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福岡の街中に現るキューブ状のオフィスビル
《天神ビジネスセンター》

2021.11.16
福岡の街中に現るキューブ状のオフィスビル<br>《天神ビジネスセンター》
自然光がたくさん入るオフィスロビー
Photography by Tomoyuki Kusunose

福岡市天神地区にできた、ガラスカーテンウォールに覆われた建物「天神ビジネスセンター」。9月30日に竣工した、福岡市が主導する再開発事業「天神ビッグバン」の規制緩和を受けた第1号のオフィスビルだ。建築デザインを手掛けたのは福岡県出身、OMAのパートナー及びニューヨーク事務所代表の重松象平氏。またインテリアデザインは、GINZA SIXの内装も手掛けたグエナエル・ニコラ氏が担当。2〜19階はオフィス、1階は商業ゾーンで、2022年春には地下2階の飲食ゾーン「天神イナチカ」も開業予定。

天神ビッグバン
規制緩和などを活用して民間ビルの建替えを促進することで、天神地区に新たな空間と雇用を創出するプロジェクト。国家戦略特区を活用した航空法高さ制限の特例承認を獲得した機を逃すことなく、様々な施策を組み合わせることで、耐震性が高く、ウィズコロナ、ポストコロナにも対応した先進的なビルへの建替えを促進し、より国際競争力が高く、安全安心で、環境にも配慮した魅力的なまちづくりに取り組むもの。なお、天神ビッグバン開始後、ビッグバンエリアの 現時点での竣工棟数は、天神ビジネスセンターを含め43棟となっている。

福岡とアジアをつなぎ、新しい「はたらく」を
デザインするランドマーク

明治通りと、因幡町通りに面した立地で、地下鉄、地下街へも直結
Photography by Toshihisa Ishii

天神ビジネスセンターは、福岡市が獲得した航空法高さ制限の緩和をはじめ、市独自の容積率緩和制度を活用するとともに、魅力あるデザイン性に優れたビルとして認定され、それに応じてインセンティブを付与する制度「天神ビッグバンボーナス」を適用している。

福岡で供給されたオフィスビルの中で従来にない大規模免震構造を採用し、法定の1.5倍の耐震性能を実現。また、災害時のライフライン寸断に備え、72時間対応のデュアルフューエルガスタービン発電機を設置し、非常時においてもテナント専有部の電力供給、エレベーターや共用部照明の稼働、トイレの利用を可能としたBCP対応の高機能オフィスビル。

周辺には、ゆとりある広場や歩行空間をつくり、街に潤いを与える花や目に映える緑の創出などにも取り組んでいる。西と東のフィンは日射遮蔽効果があり、環境負荷軽減と快適性を高めるデザインになっている。雨水利用、貸室内照度センサー等を採用し、「CASBEE福岡」においてAランク、「DBJGreenBuilding認証」において4つ星を取得している。

また地下鉄天神駅と直結し、地上と地下を円滑につなぐアトリウムとバリアフリー動線を整備。福岡空港も地下鉄の沿線上にあるため、国内外への素早いアクセスも可能となる。

グローバルに活躍する建築家・デザイナーとの協業

公共エリアとオフィスの境目を緩和させる、ふたつの通りの角のファサードを切り崩すようなデザイン
Photography by Tomoyuki Kusunose

建築デザインは重松象平氏(OMA)、インテリアデザインはグエナエル・二コラ氏(株式会社キュリオシティ)が担当。明治通りと因幡町通りの交差部をピクセル状に削ることでオープンスペースを作り出し、性格の異なる2つの通りをシームレスに繋ぎながら、明治通りの街並みと調和したオリジナリティの高い多様性のある沿道景観を創出している。

ロビー内はホテルライクな洗練されたインテリアデザインを採用することで、入居する企業の顔としての役割を果たす上質なエントランス空間を演出。

建築家
重松象平(しげまつ・しょうへい)
国際的建築設計集団OMAのパートナーおよびニューヨーク事務所代表。1973年福岡県久留米市生まれ。九州大学工学部建築学科卒。主な作品は中国中央電視台(CCTV新社屋、コーネル大学建築芸術学部新校舎、コーチ表参道フラッグシップストア、ケベック国立美術館新館、マイアミビーチの複合商業施設ファエナ・フォーラムなど。ニューヨーク、マンハッタンのニューミュージアム新館、ロサンゼルスのウィルシャー・シナゴーグ新館、シリコンヴァレーのFacebook社新キャンパスマスタープラン、東京の虎ノ門ヒルズステーションタワーなど、世界各地で多岐にわたるプロジェクトが進行中。2013年よりハーバ ード大学デザイン学部大学院GSDにおいて客員教授をつとめる。現在、九州大学大学院人間環境学研究院教授・BeCATセンター長をつとめる。

