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十二支は万物の動きを司る!?
「干支」の基礎知識

2021.12.26
十二支は万物の動きを司る!?<br>「干支」の基礎知識

毎年年末になると、来年の干支の動物をかたどった置物が売り出されます。自分の生まれ年の干支の動物を、ラッキーアイテムと考える人も少なくありません。昔は年だけでなく月や日、時間にも干支が用いられていました。それもそのはず、昔の人は天体の動きから人間関係まで、この世のすべてのものに干支が関係あると考えていたからです。

十二支とは「十干」「十二支」の略

現代も使われている十二支というのは、十二種類の動物を象徴とするものだが、古くは十干と十二支という二つのものがあり、その組み合わせで年月日や時刻を表していた。十干というのは「甲」「乙」「丙」「丁」「戊」「己」「庚」「辛」「壬」「癸」。これは古代中国の暦法で順序や番号を表すもの。日本でも昔は「1、2、3」だけでなく「甲、乙、丙」は一般的に数を数えるのに用いられており、現代でも法律の分野などで複数いる関係者やものを区別するのに、「物件甲が」といった具合に十干が用いられている。

そして十二支だが、こちらは本来動物ではなく、季節に従って植物が変化していく様子をあらわす12段階で、「滋」「紐」「演」「茂」「伸」「巳」「仵」「味」「身」「老」「脱」「核」がもとになっている。これがのちに音や韻によって動物の名前に変わっていき、それが現代にも伝わるネズミや牛、トラたちが並ぶ十二支になった。

もともと暦というのは、農耕を営む上で欠かせないものであり、そこに植物が育つさまが反映されるのは非常によくわかる。植物の成長は人々の命を左右する大事なもの。季節の移り変わりとともに天体が変化することに気づいた人々は、天体観測をしてその動きを把握し、農耕に役立てようとしたのだ。

さらに元をたどると現れる陰陽五行説

十干十二支をまとめて干支という。これは紀元前13~14世紀に中国で生まれたもので、相当古い。しかしさらにそのもとをさかのぼると、万物の起源を「木」「火」「土」「金」「水」という5つの元素にあるとする五行説にたどり着く。こうした思想、あるいは土着信仰は中国に限ったものではなく、世界各地にある。それはやはり昔の人にとって最も関心が深い、食べ物を育てる農耕、作物の出来を大きく左右する自然を崇拝する心から生まれたものだ。

この五行説に、万物は天と地の間にある陰と陽の気の働きによって生成するという陰陽説が加わって、5元素と陰陽の関係性でこの世のすべてのものが説明されるという「陰陽五行説」が誕生した。日本の季節ごとの行事の多くも、この陰陽五行説から生まれた中国の行事がもとになり、日本の土着の信仰や風習と結びついて民間に広まったものが多い。干支は奈良時代よりも前に日本に持ち込まれていたらしく、正倉院行物の中に「十二支刻彫石板」という、干支の動物が刻まれた石刻絵がある。ちなみに中国から来た陰陽五行説に、日本で修験道や土着信仰などがミックスされて生まれたのが陰陽道だ。

干支は性格や病気まで影響する?

少子高齢化の日本だが、かつてはベビーブームが何回かあり、現在50歳前後の人々は学生のころ教室はすし詰め、都市部の公立校では一学年10クラスというのも珍しくなかった。その中で、エアポケットのように子どもの数が少ない年があった。それは1966年、干支は午年。この午年は十干の丙にあたる午年で、これを丙午という。なぜ丙午に出生数が減ったかというと、丙午に生まれた女性は夫の運を食い殺すという俗信があり、そのために男か女か産み分けられない以上、この年に子供を産むのはやめたいと考える人が、当時まだ多くいたということだ。

なぜそのような俗信があるかというと、丙午は星のめぐりから見てとてもエネルギーが強いとされていたため。この年に生まれた女性は気が強くて夫を圧倒する、また夫より活躍して夫の運を食ってしまうと考えられた。
十干十二支はその組み合わせで天体の動き、年月日、時間の動きを表すだけでなく、万物に関係があるという考えから、こうした人の性格や生き方まで十干十二支で決まっているとされる。これは星座占いをはじめとする様々な占いにも通じている。

十干十二支のもとになっている五行説では、さまざまな分野の重要なものを5つ挙げ、それらと「木」「火」など5つの要素に結び付けている。そこには内臓や味覚などもあり、それが生まれた日の十干十二支とも紐づいて、「●〇生まれの人は肺の病気に気を付けるように」といった生活上の注意点にもなっていた。

十二支によって「あなたは午年だから行動的」「丑年の人は忍耐強い」という風に、性格まで関係しているように考える人は少なくなりましたが、昔の人は星のめぐり、つまり干支がその人の運命を決めていると信じていました。現代の人は、運命は自分で切り開くものと考えています。占いは信じるものではなく活用するものだといいます。年の初めのおみくじも、ふと迷ったときに見た占いも、いいところを信じ、悪いところは用心していれば、日々の生活がよりよくなるはず。ちなみに寅年は勇気と冒険心の年だとか。来年はどんな冒険の年になるか、楽しみですね。

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ライタープロフィール
湊屋一子(みなとや・いちこ)
大概カイケツ Bricoleur。あえて専門を持たず、ジャンルをまたいで仕事をする執筆者。趣味が高じた落語戯作者であり、江戸庶民文化には特に詳しい。「知らない」とめったに言わない、横町のご隠居的キャラクター。

参考文献=日本人にとって干支とは何か(河出書房新社)/干支と十二獣(北隆館)/干支の動物誌(技報堂出版)

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