TRADITION

ひな人形に白酒、菱餅……
ひな祭りって何のお祝い?

2021.2.23
ひな人形に白酒、菱餅……<br>ひな祭りって何のお祝い?

♪明かりをつけましょぼんぼりに~で始まる、ひな祭りの歌。昨今はそれぞれの家庭で飾る雛人形は小型化、簡略化の傾向にありますが、一昔前は一部屋まるごと使うほどのひな飾りが大流行。ひな祭りの形にも変遷があるのです。

ひな祭りのルーツは厄払い

ひな祭りは弥生の節供であり、二月の節分と同じく季節の変わり目の行事です。二月の節分は立春とはいえまだ寒い時期ですが、ひな祭りのころはいよいよ気候も春めいてきて、寒さを脱する時期。この時期に苦みの強い野草などが出てくるのは、血のめぐり、気のめぐりが悪い冬に体にたまった悪いものを、体外に排出するための自然の食サイクルともいわれています。

昔の人は、病気になるのは体に魔が取り付くためと考えていたので、季節の変わり目ごとにそうした恐ろしいもの、穢れを払うように心がけていました。ひな祭り、弥生の節供も同じで、人の形に切った紙(紙人形)で体を撫でて、自分の体にたまった穢れを紙に移し、川に流すなどして清めるというのが、ひな祭りの原型です。

上流階級から始まった人形飾り

ひなというのは小さいものにつけられる言葉で、小さな人の形をしたもの=ひな人形(小さな人の形をしたもの)です。これが単なる紙を切っただけのものからだんだんと装飾化されて豪華になり、そうなると流すのはもったいないので飾るという方向に。本来の魔を払う目的を離れて、ひな祭りは人形を飾るスタイルになりました。贅沢な人形を持つことができる上流階級の人々が始め、だんだんとそれが庶民へと伝わってきたのです。その際に、人形=女児の遊びということから、立派な男性と結婚してたくさんの贅沢な道具や家来にかしずかれる貴族のお姫様を模し、女児の幸福な将来を願う祭りという意味にとってかわられていきました。

白酒を飲んで健康増進

ひな人形につきものの白酒と菱餅に、本来の厄除けの意味が残っています。白酒はひな祭りのために作られるものではなく、春先によく作られたことからひな祭りに供されるものになりました。江戸時代、白酒売り出しの時期には、その日に発売される分の整理券が配られて、行列を管理する警備員、救護所まで用意されるほど人気だった店もあります。もともと弥生の節供に飲むのは白酒に限らず、酒に桃の花を浸しておいたものをみんなで飲んでいましたが、江戸時代にはひな祭りには白酒が一般的になっています。ちなみに桃は不老長寿の象徴であり、縁起の良いものです。お酒を飲むと体が温まり、顔色がよくなるのは、健康増進の証と考えられていました。

菱餅は子孫繁栄のおまじない

白とピンクと緑のお餅を重ねる菱餅は、白=穢れのない清浄さ、ピンク(赤)=血色すなわち生命力、緑=繁殖力の強いよもぎの、トリプルパワーを集めた縁起物です。しかし江戸時代の書物には、必ずしもひし形で三色の餅ではなく、母子草(春の七草のひとつ、ゴギョウ)を使った餅や、母子草そのものをひなに供えたという記録もあります。ちなみにこの母子草は、咳の薬として使われており、病を鎮めるものを体に取り込むという、厄払いの意味が強くあらわれています。

手軽に飾れる!
丹後ちりめんで作った折紙のひな人形

約1300年以上前から京都府京丹後地方に伝わる絹織物である丹後ちりめんを使った、可愛らしい折り紙のひな人形「ORIBINA」がDiscover Japan Lab.店頭と公式オンラインショップにて期間限定販売中! 手掛けるのは“あそびのデザイン”をテーマに活動するデザイン・ユニット「COCHAE」です。

丹後ちりめん折り紙 ORIBINA
価格|1000円(税別)
≫ご購入はこちら

ライタープロフィール
湊屋一子(みなとや・いちこ)
大概カイケツ Bricoleur。あえて専門を持たず、ジャンルをまたいで仕事をする執筆者。趣味が高じた落語戯作者であり、江戸庶民文化には特に詳しい。「知らない」とめったに言わない、横町のご隠居的キャラクター。

参考資料=近世風俗志―守貞漫稿(喜田川守貞・岩波文庫)、俳諧歳時記(滝沢馬琴)、旬の日本文化(神崎宜武・角川ソフィア文庫)、江戸食べ物誌(興津要・旺文社文庫)

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