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山田隆太郎のうつわ
「うつわに表れる、まっすぐな気持ち」

2021.4.5
山田隆太郎のうつわ<br>「うつわに表れる、まっすぐな気持ち」

素朴な佇まいの中に、凛としたディテールの美しさが光る山田隆太郎さんのうつわ。山間の工房を訪ねると、そこには日々土と向き合う山田さんの姿がありました。
山田さんのうつわは渋谷パルコ「Discover Japan Lab.」および公式オンラインショップでも購入いただけます。詳しくは記事末尾をご覧ください。

山田隆太郎(やまだ・りゅうたろう)
1984年、埼玉県生まれ。多摩美術大学環境デザイン学科卒業。造形作家・樋口健彦氏に師事する。2010 年、多治見市陶磁器意匠研究所修了後、多治見市にて独立。’14年、神奈川県相模原市に移転し、現在に至る。飯碗や蕎麦猪口など、暮らしのうつわを中心に製作を行う

工房からの景色。相模湖にほど近い、藤野の山間で作陶を続ける山田さん
多くの現代作家に影響を与えた故・青木亮さんが残した薪窯を受け継いでいる
作品の種類、表現などに応じて、こうした灯油窯も3基動かしている
電気窯を改造した薪窯では、飯碗や湯呑みなどの小ぶりなうつわを制作

山田隆太郎さんが焼物と出合ったのは、美術大学でインテリアを学んでいたときのこと。体調を崩したことをきっかけに現実から逃避したいと思っていたとき、見つけたのが近所にあった陶芸教室だった。

「コンピュータでデザインをつくり出すプロセスにあまりおもしろみを感じられなかった一方で、土というダイレクトな素材と向き合っているときのリアルな感覚がよかったのかもしれません」

焼物に専念しようと、大学卒業後は岐阜県多治見に移り、研究所に入所。修了後も多治見に残り、そのまま作品を続けていた。多治見近辺は焼物の産地としても有名で、制作には困らない環境だったが、山田さんの心はどことなく満たされないままだったという。

「定番のものをつくっていれば売れるのですが、『なんでつくっているのだろう?』という疑問がいつも心の中にありました」

先人の作品を見ているうちに、より自己と向き合う環境に身を置くべきだと判断。窯付きの物件を探しはじめたとき、故・青木亮さんが残した現在の工房と出合い、早々に移住を決めた。

木々が植えられた工房の前庭。季節ごとに咲く花が四季を感じさる
静かな表情で、ろくろと向き合う山田さん
土にそっと添えた指先で、美しくうつわの原型を生み出していく

現在の工房では、薪窯と灯油窯で粉引、刷毛目、黒釉、焼締と、多様な表現の作品を手掛ける山田さん。これは豊富なバリエーションを目指しているわけではなく、型にはまりたくないという山田さんの強い思いの現れだ。

「作家にとって大切なのは、最終的なうつわのかたちではなく、そこに至るまでの工程に愛情が持てるかどうかだと思うんです。焼物を完成させるプロセスのなかに、いろんな気持ちの変化が巻き起こり、それを自分なりに楽しんでいるからこそ、またつくりたいと考えるのではないでしょうか」

経験を重ねれば、それなりに知識も技術も高まり、コントロールできることも増えてくる。しかしながら、土と火という自然を相手にする焼物は、狙いどころを定めてもすべて思い通りにいくというものでもない。

「ときにうまくいき、思いがけないところで失敗する。こうした気持ちのゆらぎも、陶芸の魅力だと思います」

工房にこぼれる薄明かりの中に佇む、黒釉や刷毛目のうつわたち
土に含まれる鉄分が反応し、趣のある文様を描き出していく

使い手のことも考え、目立った意匠よりも、手取りの良さやディテールの美しさが際立つ、静かなうつわをつくり続ける山田さん。うつわを愛好してくれる人々がいることを嬉しく思いながらも、作家として特別扱いされることは避けたいと語る。

「僕のつくるうつわは、食事を盛るための道具です。そんな日用品を神格化しなくてもいいと思うんです。どうでもいいものでは困るけど、『なんだかわからないけれど、ちょっと好き』くらいの感覚で見てもらえると嬉しいです」

 

 

 

 

山田隆太郎の作品一覧
 

「うつわ祥見」が選ぶ注目作家
1|小野象平 – 1
2|境 道一
3|荒川真吾
4|岩崎龍二
5|小野哲平
6|八田亨
7|尾形アツシ
8|山田隆太郎
9|芳賀龍一
10|田宮亜紀
11|鶴見宗次
12|小野象平 – 2
13|吉田直嗣

Text: Hisashi Ikai photo: Yuko Okoso special thanks: utsuwa-shoken
Discover Japan 2021年5月号「美味しいニッポントラベル」


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