吉田崇昭のうつわ
「自分にしか描けない世界」
初期伊万里を彷彿させる奥ゆかしい呉須の文様。一枚いちまい丁寧に絵付けをしていく吉田崇昭さん。その静かな眼差しの奥にある、うつわづくりの思いを聞いた。
吉田崇昭(よしだ たかあき)
1976年、福岡県生まれ。大学でグラフィックデザインを専攻後、有田窯業大学校に進む。唐津の窯元での修業を経て、2007年に独立。伝統的な初期伊万里に影響を受けつつ、独自の染付のうつわをつくる。穏やかで素朴ながら、一つひとつに異なる文様の中に作家性が光る。
使う人によって“ちょうど良い”存在に
「伝統的な文様や昔の陶片に、なぜか心惹かれるんですよね。眺めていると、長い時代をかけてこれらが現代に残ったことには、何かしら理由があるはず、と感じずにはいられない。それらが辿ってきた道のりに想いを馳せるだけで、ロマンを感じ、心がワクワクするんです」
福岡県筑紫野市にある吉田崇昭さんの工房の傍らには、各所で集めた初期伊万里の陶片がいくつも飾られている。全体のかたちが見えない“かけら”は吉田さんの想像力をくすぐると同時に、うつわそのものの意味を問いかける。
大学時代、グラフィックデザインを専攻しながらも、インダストリアルデザイン科の友人がさまざまなモノを目の前でつくり上げていく様子を見て、自分の手でリアルなものづくりがしたいと、卒業後すぐに隣県にある窯業大学へと進学。そこで陶芸の基礎を一通り学び、かたちづくれるようになった段階で、そのまま作家として活動できるのではという期待も生まれた。
「でも実際には、何がつくりたいのか。その造形にどんな気持ちを込めたらよいのか。どれほど考えても、確信に辿り着けないんです。一度、自己表現から離れ、用の美に徹してみよう。そんな思いからうつわづくりをはじめました」
吉田さんの絵付けの特徴は、色や筆使いだけではない。すべてのうつわの絵柄が違っており、非常に多様なのだ。
「種あかしをすると、実は同じ絵柄を繰り返し描くのが苦手だからなんです
(笑)。絵付け職人ならば、同じ太さの線を繰り返し上手に描けるんですが、僕はダメ。それが逆に個性だと思って割り切っています。
小紋や菊花をはじめとした定番の文様はもちろん、ときにデフォルメされた鳥獣や妖怪、素数を漢字で表したものなど、吉田さんならではのユーモラスな作品もある。
「これが自分しか描けない世界だし、描きたい世界でもある。筆を進めるたびに、うつわが好きだと改めて思う。だからずっとつくり続けているんでしょうね」
吉田さんの穏やかなまなざしの中に、まっすぐにうつわづくりに向けられた強い気持ちを見たような気がした。
吉田崇昭さんのうつわを
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渋谷パルコのDiscover Japan Lab.および公式オンラインショップにて、吉田崇昭さんの作品を販売中! ぜひ実際に手に取ってお楽しみください。
Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~20:00
定休日|なし
Instagram|@discoverjapan_lab
※うつわはすべて数量・期間限定販売
※営業時間の変更の場合がありますので、最新情報は渋谷PARCOの営業時間(https://shibuya.parco.jp)をご確認ください
「うつわ祥見」が選ぶ注目作家
1|小野象平 – 1
2|境 道一
3|荒川真吾
4|岩崎龍二
5|小野哲平
6|八田亨-1
7|尾形アツシ
8|山田隆太郎
9|芳賀龍一
10|田宮亜紀
11|鶴見宗次
12|小野象平 – 2
13|吉田直嗣
14|八田亨-2
15|小山乃文彦
16|阿南維也
17|吉田崇昭
Text: Hisashi Ikai photo: Yuko Okoso special thanks: utsuwa-shoken
2022年2月号「美味しい魚の基本」