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建築家・磯崎新の初期代表作
《北九州市立美術館 本館・アネックス》

2022.3.23
建築家・磯崎新の初期代表作<br>《北九州市立美術館 本館・アネックス》

「建築のノーベル賞」と言われるプリツカー賞を2019年に受賞した建築家・磯崎新氏の初期代表作「北九州市立美術館」。その斬新なデザインは建物自体が絵画のよう。国内外の近現代美術を象徴する多角的なコレクションを所蔵し、「美術の森公園」の遊歩道にはオブジェや彫刻が随所に配置されている。海と山に囲まれた地形を生かしながら景色や美術品や建築の美しさを楽しめる「北九州市立美術館」の魅力を紹介。

北九州市立美術館とは

北九州市立美術館は、昭和49年(1974)西日本における公立美術館の先駆けとして設立。百万市民を抱える北九州市にふさわしい美術館として、豊富な収蔵品を常時展示すると同時に優れた企画展を開催することにより、市民に美術鑑賞の場を提供し、創作活動に対して支援するということを基本方針としてスタートした。

建築の設計者は大分出身の著名な建築家・磯崎新氏。本館はグリッドを基調にしたデザインで、ファサードから二本の筒が飛び出し、左右に比翼が伸びたユニークな形をしており、「丘の上の双眼鏡」の愛称で呼ばれ、館内のカフェからも海や市街地を一望できる。

洗練されたシンメトリーな空間

エントランス
イタリア産大理石を張りつめ、高い吹き抜けを持ったホールは、来館者の自由な空間となっている

開館以来、多彩な展覧会企画を展開するとともに、1987年には本館に接続するアネックス棟を開設。国内外の近現代美術を象徴する多角的なコレクションをめざし、ルノワール、ドガ、モネなどの印象派、江戸から明治にかけての浮世絵、タブローや版画を中心とする20世紀美術、西日本地域を中心とする地元作家作品を体系的に収集した。また、2003年には、複合施設リバーウォーク北九州内に分館を、2013年には、コムシティ内に黒崎市民ギャラリーを開設し、新たな展開を広げている。

企画展示室 ギャラリー

展示室は企画展示室、常設展示室と分かれ、特に常設展示室はコーナーを5つに分け特徴ある展示を行っている。昭和62年(1987)には地元作家の発表の場を設ける意図で別館(アネックス)を増築し、1階の市民ギャラリーを発表の場として提供。

企画展示室

エントランスホールの東側にある二つの展示室で、ここでは美術館が自主企画した展覧会や、巡回展などを開催。

コレクション展示室

エントランスホールの正面の階段を登った3階にある筒形の2室がコレクション展示室で、北九州市立美術館の所蔵品の一部が常時展示されている。また、アネックス市民ギャラリーは、市民の要望で常設。個展やグループ展など、地元作家の作品発表の場として市民に広く活用。

アトリウム
開放的な廊下から一転、静かな閉じられた空間へ

アネックス棟3階の「アトリウム」は、中央の池の周りに柱が並び、中世の中庭を思わせる休憩室。

ロケーションとしては小倉、戸畑、八幡の三区にまたがる丘の上にあり、臨海工業地帯と市街を見下ろす場所に位置している。北九州市立美術館周辺の緑豊かな敷地は、「緑の森公園」と呼ばれ、総面積は10万平方メートルと広大なもので、市民の散歩やジョギング・コースとして親しまれている。遊歩道には23点ものオブジェや彫刻が随所に配置されている。

グリッドを基調の筒が街に向かって飛び出している

国内外の近現代美術を象徴する多角的な美術コレクションを鑑賞しながら、館内から海や市街地を眺めたり、1970年の時代を超えても美しい磯崎新氏の建築美を感じながら、「北九州市立美術館」ならではの時間を過ごしてみてはいかが。

北九州市立美術館 本館・アネックス
住所|福岡県北九州市戸畑区西鞘ヶ谷町21-1
Tel|093-882-7777
開館時間|9:30~17: 30分まで(入場は17:00まで)
休館日|年末年始、月曜日 (ただし月曜日が祝日・振替休日の場合は、翌平日が休館日)
https://kmma.jp/

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