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大阪府《守口市立図書館》
リノベーション建築も愉しめる市内初図書館

2022.8.30
大阪府《守口市立図書館》<br>リノベーション建築も愉しめる市内初図書館

これまで公立図書館が設置されていなかった大阪府守口市に、2020年に市内初の図書館「守口市立図書館」がオープン。子どもから大人まで読書を楽しめる環境が整えられた地上5階地下1階建ての建物は、バブル期の複合文化施設を改修したもの。開放感にあふれ、工夫が散りばめられた滞在型図書館をひも解く。

図書館と生涯学習施設を併せ持った
地域のランドマーク

大阪市に隣接するベッドタウンであり、鎌倉時代から信仰を集める来迎寺があることでも知られる守口市。そんな守口市内大日駅から徒歩約5分の場所に建つのが「守口市立図書館」だ。

2020年6月に開館した守口市立図書館だが、それまで市内には公立図書館がなかった。これまで市の図書施設は、同地にあった1993年開館の「ムーブ21」という生涯学習情報センターと8カ所のコミュニティセンター、文化センターに図書室があり、合わせて約35万冊の図書資料を所蔵していた。ムーブ21は生涯学習の分野など幅広い役割を持たせるために、あえて図書館法に基づく施設にはしなかったが、新たに開設された守口市立図書館では図書館機能をメインとしながら、旧来の多目的性も備え、図書の貸し出しだけではなく、次世代につながる新しい機能を持たせた施設として生まれ変わった。
図書館と生涯学習施設を併せ持った地上5階地下1階の複合施設は、地域の新たなランドマークとなったのである。

既存建築を資源と捉えた
サステナブルなリノベーション

2階メインライブラリー
改修前 ©SALHAUS

SALHAUS(サルハウス)一級建築士事務所
大阪府出身の安原幹氏、兵庫県出身の日野雅司氏、埼玉県出身の栃澤麻利氏、3名の建築家を中心とした東京の設計事務所。3名とも元は山本理顕設計工場に在籍しており、別々に独立後、2008年に再結集しSALHAUSを設立。石川県「金沢美術工芸大学」の新キャンパス、岩手県陸前高田市の3校を統合した「高田東中学校」、岩手県の森林資源を活用した「大船渡消防署住田分署」など、公民連携のプロジェクトにも積極的に取り組む。

前述の通り守口市立図書館の建物は、もとはムーブ21生涯学習情報センターとして使われていた。図書館を新設するにあたり、外観はそのままに、内部のみに大規模な改修が行われた。設計を担当したのは、金沢美術工芸大学や陸前高田市高田東中学校などを手掛けたSALHAUS。

既存建築が持っていた多彩な空間を貴重な資源と捉えて再活用し、本と関連したさまざまな市民活動や公演を展開するアクティブな図書館を目指して設計された。薄暗かった中央吹き抜けの壁を真白に塗装することで自然光を呼び込み、この場所を中心に館全体の空間を再編。また階段を増設したことで各階の繋がりが滑らかになった。
バブル期の建築特有のクセの強い空間に、杉などの木材や透過性のあるカーテン、階ごとに異なる色彩など、自然や身体に近い要素をバランスよく加えることで、無意識に“居心地がよい”と思える空間に生まれ変わった。

施設紹介

約50席ある飲食が可能な1階の交流スペース
多様な椅子が並ぶ2階閲覧席。好きな椅子で好きな本をゆったりと楽しめる
ガラスで間仕切られた静寂エリア
吹き抜けを通して閲覧室とつながる開放的な自習スペース
市民活動に利用できるスタジオエリア
4階には従来の多目的ホールに加え、プラネタリウムを改修した円形ホールを設置し、朗読劇など本と関連した活動が行われている
1階から2階へ続く階段
1階子ども図書コーナー

乳幼児から高齢者まで多世代の人々が利用できるよう工夫が散りばめられた守口市立図書館。集い、学び、交流することの大切さを体現する同施設は、他県から訪れても発見を与えてくれるはずだ。

守口市立図書館
住所|大阪府守口市大日町2-14-10
Tel|06-6905-3921(図書館)、06-6115-5475(生涯学習フロア)
開館時間|9:00~21:00
休館日|火曜(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)、資料整理期間
アクセス|Osaka Metro谷町線 大日駅より徒歩5分、大阪モノレール 大日駅より徒歩5分
https://www.lics-saas.nexs-service.jp/moriguchi/index.html

photo=矢野紀行 text=Discover Japan

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