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女優・柴咲コウが訪ねる、日本の美のルーツ
梅と日本人

2021.2.12 PR
女優・柴咲コウが訪ねる、日本の美のルーツ<br>梅と日本人

春の訪れを、香りとともにいち早く知らせる美しい花である梅。日本人の感性を育んできた美に思いを馳せながら、女優・柴咲コウさんが梅の名所が多い三重を巡りました。

柴咲コウ(しばさき・こう)
女優・アーティスト。2017年NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』、2020年TVドラマ『35歳の少女』で主役を演じる。2016年、レトロワグラースを設立。美しく生きるをテーマに発信するYouTube「レトロワチャンネル」も好評

古来、日本人にとって
春の花といえば梅だった

鈴鹿の森庭園でいち早く大輪の花を咲かせる呉服枝垂(くれはしだれ)。しだれ梅は、支柱を立てて上に枝を伸ばし、形よく剪定してこそ美しい姿を保つ。日本最古とされる2本の古木には「天の龍(写真)」「地の龍」と名がつけられ、しめ縄が巻かれている

梅酒や梅干しづくりなど、毎年ひと通りの梅仕事を楽しんでいるという柴咲コウさん。豪華な洋花もいいけれど、歳を重ねるにつれて梅の清楚な佇まいや奥ゆかしさに惹かれるようになったと言う。着物や掛け軸に梅が描かれていることにも意識が向くように。

梅は1500年ほど前に、青梅を薫製、乾燥させた「烏梅(うばい)」が中国から伝来したといわれている。平安時代には梅干しが薬用として珍重され、戦国時代は武士たちの携行食に。一方、梅の花も古くから人々の心をとらえてきた。万葉集で梅を詠んだ歌は萩に次いで多く120首ほど。桜は40首ほどに過ぎない。冬の寒さに耐え、桜や桃に先駆けて美しい花を開き、馥郁(ふくいく)たる香りを漂わせる梅がいかに愛されていたかがわかる。
「春の夜の 闇はあやなし 梅の花 色こそ見えね 香やは隠るる」(春の夜の闇は無意味だ。梅の花の色が見えなくなるが、その素晴らしい香りだけは隠れようもない)。『古今和歌集』に詠まれたこの歌から「とらや」の羊羹「夜の梅」が生まれたのは江戸時代のこと。歌川広重は、江戸・亀戸天神近くの梅の名所で、龍が臥せた姿の「臥龍梅(がりゅうばい)」を描いた(『名所江戸百景 亀戸梅屋舗』。後にゴッホが油絵に模写したことでも知られる)。ほかにも、梅は家紋や着物や陶磁器のデザインとなり、日本人の美意識に寄り添ってきた。

ところで、三重には「鈴鹿の森庭園」、「いなべ市梅林公園」をはじめ梅の名所が数多いのだが、三重と梅との関係には菅原道真の飛梅伝説がからむというからおもしろい。菅原道真が大宰府に左遷される日。紅梅殿の梅に、「東風(こち)吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春なわすれそ」と詠い掛けた。「春の風に託して大宰府まで香りを送ってほしい、自分はいないが咲く春を忘れるな」と詠う主人を慕った梅は、一夜のうちに道真のもとへ飛んで来たという。さすがに梅の木が空を飛ぶはずがなく、何者かがその梅を根分けして持って行ったのではないかといわれている。その人物こそが伊勢国度会(わたらい)郡(現在の三重)の社人であった白太夫。道真を慕い、夫人の手紙とともに届けたという。三重の春を象徴する梅の花の心温まるエピソードである。

早春を彩る梅林とともに
仕立て技術が継承されている

日本最古とされるしだれ梅のひとつ「地の龍」

三重県を代表する梅の名所のひとつが、「鈴鹿の森庭園」だ。ここは赤塚植物園が手掛ける研究栽培農園。繊細かつ大胆に仕立てられたしだれ梅の美しさと、日本が世界に誇る木の仕立て技術を次世代に継承するために、2014年にオープン。梅の花が咲く2月下旬から3月下旬まで一般に公開している。

梅は、観賞用の花梅で300品種ほど、食用の実梅で100品種ほどあるとされる。しだれ梅の歴史は江戸の後期からと伝わるが、そのしだれ梅だけでも42品種ほどが確認されている。園内には呉服枝垂を中心に、日本各地の名木が移植されている。

左より、柴咲さん、赤塚植物園の代々さん、庭師の清水正樹さん

観賞用の中でも、しだれ梅を仕立てる技術は特殊だと赤塚植物園の代々和生さんは言う。「梅は新しく伸びた枝に花をつけるのですが、上のほうの枝ほどよく伸びて茂ります。それを放っておくと傘のようになり、下に光が入らなくなり育たないのです。だから上を大胆に切り詰め、真ん中を少し切ってバランスを取っていきます。その作業をずっとし続けなければなりません。一度止めるとかたちが崩れてしまうのです」。つまりこの見事なしだれ梅は、匠たちが何世代にもわたり、仕立て技術とともに受け継いできたもの。梅はそれに応えるかのように力強く花を咲かせる。その神々しい姿に手を合わせたくなる。

