TRADITION

お花見を、昔の日本ではどう楽しんでいた?
お花見の基礎知識

2021.3.19
お花見を、昔の日本ではどう楽しんでいた?<br>お花見の基礎知識

一年にいろいろな楽しみはあれど、花見ほど、長く愛されてきたイベントもないでしょう。開花予想を横目に、花見をいつやるか、何を着ていくか、どんな器でどんなものを食べるか、etc…とこのワクワクは昔の人も同じでした。

なぜ花と言えば桜を指すようになったのか?

春の訪れを告げる花は、古くは梅が歌に詠まれてきた。ちなみに梅は中国から運ばれた植物で、かぐわしい香りとともに春を告げる異国の花に宮廷人たちは夢中になり、多くの歌を残している。「令和」という元号のもとになった、万葉集の大五巻「梅の花の歌」の序文でも、梅が大いに讃えられている。ただし、外来種ということからもわかるように、この時代に梅を楽しめたのはごく一部の特権階級のみで、庶民はせいぜい貴族が所有する館から流れてくる、梅の香りをかいでいた程度だったのだろう。

桜の人気が爆発的に高まるのは平安時代。万葉集では100首以上梅の歌が詠まれているのに対し、桜は50首以下だったのが、平安初期に編纂された古今和歌集では梅が20首以下になり、桜は70首以上へと逆転現象が起きた。歌を詠むために、花見の宴も催されるようになる。桜の歌は盛りの美しさを詠むだけでなく、すぐに散ってしまうはかなさに思いを託す歌が多いのも特徴の一つだ。

花より宴?!着ていくものや持ち物にも気を配っていました!

平安時代以降、花見は身分の上下を問わず、春の大きな楽しみとして愛されるようになっていった。江戸時代初期の「吉野花見図屏風」などの絵画にもみられるように、そぞろ歩いて桜を楽しむ人々の姿は、喜びに満ちている。

屋外で飲食するための、手提げの弁当箱や酒器なども生まれ、工芸の発達にも花見が一役買ったといってもいいだろう。江戸初期は、木の枝と枝に綱を張り、そこに小袖をかけて周囲の視線を遮って花見をする裕福な女性たちがおり、その小袖を見るのも、花見の楽しみの一つだった。わざわざこの花見のためだけに、その年の桜に合わせて小袖をあつらえることも珍しくなかったそう。

作られた花見スポット

飛鳥山公園

江戸時代には、庶民の一大娯楽として横綱の地位を占め、もともと桜が咲いている場所を訪ねるだけでなく、わざわざ桜を見るための場所も作られるようになる。

例えば東京都北区にある飛鳥山公園。ここは八代将軍吉宗が、江戸庶民が好きなように花見を楽しめるように整備したお花見スポット。もともと江戸では上野寛永寺のお花見が人気だったが、ここは徳川将軍家の菩提寺であり、山同心という役人が六尺棒をもって見回って、歌舞音曲や酔っぱらいを厳しく取り締まっていた。緊縮財政で、色々な贅沢を禁じた吉宗だが、ただ楽しみを取り上げる一方ではなく、もっと庶民が無礼講にお花見を楽しめる場所をということで、当時ひなびた場所だった飛鳥山に桜の木を植えたのだ。江戸市中からはやや遠く、半日がかりのピクニックになるため、大混雑する花見スポットではなかったが、それだけにゆっくりと桜が楽しめる名所として、人々に愛された。

夜桜の見物は男の楽しみだった?

現在でも隅田川沿いの桜並木は、花見客でごった返すが、江戸時代ももちろんここの桜は大人気。とくに夜桜には男性客が行き交った。というのも、お目当ては浅草田んぼの先にある不夜城・吉原。吉原は桜の季節になると、中央の「仲ノ町通」に満開の桜を移植して、華やかに春の夜を盛り上げた。

また江戸四宿の一つ、品川も桜の名所が多くあったところ。こちらも歓楽街だったため、男性客に人気の花見スポットだった。品川周辺は寺が多く、老親や女房を寺参りに連れて行ってやろうと一緒に花見に出かけて、花見が済んだらさっさと家族だけ帰らせる男性も多くいたようだ。

お花見を楽しむ様子は落語にも!

庶民がどのように花見を楽しんでいたかは、落語にその姿を見ることができます。花見をモチーフにした話は「花見酒」「長屋の花見」「花見の仇討」「百年目」「花見小僧」など、数多くあり、貧乏でお酒も弁当も用意できないけれど、誘い合って花見に行く「長屋の花見」、真面目一方に見せかけている大店の番頭がこっそり贅沢な花見に行く「百年目」、桜に浮かれる人々のウキウキした様子は、現代人と変わるところがありません。

自宅でのお花見にも!今年のお花見を盛り上げるアイテム

お部屋を彩る、優美なフラワーベース

「Sghr スガハラ」のヴァンフラワーベース ワインレッド(2万2000円)

1932年創業、手仕事でガラス製品をつくり続ける「Sghr スガハラ」の春らしいワインレッドの花器。美しい色とフォルムは桜の枝にもよく似合い、おうちでの花見を盛り立ててくれる。
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春のスイーツを並べたい
華やかな桜色プレート

青木良太 ボナペティ5プレート 桜(2200円)

年間1万5000種に及ぶ釉薬研究をもとにつくられる陶芸家・青木良太さんのうつわ。青木さんの世界観とともにお花見を楽しめば、桜の新たな魅力が見つかるかも?
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生き生きとした土の表情を映すぐい吞み

尾形アツシ 刷毛目筒ぐい呑(4400円)

奈良県宇陀市の工房で土と向き合う陶芸家の尾形アツシさんによるぐい呑み。表面に見え隠れする土の質感は日本特有のもの。桜とともに眺めれば日本のよさを実感できる。
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桜を見ながら祈りを捧げる
香り高い大吟醸の「アマビエさま」

出羽桜 大吟醸酒 アマビエさま(720ml/1540円)

Discover Japan 2020年6月号の表紙を飾った日本で一番可愛らしいと評判の「アマビエさま」が描かれた大吟醸。平穏な日々への願いを込め、地元の天童で疫病退散のご祈祷を行った祈願酒は、今年のお花見に最適だ。
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ライタープロフィール
湊屋一子(みなとや・いちこ)
大概カイケツ Bricoleur。あえて専門を持たず、ジャンルをまたいで仕事をする執筆者。趣味が高じた落語戯作者であり、江戸庶民文化には特に詳しい。「知らない」とめったに言わない、横町のご隠居的キャラクター。

参考資料=江戸名所花暦(岡山鳥 八坂書房)/図説浮世絵に見る江戸吉原(藤原千恵子、佐藤要人監修 河出書房新社)/鳶魚江戸文庫5 娯楽の江戸 江戸の食生活(三田村鳶魚 中公文庫)/風俗江戸物語(岡本綺堂 河出文庫)/江戸娯楽誌(興津要 講談社学術文庫)


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