TRADITION

お中元の時期と基礎知識
ルーツは神様のバースデー祝い!?

2021.6.2
お中元の時期と基礎知識<br>ルーツは神様のバースデー祝い!?

親や親戚、日頃世話になっている上司や取引先に贈り贈られるお中元。6月になると、さて何を贈ろうかと、デパートを訪れたりカタログやネットで調べ出す人も多いでしょう。しかし、そもそもこの時期になぜ、世話になった人に贈り物をすることになっているのでしょうか? 今回は「お中元」の基礎知識を紹介します。

実は上元、下元もある

お「中」元というからには、その前後に何かありそう…と思ったら、やっぱりあった! 中元の起源は中国の道教にまつわる行事で、上元・中元・下元と3つあり、それぞれが天・地・水をつかさどる神様の誕生日だったのだ。1月15日の上元は天官大帝、7月15日の中元は地官大帝、10月15日の下元は水官大帝の誕生日。中元の地官大帝は理非曲直を正し、罪を償う人を赦してくれる神様とされており、その神様の誕生日に贈り物をするのは、日ごろ自分が犯した罪を詫び、バチが当たらないように祈るためだ。こうした贖罪の気持ちを表す一つの形が、自分が持っている福を人に分ける、周囲の人に贈り物をするという風になっていった。

道教と仏教の風習がミックスされて中元が残る

日本では、中元である7月15日のころはお盆でもあり、故郷に帰省する人も多い。その時に手みやげを持って帰ることが多いが、昔の人も同じように、お盆の時には先祖に供え物をすることから、転じて最も身近な祖先ともいうべき親に贈り物をするという風習があった。これに道教由来の中元が結びつき、意味が拡大解釈されていく。結婚の際親代わりになってくれる仲人、その仲人は会社の上司であることが多いため、仲人でなくても世話になっている上司、さらには取引先へと、お中元を贈る相手の範囲は広がっていったのだ。

お上に取り入れられた農村の風習

また日本の農村の風習で「田の実の祝い」などと呼ばれる、8月1日に主従の間や婚家・実家の間で収穫物を贈りあう風習もあり、これもお中元が長く続く風習となるのに一役買っている。鎌倉時代以降、この風習は農民だけでなく武士も取り入れるようになり、幕府から朝廷への献上品や諸藩から幕府への進物を取り仕切る、専門の奉行職も生まれた。道教の風習に日本の風習がまじりあうことで、上元、下元は消えてしまっても、中元だけはしっかりと残っていく。

お供え物から始まったがゆえの贈り物

そうめんやうどん、菓子、果物、昨今では調理の手間を省くレトルト食品やちょっと贅沢な調味料なども登場しているお中元の贈り物。菓子や果物は、まさにお盆のお供え物からの発想だろう。

そうめんやうどんも、一説によるとお供え物にルーツがあるという。奈良時代、東大寺周辺では春から秋は米、秋から春は小麦が供えられており、そのもとになっているのは中国で仏に小麦製品を供える風習だった。現地ではゴマ油などで揚げた小麦製品を供えていたが、油があまりとれない日本では、細長く伸ばすそうめんやうどんという形で小麦製品が進化していったという。さらにはその細長い形から、寿命を延ばすといった縁起を担ぐようにもなり、まさに目上の人への贈り物にうってつけとなっていったのだ。

時期も形式ばらない新しいお中元のかたち

ちなみに現代のお中元の時期は、梅雨が明ける7月初旬から7月15日(地方によっては旧暦の7月初旬から7月15日にあたる8月中旬)までに届くように送るのがマナーとされている。それ以降は暑中見舞い、立秋を過ぎたら残暑見舞いとなる。最近はお世話になった目上の人に贈ることが少なくなった分、親しい友人や日頃気になっていてもなかなか連絡の取れない人へのあいさつ代わりに贈るという人も増えているとか。お中元の意味がさらに拡大解釈される新時代に入っているのかもしれない。

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ライタープロフィール
湊屋一子(みなとや・いちこ)
大概カイケツ Bricoleur。あえて専門を持たず、ジャンルをまたいで仕事をする執筆者。趣味が高じた落語戯作者であり、江戸庶民文化には特に詳しい。「知らない」とめったに言わない、横町のご隠居的キャラクター。

参考資料=年中行事読本―日本の四季を愉しむ歳時ごよみ(創元社)/日本のしきたり冠婚葬祭・年中行事のなぜ?(ダイヤモンド社)/知れば納得!暮らしを楽しむ12ヶ月のしきたり(PHP)
日本を楽しむ年中行事(かんき出版)/日本料理と天皇(枻出版社)

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