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《空也/くうや》
100年続く空也最中の”あん”へのこだわり【中編】

2023.7.17
《空也/くうや》 <br><small>100年続く空也最中の”あん”へのこだわり【中編】</small>

和菓子の魂ともいうべきあんをANKOとして世界に広めるため、新しい味に挑戦する東京・銀座の「空也」。中編では、空也が100年の伝統を繋ぐために選択したこと、こだわりのあんこづくりについて紹介しよう。

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銀座のど真ん中で空也こだわりのあんづくり

つやつやと美しい立派な小豆は、北海道産のエリモ種。この品種は東日本の菓子店が好んで使うものだという

空也の店舗が入っているビル、実は自社ビルである。戦後、店を再開するにあたり、知人から「隣に引っ越してこないか」という話があり、思いきって土地を買っておいたことも、100年続く店となる空也が、銀座で暖簾を守り続けられた理由のひとつだろう。
 
そのおかげで空也の菓子は、最中の皮の製造以外、あんづくりから菓子の成形までを店舗のあるビル内で行うことができるのだ。以前、先代の女将さんは「自社ビルだから、銀座でもこの値段で最中を売り続けられるんですよ」と話していたが、同じ敷地内に製造ラインをもっていることで、ワンストップでしっかりと目の行き届いた菓子を製造できるのは強みのひとつだろう。
 
あんを練るのは最上階。10年以上前にIH釜に替えたのは、熱を周囲からもかけられて、熱効率に無駄がないから。最中の味にかかわる製造方法は変わらないが、作業方法は必要に応じてアップデートしている。最中の皮にあんを絞るのも機械が行う。こうした道具に過剰に「昔ながら」を求めないのも、実は老舗として続いていくために選択してきたことのひとつだ。

「空也」の味を維持する「小豆」と「ザラメ」
エリモ種の小豆の魅力はしっかりした味と馥郁たる香り。ザラメ糖を使うのは、結晶時の表面積を大きくすることで、あっさりした甘さを感じるられるようにするためだという。グラニュー糖のように結晶時の粒が細かいほうが、甘みが強く感じられるそうだ

できることを、できるぶんだけ。等身大の和菓子づくり

工程1 小豆を煮た後にザラメを投入

なんと空也で使われるあんは、店舗の上にあるビルのワンフロアでつくられている。IHの銅釜で1日5杯のあんがつくられており、そのあんの分だけ菓子がつくられる。24時間フル回転ではなく「人らしい生活サイクルの中で従業員が働く」のが、空也のスタイル

工程2 さらに水あめも混ぜ合わせる
工程3 炊き上がったらバットに移す
工程4 最中のあん詰めは機械で行う

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text: Ichiko Miyatoya photo: Asami Endo
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