田宮亜紀のうつわ
「壺を通じて、独自の世界へと突き進む力」
しっとりとした佇まいで、見る者の心を穏やかに包み込む田宮亜紀さんの壺。なぜ彼女は、壺をつくり続けるのでしょうか。静岡の山間にある工房を訪ねました。
田宮さんのうつわは渋谷パルコ「Discover Japan Lab.」および公式オンラインショップでも購入いただけます。詳しくは記事末尾をご覧ください。
田宮亜紀(たみや あき)
東京都生まれ。1996年、益子に築窯。今成誠一氏、故・青木亮氏と交流を重ねながら、作家としての活動を開始する。1999年に静岡に穴窯を完成。現在に至る。無釉の焼締にこだわり、壺の制作を中心に作陶を続けている。
田宮亜紀さんが陶芸と出合ったのは、出版社で営業の仕事をしていたときのこと。もともとうつわが好きだったが、実際に自分の手で土に触れてみるといっきに世界が広がり、深みにはまってしまったという。
「土に触れているのが、とにかく楽しかったんです。教室に通ううちに、もっとつくりたいと思う気持ちが強くなり、陶芸に専念しようと仕事を辞めてしまいました」
思い切りの良さには驚くが、焼きものの産地である益子に拠点を移して、今成誠一氏の手伝いをしながら作家としての活動をスタート。皿や鉢といった食のうつわを中心につくっていた。
「焼締のうつわが好きで、私らしい焼締を目指してうつわをつくり、個展で発表していました。ただ、細かく寸法のあるうつわよりも、自由に頭の中に思い描くイメージのままに手を動かし、大らかにかたちづくっていくことが好きでしたね。大鉢や大皿もその頃から好んでつくっていました」
転機を迎えたのは、ラオスやタイなど、東南アジア諸国を旅したときのことだ。異国の日常を五感でとらえようと街を散策していると、民家の軒先や玄関脇などに、水甕や食料の貯蔵などに用いるためだろう、かなり大型の壺がいくつも並んでいた。
「暮らしに寄り添う様子、ありのままの姿があまりにも素敵で、日本に持ち帰りたいと思ったんです。でも、興味を惹かれる壺は、どれも両手で抱えられないほどの大きさ。機内持ち込みができないので持ち帰るのはさすが諦めましたが、帰国後、旅先での光景が何度も蘇り、それをたどるように大壺を自分でつくってみようと思ったんです」
田宮さんの工房には、大小さまざまなサイズの壺が並ぶ。それぞれがどのような用途で使われるものになるのか、具体的なことは一切考えずに、ひたすら土と向き合い、普遍的な存在を探究し続けているという。
「ただ、大きなものをつくるのが、やっぱり好き。大きなものを入れると薪窯の中の温度を調節するのも大変ですし、窯詰めや窯出しの作業はひとりでは到底無理で本当に苦労が多いのです。やればやるほど、大変なのはわかっているのに、それでもまた、大きなものがつくりたくなってしまうんです」
自分にも理由はわからないが、とにかく壺に触れ、ともに過ごしているのが好きだという田宮さん。彼女の作品を眺めていると、陶芸の原型と呼ばれ、太古より悠久の時を重ねてきた壺が、平穏の象徴であるかのように思えてくる。田宮さんの壺が語りかけてくるのは、忘れかけていた自然との関わりであり、私たちが向かうべき世界への誘いとも思える。ぷっくりとした膨らみの上にぽかんと開いた口。素朴なかたちは優しさとなって、暮らしに静かに溶け込み、私たちに寄り添い続ける。
田宮亜紀さんのうつわを
オンラインで購入できます!
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Discover Japan公式オンラインショップにて、田宮亜紀さんの作品をご紹介しています。 焼締作家としてコアな人気を誇る女性作家・田宮さんのうつわをこの機会に手に触れ、その良さをどうぞお確かめください。
Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~20:00
定休日|なし
Instagram|@discoverjapan_lab
※うつわはすべて数量・期間限定販売
※営業時間の変更の場合がありますので、最新情報は渋谷PARCOの営業時間(https://shibuya.parco.jp)をご確認ください
「うつわ祥見」が選ぶ注目作家
1|小野象平
2|境 道一
3|荒川真吾
4|岩崎龍二
5|小野哲平
6|八田亨
7|尾形アツシ
8|山田隆太郎
9|芳賀龍一
10|田宮亜紀
11|鶴見宗次
12|小野象平 – 2
13|吉田直嗣
Text: Hisashi Ikai photo: Yuko Okoso special thanks: Utsuwa-Shoken
2021年7月号「ととのう発酵。」