなし」

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