吉田直嗣のうつわ
「思考を圧縮して生まれるもの」
モノトーンな世界から、次なる可能性を引き出す吉田直嗣さん。静かな環境で、うつわと真っ直ぐに向き合う彼のもとを訪ねました。
記事内で紹介した商品は渋谷パルコのDiscover Japan Lab.および公式オンラインショップにて数量限定で販売いたします。
吉田直嗣(よしだ なおつぐ)
1976年、静岡県生まれ。東京造形大学を卒業後、黒田泰蔵氏に師事。2003年に独立し、静岡県駿東郡で作陶をはじめる。静かな表情の奥に感じる深い思考性と潔さが、多くのファンの心を掴む。鈍い光を放つ鉄釉の黒陶、なめらかな質感の白磁に加え、マットな墨黒釉も手掛ける
「自分が使いたいものが見つからなければ、つくってしまおう」
「日々の決まったルーティーンはなく、創作する時間帯も至ってフレキシブルなのですが、なぜか茶碗や花入をつくるときは夜の作業がほとんど。空が暗くなれば森も静かになり、家族も寝静まって一人だけの時間がやってくる。自分と向き合うにはいい環境なんでしょうね」
富士山の裾野、東側に広がる森の中に陶芸家、吉田直嗣さんの工房はある。もともと義祖母が別荘地として所有していた土地を譲り受け、独立と同時に家族と移住。喧騒から距離を保ちながら自分のリズムで好きに暮らし、創作に集中できるのがよいと語る。
うつわとの出合いは、家具デザインを学ぶために美術大学に入学し、東京で一人暮らしをはじめたことがきっかけだった。
「家の食器を買い揃えなければならないのに、どこに行っても自分が使いたいものが見つからない。ならば自分でつくってしまおうと陶芸サークルに入部。在学中は専攻の勉強よりも、焼物のことばかり考えていたように思います」
自分のためのうつわという概念はいまでも変わらず、自宅で家族が使う食器は、木やガラスのものを除けばすべて自身でつくったもの。つくり手と使い手という対峙する視点から自分を見つめ直す。この繰り返しが、吉田さんの創作にさらなる深みを与えているようだ。
「自身の中にあるものを探り、掴み取っていく」
シンプル&モノトーンと語られることの多い吉田さんの作品だが、何を創作の足がかりにし、どのような思いが込めているのだろうか。
「あまり他の人の作品を見に行きませんし、名匠の技を積極的に研究することもありません。ただ、自身の中にあるものを探り、掴み取っていくような感覚。たとえば、本を読んでいるときに気になったフレーズをずっと頭の中で繰り返し、ゆっくりとうつわのイメージに落とし込んでいくのです」
装飾性を省いた無駄を削ぎ落とした吉田さんの表現は、シンプルという言葉で括るには物足りない。熟慮と想像を繰り返し、深淵を覗き込んだ先にある、ぎゅっと凝縮されたようなものがかたちとなって表されている。
「美しいものがつくりたくても、何を美しいと思うのかという定義に僕があいまいなままにしていると、何も見えなくなってしまう。終わりのない問いかけなのですが、僕はこのはがゆい感覚をある意味楽しんでいるし、創作の意欲にも直結しているとも思います」
絶えず繰り返される自問自答は、吉田さんがいまという瞬間をいかに感じているかにまで及ぶ。
「同じ風景、同じ言葉でも、時が変わればまったく違う印象を受けるように、時間と共にものづくりに対する感覚も技も変化するもの。いつでも完璧にコントロールできるものならば、それは単なる大量生産のプロダクトになってしまいます。大げさなことをせずとも、その瞬間の自分を確実に捉えていれば、正しい表現に通じると信じています」
展覧会では与えられた企画に従うのではなく、自分がいまつくりたいと思うものを素直に提示するという吉田さん。「もしかしたらそれは身勝手で傲慢な態度かもしれません」と話すが、それほどまでの信念を持って、ものづくりと正直に向き合っていることの証なのではないだろうか。
吉田直嗣さんのうつわを
オンラインで購入いただけます!
オンラインで購入いただけます!
渋谷パルコのDiscover Japan Lab.および公式オンラインショップにて、吉田直嗣さんの作品を販売中! ぜひ実際に手に取ってお愉しみください。
Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~20:00
定休日|なし
Instagram|@discoverjapan_lab
※うつわはすべて数量・期間限定販売
※営業時間の変更の場合がありますので、最新情報は渋谷PARCOの営業時間(https://shibuya.parco.jp)をご確認ください
「うつわ祥見」が選ぶ注目作家
1|小野象平 – 1
2|境 道一
3|荒川真吾
4|岩崎龍二
5|小野哲平
6|八田亨
7|尾形アツシ
8|山田隆太郎
9|芳賀龍一
10|田宮亜紀
11|鶴見宗次
12|小野象平 – 2
13|吉田直嗣
Text: Hisashi Ikai photo: Yuko Okoso special thanks: utsuwa-shoken