株式会社キュリオシティ代表
グエナエル・ニコラ
1966年フランス生まれ。1998年キュリオシティ設立。インテリア、プロダクト、グラフィックなどシームレスに活躍。近年は、日本をベースにしながらもMONCLER、 VERSACE、 DOLCE&GABBANAなど国際的なプレステージブランドの店舗デザインを担当。また銀座シックスの内装デザインも手がけた。

1階商業ゾーン、地下 2階飲食ゾー ン
「天神イナチカ」

Photography by Tomoyuki Kusunose

1階商業ゾーンには、世界的なアウトドアアパレルブランドで知られる「patagonia(パタゴニア)」が出店。地下2階にはバラエティ豊かなメニューを取り扱う店舗が並ぶ、飲食ゾーン「天神イナチカ」が誕生。店舗数は11店で、「因幡町通り」の地下に位置することから、「天神イナチカ」と名付けた。開業は2022年春を予定。1階商業ゾーンにも一部飲食店が出店。

上質な空間を彩る「パブリックアート」

オフィスエントランスやアトリウムには、世界で活躍する現代美術作家によるパブリックアート作品を設置。


「Light & Color, work in situ」ダニエル・ビュレン[フランス](2Fオフィスエントランス)     Photography by Toshihisa Ishii

天神ビジネスセンターのために制作された作品。作者は「基本のアイデアは、作品を空間の最上部に置き、その空間とのバランスに基づいて長さと幅を考えた」とコメント。 スチールの構造、LED、プレキシガラスにより、一連のライトボックスを作り出した。

「 HG6 Alto Relieve」ダニエル・ビュレン[フランス]( 2Fオフィスエントランス)
Photography by Toshihisa Ishii

高い壁面レリーフのシリーズ作品。交互に配置したストライプ、明るい色、鏡を組み合わせ、空間や鑑賞者と対話するような作品となっている。鏡面は周囲の空間を捉えるだけではなく、捉えられた部分も作品の一部。

ダニエル・ビュレン
1938年フランス生まれ。1986年ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞、2007年高松宮殿下世界文化賞受賞。2016年パリ・ルイヴィトン財団美術館の全体ジャックが大きな注目を集めた。

「 The question of the helix in a broken cross composition」アティナ・イオアヌ[ギリシャ]
( B1Fアナトリウム)Photography by Toshihisa Ishii

天神ビジネスセンターのために制作された作品。赤い布地や伝統的な男女の着物を素材として選び、手作業でつくられた幾何学的な三角形で構成されている。ステンレス製の構造体は、絵画のような巧みな素材の構成で透明感や光の反射を利用して螺旋状に展開し、光とともに変化する詩のように対話する。それゆえ、環境や建築と調和した作品となっている。

アティナ・イオアヌ
1968年ギリシャ生まれ。ローマ、デュッセルドルフ美術アカデミーにて学ぶ。世界各国の美術館で展覧会を開催。


Photography by Tomoyuki Kusunose

天神観光の新しい拠点の誕生に期待が高まる。

天神ビジネスセンター
住所|福岡県福岡市中央区天神1-10-20
https://fukuokajisho.com/

福岡にある建物の環境配慮や快適性を
SDGs視点で読み解く

2021年8月現在
解説協力:サステナブル・ラボ株式会社

人間、地球及び繁栄のための行動計画として、持続可能な開発目標として国際的に採択されたSDGs。17の目標のうちゴール12の「つくる責任、つかう責任」に注目すると、福岡県は「都道府県別CASBEE建築・戸建・不動産評価認証物件数」が全国で9番目に多い県ということです。

CASBEEとは、建築環境総合性能評価システムとも呼ばれ、建築物の環境性能を評価し格付けする手法のこと。省エネや環境負荷の少ない資機材の使用など環境配慮を中心に、室内の快適性や景観なども含めた建物の品質を総合的に評価するシステムです。天神ビジネスセンターがCASBEE福岡で評価を受けたAランクは、5段階中2番目に優れていることを示し大変良い評価となっています。

建物の環境配慮や快適性が第三者によって客観的に評価されていると信頼性が高まるので、地域住民も利用者も安心感があるでしょう。2022年春に予定されている商業ゾーン、飲食ゾーンの開業で、より多くの人が訪れられるようになる日が待ち遠しいですね。

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