鶴見宗次のうつわ
「心の静まりを纏う、愛すべきもの」
手びねりで、丁寧にかたちづくっていく常滑の陶芸家・鶴見宗次さん。その静かな視線の先にある、ものづくりの態度を伺います。鶴見さんのうつわは、Discover Japanの直営店「Discover Japan Lab.」及び公式オンラインショップにて販売中。
鶴見宗次(つるみ そうじ)
1967年、東京都生まれ。とこなめ陶の森陶芸研究所で正面から陶芸と向き合い、そのまま常滑にて独立。鉄分の多い土を指先で丁寧に成形していく手びねりの手法で、朴訥とした実直なうつわをつくり続けている。
東京時代に、何気なく立ち寄った陶芸教室ではじめて土に触れた鶴見宗次さん。翌年には、常滑の陶芸研究所に入所。焼き物への道を歩みはじめた。
「若いころはさまざまな職も考えたことはありましたが、常滑に移住するときには、この道で生きていこうと決めていたように思います。もともと手を動かしてものをつくったり、一つのことと向き合うのは好きでした。なにより焼物は、最初から最後まで一人の力でやり通すことができる仕事というのが、自分には合っていたような気がします」
現在の工房での活動は20年を超える。経験を重ねていくと表現や作業環境を変えていく作家が多い中で、鶴見さんは特に進化、変化は求めないという。
「ここはもともと、配管用集合管をつくっていた製陶所。廃業された後に、共同工房として大家さんが整備し、若いつくり手に仕事場として提供されるようになり、当時、僕にも声を掛けてくれたのです。建物は古いですが、環境としては十分。代替わりした大家さんもよくしてくださいますし、複数のつくり手が入居している共同窯ですので、工房に籠っていても、いつも人がいる気配もあり、風通しもよいのです」
鶴見さんの制作の基本となっているのが、紐状や球状にした土の塊を指先でつまみながら、うつわを成形していく「手びねり」という手法だ。
「手びねりで日常的に使ううつわをつくるのは、ちょっと珍しいかもしれません。でも、僕にとってはとても無駄のない、シンプルなやり方。ろくろに比べれば、手びねりの方が制作に手間がかかるのかもしれませんが、僕自身ろくろはまったく触らないのでどっちがいいなんて言えなくて(笑)」
同じように見えても、少しずつ異なるのが手づくりのうつわの魅力。一つひとつが持つ個性が、手のひらから使う人の感覚へと伝わり、愛すべきうつわへと育っていくのだ。
つくっているときは、どんな思いでうつわと向き合っているかという質問に対し、「うつわは焼いてみないとわからないので、手を動かし続け、上手くできあがれはいいなと思っているだけです」と朴訥な口調で答える鶴見さん。余計なことを考えず、土に向かっている時間をひたすら増やしたいという。
「毎日決まった時間を工房で過ごします。個展前になると工房に泊まり込みで仕事をしますが、決して苦ではないのです。休みをとって旅に出たいかと聞かれても、生来の出無精も手伝って、どこに行きたいとも思わない。とにかく仕事場の居心地が良いので、ここにいられるだけで十分なんです」
迷いなく、ありのままの状態を受け入れ、そこに没頭する。そんな彼の態度を見ていると、まるで達観した僧侶と話しているような気持ちにさえなってくる。
こうした落ち着きを保つ心持ちをも纏っているからこそ、鶴見さんのうつわは、おおらかで無理がなく、常に身近に置いておきたい存在なのかもしれない。
鶴見宗次さんのうつわを
オンラインショップで購入できます!
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Discover Japan公式オンラインショップにて、鶴見宗次さんの作品を販売中! 作家の想いが詰まった作品を暮らしに取り入れてみませんか?
Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~20:00
定休日|なし
Instagram|@discoverjapan_lab
※うつわはすべて数量・期間限定販売
※営業時間の変更の場合がありますので、最新情報は渋谷PARCOの営業時間(https://shibuya.parco.jp)をご確認ください
「うつわ祥見」が選ぶ注目作家
1|小野象平
2|境 道一
3|荒川真吾
4|岩崎龍二
5|小野哲平
6|八田亨
7|尾形アツシ
8|山田隆太郎
9|芳賀龍一
10|田宮亜紀
11|鶴見宗次
12|小野象平 – 2
13|吉田直嗣
text: Hisashi Ikai photo: Yuko Okoso special thanks: utsuwa-shoken
2021年8月号「世界遺産をめぐる冒険」