さぬきうどんの店《わら家》
暮らしをつなぐ、四国村ミウゼアムのルーツ
|アート県かがわの源流へ②

美しい茅葺きに抱かれる、さぬきうどんの店「わら家」。1975(昭和50)年に徳島県西祖谷山村から移された古民家で、屋島のふもとの約5万㎡に古建築が集う「四国村」開村の端緒となった一軒だ。
line
トラック運転手たちの
第二の職場が開村の発端

四国村のルーツ「わら家」は、1975(昭和50)年に誕生。そのきっかけは、四国村の創立者、故・加藤達雄のひらめきにあった。当時、運送業を営んでいた加藤は、負傷したり体力が衰えた社員でも働ける場をつくろうと考え、「香川は讃岐うどんの本場。うどん店ならできるだろう!」と思いついた。

はじめは屋島のふもとにもっていた土地に民芸調の店を建てようと考えていたが、折悪しく椎間板ヘルニアを患って入院。その入院生活中に「いっそ本物の茅葺きの民家を移築すればいいのでは」とひらめいた。そこで退院後、香川や徳島の山村をあちこち回って空き家を探し、やっと徳島県西祖谷山村で見つけたのが江戸末期築の民家。移築し、屋根の茅は岡山から職人を呼び、新たに葺き替えた。

わら家と名づけた店では、瀬戸内のいりこと昆布で丁寧に取った出汁に、強いこしのあるうどんをゆでたてで供する。いまや、毎朝9時半の開店直後からお客が絶えない人気店だ。

香川県綾歌郡の明治初期築の古民家と合わせ、現在は2棟をつなげて営む。2022年のリニューアルで新たに瓦の庇を加えたが、茅葺きと瓦のコンビは四国の民家にポピュラーな様式だそうだ。
line


わら家
住所|香川県高松市屋島中町91
Tel|087-843-3115
営業時間|9:30〜17:30(L.O.17:00)
定休日|なし
https://www.wara-ya.co.jp/
≫次の記事を読む
01|四国村ミウゼアムとは?
02|さぬきうどんの店《わら家》
03|エントランス棟《おやねさん》
04|香川の産業と暮らしを支えた《砂糖しめ小屋》 前編
05|香川の産業と暮らしを支えた《砂糖しめ小屋》 後編
06|《画家・猪熊弦一郎》がエールを贈った芸術村
07|《彫刻家・流政之》が創造した村の音
08|《建築家・安藤忠雄》光と水のギャラリー
text: Kaori Nagano photo: Hiromasa Otsuka
2024年7月号増刊「香川」