いなべ市梅林公園。広大な敷地の南側にある梅林公園には、約100種類4000本の梅が生育。見晴台からは雪をかぶった鈴鹿山脈と、春色のラグを敷き詰めたような梅林の共演を楽しめる

東海地区最大級とされる梅林がある「いなべ市梅林公園」では、毎年3月に梅まつりを開催。雄大な鈴鹿山脈を借景に、白や薄紅、黄色など色とりどりの4000本の梅が咲く景色は圧巻だ。この農業公園は、都市と農村との交流を目的として2001年にオープン。梅林で土壌づくりや定期的な梅の手入れを行っているのが、シルバー人材センターから派遣された地元の住民たち。地域がひとつになって見守る梅園はいなべの春の風物詩となり、毎年約8万人が来場する。

まだ寒い時期に開花する梅は、厳しい条件下でも虫たちに確実に花粉を運んでもらうために、いっせいに咲いて散るのではなく、徐々に咲き長く咲くという技を取ったのだろうか。梅にはそんな生命力があると聞いて、「それを人間も学びたいですね」と柴咲さん。いつか梅の木を育てたいと夢を膨らませている。

鈴鹿の森庭園
住所|三重県鈴鹿市山本町151-2
Tel|059-371-1777
開園時間|8:00〜16:00(夜間ライトアップ期間中〜20:30)
開園期間|2月20日〜3月下旬予定
料金|700〜1700円(開花状況により変動)
アクセス|
【名古屋方面から】東名阪自動車道鈴鹿ICから約5分
【大阪方面から】新名神高速道路鈴鹿PAスマートICから約5分

いなべ市梅林公園
住所|三重県いなべ市藤原町鼎717
Tel|0594-46-8377
開園時間|9:00〜16:00(梅まつり開催期間中は8:00〜)
梅まつりの開催期間|3月上旬〜3月下旬予定(梅の開花状況により異なる)
休園日|なし
料金|500円
アクセス|
【名古屋方面から】東名阪自動車道桑名ICから約50分
【大阪方面から】名神高速道路八日市ICから国道421号線経由で約1時間10分。または東名阪自動車道四日市ICから約50分

合わせて訪れたいスポット

開運みちびきの神と
芸能・縁結びの神に会いに
「椿大神社」

伊勢国一の宮である椿大神社ではみちびきの神である猿田彦大神(さるたひこのおおかみ)をお祀りし、別宮の椿岸(つばききし)神社では猿田彦大神の妻神で、芸能・縁結びの神である天之鈿女命(あめのうずめのみこと)をお祀りする。春は境内の数十種ほどの椿と山茶花が次々と花開く。椿岸神社の横にある「かなえ滝」は恋愛成就にご利益があるといわれ人気。

椿大神社(つばきおおかみやしろ)
住所|三重県鈴鹿市山本町1871
Tel|059-371-1515
参拝時間|5:00〜18:00、5〜10月は〜19:00
※隣接の「椿会館」(Tel|059-371-1039 営業時間|8:30〜17:00 定休日|なし)では名物の「椿とりめし」などが味わえる

音声を使わない筆談カフェ
「桐林館喫茶室」

国登録有形文化財の旧阿下喜(あげき)小学校校舎を活用した筆談、ジェスチャー、手話でコミュニケーションを取るカフェ。自家焙煎のコーヒーや手づくりのケーキがある懐かしく静かな空間だ。

桐林館喫茶室
住所|三重県いなべ市北勢町阿下喜1980
メール|agk.torinkan@gmail.com
営業時間|13:00〜16:00(L.O.15:30)
定休日|月〜水曜

マテリアルをテーマにした宿
「湯の山 素粋居」

陶芸家・造形作家の内田鋼一さんがデザイン監修・アートキュレーションを担当した宿。石や土、木、ガラス、漆といった素材をテーマにした12のヴィラからなる。全室源泉かけ流しの温泉付き。

湯の山 素粋居
住所|三重県三重郡菰野町菰野4842-1
Tel|059-390-0068(9:00〜21:00)
料金|1泊2食付5万7000円〜(税・サ込)

※鈴鹿・いなべエリアを効率よく回るには車の利用がおすすめ!

text: Yukie Masumoto photo: Hiroshi Abe hair&make: SHIGE styling: Akiko Yoshizawa
協力:みえ観光の産業化推進委員会(三重県観光魅力創造課)
衣装協力:京きもの蓮佳(着物)、紫紘(帯)、和小物さくら(小物)
Discover Japan 2021年3月号「ワーケーションが生き方を変える?地域を変える?」


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