PRODUCT

貴人の愛した古裂をそっと忍ばせて
「ちんぎれや」のがま口
買って帰りたい京都

2020.11.1
貴人の愛した古裂をそっと忍ばせて<br>「ちんぎれや」のがま口<br><small>買って帰りたい京都</small>
がまぐちやポーチなどがあり、サイズや生地により値段が異なる。豆がま1500円から

いまは何でも取り寄せて買える時代。でも、せっかく京都を訪れたなら、足を運ばないと聞けないつくり手の話とともに買って帰りたい、京都ならではの”いいもの”を、京都出身の目利き人・内藤恭子さんが厳選して教えてくれた。

選・文=内藤恭子
共著『京都を買って帰りましょう。』をはじめ、ジャンルを問わずつくり手の取材を数多く手掛ける。作家作品などを紹介するショップ「好事家 白月」も主宰する

いまでは財布といえば、革製のものが主流だろう。子どもの頃、祖母におやつをねだると、「これで買うてき」と、がま口から小銭を出してくれた。私もはじめて使った財布はがま口だったが、気づけば革製の長財布の愛用者となった。でも小銭の出し入れには難儀する。50円玉と思いきや、100円玉だったり。もたついて諦める。結果、さらに小銭がやって来て、長財布はいつしか肥満気味で不細工な体型に。持ち主に似るのか?と恐怖すら覚え、この悪循環を断ち切るために使いはじめたのが、「ちんぎれや」のがま口だ。

とはいえ、ここは古裂の専門店。古裂はいわば布の骨董品で、美術館に並ぶような江戸時代以前の貴重なものから、明治や大正時代のものまで扱っている。かつての特権階級が愛用した小袖や、南蛮船で運ばれてきたものなど柄や種類も豊富。しかも、現在の織機や材料では再現できない生地がほとんどだそう。「日本では京更紗や堺更紗がありますが、これは南蛮船で運ばれてきた海外のもので、大名などしか手にできなかった品です。こちらの縞柄は備前の熊野染」と、ご主人の中村年希さんの話に興味は尽きない。古裂は触るのも緊張するが、名刺入れやがま口に仕立てられた小物なら、気軽に楽しむことがができる。「これはどこぞのセレブの着物だったのか知らん」などと妄想しつつ、がま口を選ぶのは楽しい。私は小さな豆がまを小銭入れにしているが、化粧ポーチサイズまであり、専任の職人が丁寧に手づくりしているため、どれもパカっと大きく開き小銭などを取り出しやすい。しかも、見た目以上にたっぷり入る。だから、つい入れ過ぎて……と、悪循環に陥らないようにご注意を。

 

ちんぎれや
住所|京都市東山区縄手通三条南入ル元町372-1
Tel|075-561-4726
営業時間|10:00〜18:00
定休日|日曜

 

《買って帰りたい京都》

≫次の記事を読む

 
 

《買って帰りたい京都》
1|薄紅色に透き通る、とろける鯖の大トロ「祇園いづ重」の鯖姿寿司極上
2|織姫さまにも差し上げたい甘い5つの口福「松屋藤衛門」の珠玉織姫
3|緑茶だけではない京のお茶「椿堂茶舗」の京都紅茶
4|新撰組も味わった昔ながらの漬物の味「総本家近清」の漬物
5|無精者も虜にする簡単出汁「うね乃」の出汁
6|自分好みに育てるかばん「一澤信三郎帆布」の麻かばん
7|巨匠も愛した芸術品を普段に楽しむ贅沢「竹中木版竹笹堂」の木版手摺和紙
8|京都を代表する“カワイイ”を連れ帰る「三三屋」の高山寺の仔犬
9|貴人の愛した古裂をそっと忍ばせて「ちんぎれや」のがま口
10|集めても贈っても穏やかな表情で福を招いてくれるはず「嵐山いしかわ竹乃店」の嵯峨面

photo: Sadaho Naito
Discover Japan TRAVEL 2019年号 特集「プレミアム京都2019」

京都のオススメ記事

関連するテーマの人気記事