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万葉集はツイッター⁉
いまこそ知りたい万葉集の魅力

2019.5.14
万葉集はツイッター⁉</br>いまこそ知りたい万葉集の魅力
平安時代に書き写された『万葉集』の一部 を掛け物にしたもの。もとは冊子だったと 推定される。一首の短歌を漢字の本文、平 仮名の訓をそれぞれ二行に書いている
『万葉集』元暦校本断簡 平安時代後期書写 (國學院大學図書館蔵)

現代人がふとしたことをツイートするように、昔の人は思ったことを歌に詠んでいた。新元号「令和」の出典として話題の、日本最古の歌集『万葉集』の魅力とは?

【監修】
渡邉 卓さん
(わたなべ・たかし)
國學院大學研究開発推進機構准教授。博士(文学)。同大学文学部兼任講師などを経て現職。専門は日本上代文学、国学が専門で、古事記学会理事、上代文学会理事を務める。

文:湊屋一子
※この記事は2019年5月7日に発売したDiscover Japan6月号特集『天皇と元号から日本再入門』の記事を一部抜粋して掲載しています。

天皇から名もなき庶民まで、
幅広い作者の歌を収録!

万葉集とは、大まかに説明すると20巻約4500首を収めた我が国最古の歌集である。編纂(へんさん)がはじまった時期ははっきりせず、また成立も759年以後としかわかっていない。主な編纂者は大伴家持(おおとものやかもち)といわれているが、彼一人ではなく複数の人がかかわっていると思われる。

蒐集された歌のうち、時代が後半になると編纂者の大伴家持のようなプロ歌人の作品が多くなるが、万葉集以降に編纂された古今和歌集や新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)との大きな違いは、天皇や皇族、貴族や官人など、ある程度身分や教養を備えているとおぼしき階級だけでなく、名もなき庶民の歌が多く蒐集されている点だろう。
歌の内容は大きく分けて「雑歌(ぞうか)」、「相聞歌(そうもんか)」、「挽歌(ばんか)」の3つ。テーマとなっているのは神や自然の偉大さ、家族や男女の愛情、亡くした人への思いをうたったものが圧倒的多数だ。
前述の庶民の歌でよく知られているのが、外敵の侵入を防ぐために単身赴任で九州防衛にあたった兵士たちの、故郷や家族、恋人を思う「防人(さきもり)の歌」だろう。こうした庶民の歌をはじめ、全体に通じる素朴でおおらかな歌風は「万葉調」、「ますらをぶり」などと称されて、古今和歌集など後の歌に大きな影響を与えた。

いまの気持ちを言葉にした、〝つぶやき〞こそが万葉集!

また歌の形式も特徴的だ。現代の和歌は五七五七七の短歌を基本とするが、万葉集ではまだかたちは定まっていない。その多くは短歌だが、長さや形式もさまざまな歌が蒐集されており、日本の和歌のかたちをとらない、漢詩文も数編ある。

万葉集以降の歌人たちは万葉集の歌を研究し、その表現から多くを学んでいる。編纂当時の万葉集はいまのところ見つかっていないが、後の時代の人々が手書きで写したものは残っており、それらが非常に貴重かつ欲しがられたものであることがよくわかる。

万葉集は決して歌の〝プロ〞だけに向けられた本ではない。その内容は雄大な景色に感動したこと、美しい人を見て胸が熱くなったこと、死んでしまった家族への慟哭(どうこく)、一人旅立つ心細さなど、時代を超えて共感を呼ぶものばかり。
そうした気持ちを言葉の技巧を凝らさずに、素直に詠んだ歌が多く、だからこそいつの時代も人々の心をとらえてきた。

いままた令和の時代にあっても、気持ちは同じではないだろうか。「旅の感動を伝えたい」、「昨日恋人とけんかをした、そのモヤモヤを伝えたい……」SNSは、まさに現代の万葉集? 現代人にとっても身近な歌集といってよいだろう。

実際に万葉集を見にいこう!

古代から近代に至るまでの日本の歌書を通じて、和歌の魅力を再発見する展覧会。感性豊かに描き出される歌の世界を鑑賞するとともに、書体の流麗さや装丁の優雅さからも感じ取れる、人々が和歌に込めた思いを紹介する。

企画展「和歌万華鏡―万葉集から折口信夫まで―」
会期:~6月23日(日)
会場:國學院大學博物館 企画展示室
住所:東京都渋谷区東4-10-28
時間:10:00~18:00(入館は~17:30)
休館日:5月27日
料金:無料
Tel:03-5466-0359
http://museum.kokugakuin.ac.jp

万葉集についてもっと詳しく紹介!
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