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八田亨のうつわ
「ありのままの自分を映す存在」

2021.10.1
八田亨のうつわ<br>「ありのままの自分を映す存在」

ひたむきに土と向き合い、うつわ、そして自身のあり方を見つめる八田亨さん。その素直な視点は、どこから生まれるのでしょうか。大阪にある工房を訪ね、話を聞きました。
記事内で紹介した商品は渋谷パルコのDiscover Japan Lab.および公式オンラインショップにて数量限定で販売いたします。

八田 亨(はった とおる)
1977年、石川県生まれ。2000年、大阪産業大学工学部環境デザイン学科卒業。2003年、陶芸家としての活動を開始。翌2004年、自身の穴窯を築窯する。現在は大阪・富田林市の工房でろくろを挽き、堺市に窯で焚いている。迫力のある三島や白掛を中心とした作品を手掛ける。

「うつわは日常の道具。自分もできるだけ自然体でいたい」

1560年建立の興正寺別院を中心に形成された大阪・富田林の寺内町。国の重要伝統的建造物保護地区に認定されている古き町並みの中に八田亨さんの自宅兼工房はある。

「自分の子どもたちが大人になったとき、こんな場所で育ったんだときちんと語り継ぐことができるよう土地に暮らしたい。そう思い5年前に家を建て、ろくろを挽くための工房もそこに併設しました」

伝統的な日本家屋を現代的にアレンジした建屋はスキップフロアになっており、その一番高い場所に八田さんの工房はある。大きく取った開口から光が燦々と差し込むスペースでろくろを挽きながら、自宅の様子を眺めることができる。

「うつわをつくっているすぐそばで、普通に家族が生活している。そんな普遍的な暮らしの様子を肌で感じながら作業するのも好きなんですよね」

うつわは日常の道具。それだけに、自分もできるだけありのままの自然体でいたいという気持ちも伺える。

腰壁、瓦屋根、木格子。由緒ある様式を取り入れた八田さんの工房
壁に大きなガラス面を取り入れたことで、工房は常に明るい光に包まれている
工房で作業をする八田さん。中央奥の大きなガラス窓に面したところにろくろがある

八田さんがはじめてうつわの世界に触れたのは大学時代。ちょうど卒業後の進路に悩んでいたときのことだった。

自分は何者なのか。この先何ができるのだろうかと思い悩んでいたとき、陶芸に触れている時間だけは、自分の手で土が動き、かたちを変えながら立ち上がっていく様子に没頭できた。八田さんは焼物の道を邁進すべく、大阪の「舞洲陶芸館」で働きながら、海底粘土を素材に、登窯の燃料に大阪湾の護岸工事に使われた松の杭を使ったり、淀川の河岸に生える葦を焼いた灰を釉薬の材料に使ったり、再生素材を用いたトライアルを行った。

「定住とともに、人々は暮らしのために必要なうつわを身近なものでつくってきました。それが時代を経て、日本全国に残る現代の焼物へと発展しているのです。このように元をたどれば、焼物は芸術的ものでも専門的なものでもなく、人の生き方そのものだと言えるかもしれません」

ろくろを回しながら、へらで高台を丁寧に削り整えていく
八田さんが手掛けた徳利。張りのある美しいかたちは、手に持ったときの馴染みも良い
2004年に築窯した穴窯。場所によって火の入り方が違うので、さまざまな仕上がりが得られる一方で、管理するのは難しい

うつわ、そして焼物を、人の存在や暮らしの情景を普遍的に映す存在として捉える八田さん。作為に依らない「ありのまま」を捉えるために、毎日のように土を捏ね、ろくろを挽いては窯へと運ぶ作業をひたすら繰り返してきた。

そんな八田さんにも大きな転機があった。2015年7月に「うつわ祥見」が開催した「村木雄児、八田亨 夏、三島展」に参加したときことだ。

「祥見さんの企画では、最初はグループ展だったそうです。村木さんが八田とふたりでやりたいと言われたことから実現した二人展でしたが、プレッシャーからか何をつくったら良いのかまったく分からなくなってしまったのです。漁るように資料を読み込み、新しいやり方を試してみてもダメ。ほとほと困っているときに、陶芸家の小野哲平さんから『三島をつくろうなんて思わなくて良いじゃない』と言われたのです」

経験を重ねるほどに知識、技術は習得できるが、うつわづくりに完璧な正解やゴールがあるわけではない。意図的になるほど視野が狭くなり、目指すものから遠のいていき、結果として見えてくるのは、素のままの自分。そう理解したことで、八田さんは一つ前に歩みを進めることができた。

今年は特にものづくりに集中できており、年の終わりには17回目の窯入れを行う予定だ。これほど繰り返しても、まだ満足のいかないものは出てくると語る八田さん。しかし、完璧が求められないからこそ、再び自分と向き合うために土に手を伸ばすのだろう。

取手の形状や厚み、全体のフォルムなど使いやすさを考え、より心地よく珈琲を飲むことなどを想像しながらつくっている「白掛マグカップ」
「白掛片口」。片口のような酒器は、あえて窯の前の方の場所に入れるようにしている。すると、食器では激しすぎるようなおもしろい表情がとれることが多い。穴窯では燃料の薪の灰やガスの影響の他、炉圧をかけることも大事だと考えており、食器と違いちょっと荒れた感じが良いときも酒器にはある
「白掛石皿」は、ふだんの食事のときも、お客さんを招いての食事でも「どや!」って感じで大皿をよく使う、と八田さん。「一瞬、テーブルのみんなの感情が高ぶり、フワっと空気が踊るのを感じるのが好きなのです」。大皿は一枚一生ものを手に入れると、うつわの世界が広がるので、薪窯焼成の表情豊かなものを選びたいものだ

八田亨さんのうつわを
オンラインで購入いただけます!

渋谷パルコのDiscover Japan Lab.および公式オンラインショップにて、八田亨さんの作品を販売中! ぜひ実際に手に取ってお愉しみください。

 

 

 


 

八田亨の作品一覧
 

Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~20:00
定休日|なし
Instagram|@discoverjapan_lab
※うつわはすべて数量・期間限定販売
※営業時間の変更の場合がありますので、最新情報は渋谷PARCOの営業時間(https://shibuya.parco.jp)をご確認ください

「うつわ祥見」が選ぶ注目作家
1|小野象平 – 1
2|境 道一
3|荒川真吾
4|岩崎龍二
5|小野哲平
6|八田亨-1
7|尾形アツシ
8|山田隆太郎
9|芳賀龍一
10|田宮亜紀
11|鶴見宗次
12|小野象平 – 2
13|吉田直嗣
14|八田亨-2

Text: Hisashi Ikai photo: Yuko Okoso special thanks: utsuwa-shoken


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